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五十嵐と再会 編
部屋の汚れは心の汚れ
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「『仕返しされたらどうしよう』って? 自業自得じゃないの?」
突き放したからか、五十嵐の表情が歪む。
今にも泣きそうに唇がわなないたあと、目を潤ませ、唇を引き結ぶ。
「……そう、……ですよね。…………自業自得……」
その様子を見て、すぐ理解した。
文香ちゃんのマンションで、恐らく彼女は優美ちゃんによってだだ甘やかされたんだろう。
優美ちゃんによって人の心を取り戻した彼女が、僕の態度に「冷たい」と絶望するのも頷ける。
……まー、知らないっちゃ知らないんだけど。
彼女が改心してもしなくても、僕らの生活には何ら関係がない。
むしろ視界に入らないでほしいと思う程、――――だけど。
「はぁ…………」
深く溜め息をつく。
僕も、かなり優美ちゃんに影響されたのかな。
しゃーない。
「君の事はほんっとうに、心底どうでもいい。でも、彼女が大切にしたいものは、僕も大切にしたい」
救いがあると思ったのか、五十嵐の目に希望が宿る。
「……あいつらに知られてるのは? メッセージアプリとSNS? ここの住所は?」
「……全部……」
僕は思わず視線を逸らし、呆れて溜め息をつく。
「僕の言う事聞ける?」
「はい」
縋り付く目で、彼女は頷く。
「変わりたいんです。……もう、今までみたいな生活には戻りたくありません」
少なくとも優美ちゃんの言葉でそう思ったなら、一旦信じてみようと思った。
「じゃあ、スマホから『関わっていたら駄目になる』と思う人の連絡先を全部削除して。あと、SNSのアカウントもすべて削除。電話番号、メールアドレスなども変更」
「はい」
文句を言うかと思ったけど、以外と素直に頷いた。
「あと、断捨離のスペシャリストと引っ越し業者に連絡しておくから、自分の虚栄心を満たすための物をすべて手放して、ここからも引っ越して」
「はい」
どうやら覚悟は固いみたいだ。
「全部言う事を聞けるなら、費用は僕が持つ。君の予算に合った、治安の良さそうな物件も探しておく」
彼女は唇を引き結び、深く頭を下げる。
溜め息をつき、僕は近くに転がっていたペンを拾い、名刺の裏にプライベートの連絡先を書いて渡す。
「とりあえず、一通り片がつくまで連絡はここに。終わった後は完全破棄。約束できるな?」
「はい」
両手で名刺を受け取り、彼女はまた深く頭を下げた。
「これは約束の中には含まれないけど、忠告というかアドバイス。『部屋の汚れは心の汚れ』。この部屋の混沌ぶりが、今の君そのものだ。……新しい生活でどうすればいいか、言わなくても分かるな?」
「…………はい」
必要な事は確認し、僕はメッセージアプリで運転手に連絡をする。
「じゃあ、これで。業者についてはあとで連絡する。その前に少しでも自分で片付けたら、手間掛けないんじゃないの?」
「はい!」
頭を下げる彼女を後ろに、僕は玄関に戻って靴を履く。
見送りに来た彼女を振り向くつもりはなかったけど、ついでの一言を向ける。
「優美ちゃんのお陰で、僕は手を貸す気持ちになった。本来なら君の事は、社会的に叩き潰していたと覚えといて」
彼女は何も言わず、コクリと頷く。
「絶対に、優美ちゃんの期待を裏切るな。できないと感じた時は、二度と姿を見せるな」
「……はい。……あの」
「……なに」
今度こそ出て行こうとしたら、また裾を引っ張られた。
「折原さんが求めるような人になれたら……。彼女と会ってもいいですか?」
あー。
これは本当に優美ちゃんにコロッとやられたな。
「それは僕が許可する事じゃない。彼女が決める事だ。彼女が君を受け入れているなら、僕は何も反対しない」
「……ありがとうございます」
「他にない?」
「……はい。お引き留めしてすみませんでした。……ご温情、感謝致します」
……僕、優美ちゃんに影響されて、ちょっと甘くなったのかな。
「頑張れよ」
最後にそう言葉をかけて、僕は今度こそ彼女の家を出た。
**
突き放したからか、五十嵐の表情が歪む。
今にも泣きそうに唇がわなないたあと、目を潤ませ、唇を引き結ぶ。
「……そう、……ですよね。…………自業自得……」
その様子を見て、すぐ理解した。
文香ちゃんのマンションで、恐らく彼女は優美ちゃんによってだだ甘やかされたんだろう。
優美ちゃんによって人の心を取り戻した彼女が、僕の態度に「冷たい」と絶望するのも頷ける。
……まー、知らないっちゃ知らないんだけど。
彼女が改心してもしなくても、僕らの生活には何ら関係がない。
むしろ視界に入らないでほしいと思う程、――――だけど。
「はぁ…………」
深く溜め息をつく。
僕も、かなり優美ちゃんに影響されたのかな。
しゃーない。
「君の事はほんっとうに、心底どうでもいい。でも、彼女が大切にしたいものは、僕も大切にしたい」
救いがあると思ったのか、五十嵐の目に希望が宿る。
「……あいつらに知られてるのは? メッセージアプリとSNS? ここの住所は?」
「……全部……」
僕は思わず視線を逸らし、呆れて溜め息をつく。
「僕の言う事聞ける?」
「はい」
縋り付く目で、彼女は頷く。
「変わりたいんです。……もう、今までみたいな生活には戻りたくありません」
少なくとも優美ちゃんの言葉でそう思ったなら、一旦信じてみようと思った。
「じゃあ、スマホから『関わっていたら駄目になる』と思う人の連絡先を全部削除して。あと、SNSのアカウントもすべて削除。電話番号、メールアドレスなども変更」
「はい」
文句を言うかと思ったけど、以外と素直に頷いた。
「あと、断捨離のスペシャリストと引っ越し業者に連絡しておくから、自分の虚栄心を満たすための物をすべて手放して、ここからも引っ越して」
「はい」
どうやら覚悟は固いみたいだ。
「全部言う事を聞けるなら、費用は僕が持つ。君の予算に合った、治安の良さそうな物件も探しておく」
彼女は唇を引き結び、深く頭を下げる。
溜め息をつき、僕は近くに転がっていたペンを拾い、名刺の裏にプライベートの連絡先を書いて渡す。
「とりあえず、一通り片がつくまで連絡はここに。終わった後は完全破棄。約束できるな?」
「はい」
両手で名刺を受け取り、彼女はまた深く頭を下げた。
「これは約束の中には含まれないけど、忠告というかアドバイス。『部屋の汚れは心の汚れ』。この部屋の混沌ぶりが、今の君そのものだ。……新しい生活でどうすればいいか、言わなくても分かるな?」
「…………はい」
必要な事は確認し、僕はメッセージアプリで運転手に連絡をする。
「じゃあ、これで。業者についてはあとで連絡する。その前に少しでも自分で片付けたら、手間掛けないんじゃないの?」
「はい!」
頭を下げる彼女を後ろに、僕は玄関に戻って靴を履く。
見送りに来た彼女を振り向くつもりはなかったけど、ついでの一言を向ける。
「優美ちゃんのお陰で、僕は手を貸す気持ちになった。本来なら君の事は、社会的に叩き潰していたと覚えといて」
彼女は何も言わず、コクリと頷く。
「絶対に、優美ちゃんの期待を裏切るな。できないと感じた時は、二度と姿を見せるな」
「……はい。……あの」
「……なに」
今度こそ出て行こうとしたら、また裾を引っ張られた。
「折原さんが求めるような人になれたら……。彼女と会ってもいいですか?」
あー。
これは本当に優美ちゃんにコロッとやられたな。
「それは僕が許可する事じゃない。彼女が決める事だ。彼女が君を受け入れているなら、僕は何も反対しない」
「……ありがとうございます」
「他にない?」
「……はい。お引き留めしてすみませんでした。……ご温情、感謝致します」
……僕、優美ちゃんに影響されて、ちょっと甘くなったのかな。
「頑張れよ」
最後にそう言葉をかけて、僕は今度こそ彼女の家を出た。
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