248 / 539
シャーロット来日 編
夏のコミフェス
しおりを挟む
ただ、格闘技系をリアル喧嘩に使うのは御法度だし、プロを目指すでもない中途半端な私が、ジムに迷惑を掛けてはいけない。
だから色々考えた結果、『殴られよう』に落ち着いたんだけど。
「気持ちは分かるけど、焦ったら駄目だよ? もっと頭の中で駒を動かせるようにならないと」
実に正樹らしい言い方だ。
「俺とチェスのレッスンでもしてみる?」
「あー、私全然ルール知らないや」
「脱衣かかったら、必死になるんじゃない?」
「ちょっ!? 何言ってんの!?」
私はバッと両手で胸元を隠す。
「僕、悪い大人だからショットチェスとかやってみたいな。勿論自宅でだけど」
「ショットチェス……?」
「これこれ」
慎也がトントンとスマホをタップしたあと、写真を見せてくる。
画面にはガラスでできたチェスの駒があり、中に色とりどりの液体が入っていた。
どうやらチェスの駒は、底にゴムのキャップがついていて、そこからお酒を入れるようになっているらしい。
「ショットグラスに駒の絵を描いたバージョンもある。でもこういうほうが雰囲気あるよな。ちなみに、子供用だと中にお菓子を入れるのもアリなんだって」
「へぇ~。こういう楽しみ方もあるんだ。っていうか、私、ボロ負けしてベロベロに酔うやつじゃん」
ツッコミを入れると、二人がケラケラ笑う。
「〝折原先輩〟なら酒強いからいけると思って」
「はー? んまー、ルールさえ覚えてある程度できるようになったら、チャレンジしてもいいけど」
挑発され、私は冗談半分で応える。
「ちなみにエディとクリスは、かなり強くてイギリス内のタイトルを取ってるよ」
「マジ?」
「奴らああいうゲームが好きなんだよ。兄弟でもよくやってるよ」
「そっかー。っていうか、日本人の将棋的なやつだから、子供の頃から馴染んでいても違和感ないね」
紅茶を飲みながらチェスをする二人を想像し、「うん、絵になるな」と思った。
「何の話だっけ? あ、もうちょっと冷静になれって事ね」
脱線した話題を元に戻すと、二人とも「あ」という顔になる。忘れてたんかい。
「慎也にも脳筋って言われたばっかりだし、もうちょっとよく考えてみるね。あと、ホウ、レン、ソウ」
私の言葉に、二人は「うん」と頷く。
そのあと、正樹が「甘えたりない」というので、ベッドでゴロゴロしながら彼を甘やかす事にした。
**
シャーロットさんが来日する、夏のコミフェスはすぐだった。
事前に彼女とメッセージでやり取りをして、スケジュールやホテルなどを教えてもらう。
文香も漫画が好きなので、今回は私たちも初めて一般参加する事にした。
炎天下の中、私たちはリストバンドをつけてお昼過ぎに会場に着いた。
シャーロットさんの話だと、大勢の人が密集するのでスマホがほぼ使えないらしく、あらかじめ彼女がいると教えてくれた公園に向かう事になった。
「彼女に会うだけだったら、列に並ばなくて良かったみたいで助かった。けど、凄いね」
会場内に入って目にするのは、人、人、人。
圧倒的、人だ。
「しかし、ライバルにならなくて良かったね、そのお嬢様」
文香は白檀の扇子で自分を扇ぎ、私に言う。
「そうだねー。あんな美女がライバルになったら、二人はイチコロよ」
「けど、二人とも『ナシ』だって言ったんでしょ? そこは自信を持たないと」
「だねー。ありがたいや」
ゆっくり喋りながら目的地に向かうと、沢山のコスプレイヤーさんがいて、それを撮影している人もいる。
「さて、彼女はどこかな?」と、のんびり探していると、それらしき人を見つけた。
「おお……」
シャーロットさんは地毛の金髪ロングを生かして、金髪キャラを演じている。
白いドレスを着たお姫様みたいなキャラで、彼女の雰囲気にとても似合っていた。
「あ。私、あのキャラ知ってるわ」
文香が言ったのはゲームのタイトルだったけれど、私はあまり詳しくなかった。
けれどお姫様と思ったのは当たったらしく、彼女は友達らしい女性(こちらはヘソ出しルックのホットパンツ)と、男性五人とチームで撮影されていた。
どうやらすべて同じゲームのキャラらしく、男性たちの服装は現代っぽいけれど、リアルっぽく見える作り物の剣もあり、本気度が凄い。
しかも男性陣は身長があって体が仕上がってるから、余計に格好良く見えた。
「優美さーん!」
私に気付いたシャーロットさんが、流暢な日本語で私の名前を呼び、ブンブンと手を振る。
だから色々考えた結果、『殴られよう』に落ち着いたんだけど。
「気持ちは分かるけど、焦ったら駄目だよ? もっと頭の中で駒を動かせるようにならないと」
実に正樹らしい言い方だ。
「俺とチェスのレッスンでもしてみる?」
「あー、私全然ルール知らないや」
「脱衣かかったら、必死になるんじゃない?」
「ちょっ!? 何言ってんの!?」
私はバッと両手で胸元を隠す。
「僕、悪い大人だからショットチェスとかやってみたいな。勿論自宅でだけど」
「ショットチェス……?」
「これこれ」
慎也がトントンとスマホをタップしたあと、写真を見せてくる。
画面にはガラスでできたチェスの駒があり、中に色とりどりの液体が入っていた。
どうやらチェスの駒は、底にゴムのキャップがついていて、そこからお酒を入れるようになっているらしい。
「ショットグラスに駒の絵を描いたバージョンもある。でもこういうほうが雰囲気あるよな。ちなみに、子供用だと中にお菓子を入れるのもアリなんだって」
「へぇ~。こういう楽しみ方もあるんだ。っていうか、私、ボロ負けしてベロベロに酔うやつじゃん」
ツッコミを入れると、二人がケラケラ笑う。
「〝折原先輩〟なら酒強いからいけると思って」
「はー? んまー、ルールさえ覚えてある程度できるようになったら、チャレンジしてもいいけど」
挑発され、私は冗談半分で応える。
「ちなみにエディとクリスは、かなり強くてイギリス内のタイトルを取ってるよ」
「マジ?」
「奴らああいうゲームが好きなんだよ。兄弟でもよくやってるよ」
「そっかー。っていうか、日本人の将棋的なやつだから、子供の頃から馴染んでいても違和感ないね」
紅茶を飲みながらチェスをする二人を想像し、「うん、絵になるな」と思った。
「何の話だっけ? あ、もうちょっと冷静になれって事ね」
脱線した話題を元に戻すと、二人とも「あ」という顔になる。忘れてたんかい。
「慎也にも脳筋って言われたばっかりだし、もうちょっとよく考えてみるね。あと、ホウ、レン、ソウ」
私の言葉に、二人は「うん」と頷く。
そのあと、正樹が「甘えたりない」というので、ベッドでゴロゴロしながら彼を甘やかす事にした。
**
シャーロットさんが来日する、夏のコミフェスはすぐだった。
事前に彼女とメッセージでやり取りをして、スケジュールやホテルなどを教えてもらう。
文香も漫画が好きなので、今回は私たちも初めて一般参加する事にした。
炎天下の中、私たちはリストバンドをつけてお昼過ぎに会場に着いた。
シャーロットさんの話だと、大勢の人が密集するのでスマホがほぼ使えないらしく、あらかじめ彼女がいると教えてくれた公園に向かう事になった。
「彼女に会うだけだったら、列に並ばなくて良かったみたいで助かった。けど、凄いね」
会場内に入って目にするのは、人、人、人。
圧倒的、人だ。
「しかし、ライバルにならなくて良かったね、そのお嬢様」
文香は白檀の扇子で自分を扇ぎ、私に言う。
「そうだねー。あんな美女がライバルになったら、二人はイチコロよ」
「けど、二人とも『ナシ』だって言ったんでしょ? そこは自信を持たないと」
「だねー。ありがたいや」
ゆっくり喋りながら目的地に向かうと、沢山のコスプレイヤーさんがいて、それを撮影している人もいる。
「さて、彼女はどこかな?」と、のんびり探していると、それらしき人を見つけた。
「おお……」
シャーロットさんは地毛の金髪ロングを生かして、金髪キャラを演じている。
白いドレスを着たお姫様みたいなキャラで、彼女の雰囲気にとても似合っていた。
「あ。私、あのキャラ知ってるわ」
文香が言ったのはゲームのタイトルだったけれど、私はあまり詳しくなかった。
けれどお姫様と思ったのは当たったらしく、彼女は友達らしい女性(こちらはヘソ出しルックのホットパンツ)と、男性五人とチームで撮影されていた。
どうやらすべて同じゲームのキャラらしく、男性たちの服装は現代っぽいけれど、リアルっぽく見える作り物の剣もあり、本気度が凄い。
しかも男性陣は身長があって体が仕上がってるから、余計に格好良く見えた。
「優美さーん!」
私に気付いたシャーロットさんが、流暢な日本語で私の名前を呼び、ブンブンと手を振る。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,767
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる