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シャーロット来日 編
何か飲みながら、日の出でも見る?
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「ん……、ぁ、――――うぅ」
目を覚まして伸びをすると、左右からぎゅう、と抱き締められる。
「んぇ……? え?」
ぼんやりしたまま左右を見ると、浴衣姿の慎也と正樹がいる。
そういえば……と思って自分を見ると、帯は外され、その下の紐も緩められて楽な格好になっていた。
「……クルーザー?」
「そうだよ。優美、きもちよーく寝ちゃってさ」
慎也の言葉を聞いて「そっかー」と思っていたが、お客さんの事を思い出してガバッと起き上がった。
「あ、いないから安心して?」
正樹が言って、私をまたベッドに引き戻す。
「いっ、いないって?」
「優美ちゃんが寝ちゃったあと、いいところで港に戻って解散したよ。皆、『イギリス行ってたし疲れててもしゃーないね』って笑ってたよ」
「おっおぅ……」
私は頭を抱えてうめく。
「……どぉしよぉ……。ああああ……。ホスト役なのに……」
「別にいーじゃん。十分楽しんだし、あとは帰るだけだったんだよ」
正樹が私のお腹をポンポン叩いてくる。
「……他になんか言ってた?」
指の間から慎也を見ると、彼は少し首を傾げて昨晩の事を思いだす。
「場を設けてくれた事にとても感謝してたよ。浴衣も皆気に入ってたし、文香さんの功績でもあるけど、優美が彼女を誘わなければこうならなかった訳で」
「そっか……」
とりあえず、怒ってはなさそうで良かった。
肘をついて上体を起こし、スマホを開くと時刻は四時台だった。
「……朝か」
呟くと、正樹が起き上がった。
「どうせなら何か飲みながら、日の出でも見る?」
「お、いいな、それ。冷蔵庫見てくるわ」
慎也はすぐに起き上がり、下駄をつっかけてオーナーズルームから出ていった。
「優美ちゃん、立てる?」
「ん」
少し頭は痛いけれど、ふらついているほどではない。
ベッドは大きい上に、着ている物は浴衣なので、気をつけて端まで移動する。
「きつくはしないけど、帯結んであげようか」
「ありがと」
床に下りる時は、さりげなく正樹が手を掴んでくれたので、なんかこう……こなれてるな、と思う。
「きつくない?」
「うん」
お正月の着付けもそうだけど、正樹はこういうの慣れてるみたいで、つくづく凄いなって思う。
文香も一人で着付けできるしなぁ。
「こういうのって、できたほうがいいのかな?」
「ん?」
「着付けとか……。玲奈さんも未望ちゃんもできそうだし、……り、利佳さんもできそう」
「あー、……はは。別に人と比べなくても、いいんじゃない?」
正樹は手早く浴衣を着付け、帯を締めてしまうと、パン、と私のお尻を叩いた。
「こらぁ」
「あっはは!」
そして自分もちょっとはだけた浴衣を直しているので、その姿がやけに色っぽく見える。
襟の間からチラッと見えた胸板とか、ちょっと……ヤバイ……。
こうやって意識している自分を考えると、私は本当に二人の事が同じぐらい好きなんだと思い知らされる。
好きの度合いはほぼ同じで、それでいて「好きだな」と感じるポイントがちょっと違っている。
愛してくれて、尊敬できる人なのは変わらない。
そのベースがある上で、二人の個性を愛しているんだと思う。
準備ができてフライブリッジまで上がると、慎也は先に座ってグラスに入った何かを飲んでいた。
「優美、おいで」
手すりに掴まりながら慎重に階段を上がっている私に気付き、慎也は立ち上がって手を伸ばしてくる。
「ありがと」
下駄は片手に持って上っていたけれど、不安定でちょっと怖かった。
最後の一段で慎也の手に捕まると、グイッと引き上げられる。
「昨日用意してあった〝素〟を使って、ジンジャーエール作っといた」
「あ、いいね。スッキリする」
慎也は時々お手製のジンジャーエールとか作ってくれる。
目を覚まして伸びをすると、左右からぎゅう、と抱き締められる。
「んぇ……? え?」
ぼんやりしたまま左右を見ると、浴衣姿の慎也と正樹がいる。
そういえば……と思って自分を見ると、帯は外され、その下の紐も緩められて楽な格好になっていた。
「……クルーザー?」
「そうだよ。優美、きもちよーく寝ちゃってさ」
慎也の言葉を聞いて「そっかー」と思っていたが、お客さんの事を思い出してガバッと起き上がった。
「あ、いないから安心して?」
正樹が言って、私をまたベッドに引き戻す。
「いっ、いないって?」
「優美ちゃんが寝ちゃったあと、いいところで港に戻って解散したよ。皆、『イギリス行ってたし疲れててもしゃーないね』って笑ってたよ」
「おっおぅ……」
私は頭を抱えてうめく。
「……どぉしよぉ……。ああああ……。ホスト役なのに……」
「別にいーじゃん。十分楽しんだし、あとは帰るだけだったんだよ」
正樹が私のお腹をポンポン叩いてくる。
「……他になんか言ってた?」
指の間から慎也を見ると、彼は少し首を傾げて昨晩の事を思いだす。
「場を設けてくれた事にとても感謝してたよ。浴衣も皆気に入ってたし、文香さんの功績でもあるけど、優美が彼女を誘わなければこうならなかった訳で」
「そっか……」
とりあえず、怒ってはなさそうで良かった。
肘をついて上体を起こし、スマホを開くと時刻は四時台だった。
「……朝か」
呟くと、正樹が起き上がった。
「どうせなら何か飲みながら、日の出でも見る?」
「お、いいな、それ。冷蔵庫見てくるわ」
慎也はすぐに起き上がり、下駄をつっかけてオーナーズルームから出ていった。
「優美ちゃん、立てる?」
「ん」
少し頭は痛いけれど、ふらついているほどではない。
ベッドは大きい上に、着ている物は浴衣なので、気をつけて端まで移動する。
「きつくはしないけど、帯結んであげようか」
「ありがと」
床に下りる時は、さりげなく正樹が手を掴んでくれたので、なんかこう……こなれてるな、と思う。
「きつくない?」
「うん」
お正月の着付けもそうだけど、正樹はこういうの慣れてるみたいで、つくづく凄いなって思う。
文香も一人で着付けできるしなぁ。
「こういうのって、できたほうがいいのかな?」
「ん?」
「着付けとか……。玲奈さんも未望ちゃんもできそうだし、……り、利佳さんもできそう」
「あー、……はは。別に人と比べなくても、いいんじゃない?」
正樹は手早く浴衣を着付け、帯を締めてしまうと、パン、と私のお尻を叩いた。
「こらぁ」
「あっはは!」
そして自分もちょっとはだけた浴衣を直しているので、その姿がやけに色っぽく見える。
襟の間からチラッと見えた胸板とか、ちょっと……ヤバイ……。
こうやって意識している自分を考えると、私は本当に二人の事が同じぐらい好きなんだと思い知らされる。
好きの度合いはほぼ同じで、それでいて「好きだな」と感じるポイントがちょっと違っている。
愛してくれて、尊敬できる人なのは変わらない。
そのベースがある上で、二人の個性を愛しているんだと思う。
準備ができてフライブリッジまで上がると、慎也は先に座ってグラスに入った何かを飲んでいた。
「優美、おいで」
手すりに掴まりながら慎重に階段を上がっている私に気付き、慎也は立ち上がって手を伸ばしてくる。
「ありがと」
下駄は片手に持って上っていたけれど、不安定でちょっと怖かった。
最後の一段で慎也の手に捕まると、グイッと引き上げられる。
「昨日用意してあった〝素〟を使って、ジンジャーエール作っといた」
「あ、いいね。スッキリする」
慎也は時々お手製のジンジャーエールとか作ってくれる。
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