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五十嵐と再会 編

応援隊

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 すると、五十嵐さんは「ううん」と首を横に振った。

「私、ずっと変わりたいって思ってた。思っていて、変わるタイミングと、方法が分からななくて、ズルズル続いてしまった。……だから、今回のこれは丁度良かったんだと思う。……変わりたい」

 何かに目覚めた顔をしている彼女を見て、私はニッコリ笑うと彼女の肩を叩いた。

「うん、応援してる。なんかあったら連絡して」

 私は、自分が悔しい思いをして這い上がっただけに、これからまだ這い上がれる、良くなれる可能性のある人を見ると、無条件で応援したくなる。

 もとは何の取り柄もない私が、頑張ってハッピーな人になれた。

 ダイエットもポジティブになるのも、特別な人の特権じゃない。
 ちょっとずつ頑張ったら誰にでも可能な事だ。

 それを色んな人に教えて、全員のハッピー度を底上げしていきたいっていう気持ちを持っている。

 勿論、それを「お節介」って言う人には、強く勧めない。

 人それぞれ育ってきた環境や体調、その時のメンタル具合や色んな事情がある。
 私の〝やり方〟を押しつけて「こうやったら幸せになれるから!」ってやれば、ヤバイやつの勧誘みたいになる。

 提案するだけして、それが背中を押す事になれたなら、応援隊としてこれ以上の事はない。

「頑張ってね」

 笑いかけると、五十嵐さんは「うん」と頷いて洟を啜った。

「優美がその子に付き合うなら、私も付き合ってあげてもいいよ。客観的に見て『まともになったな』って思えたら、合コンとかセッティングしてもいい」

「……ありがとう」

 文香さま、相変わらず上からだけど、これが彼女なりの最大限のツンデレなので、理解してあげてほしい。

「五十嵐さんは、私や優美みたいに『一人でも生きていける』っていうタイプじゃないよね。友達や恋人とつるんだほうが、安心感を得られるっていうか。だから、一人でストイックに鍛えていくんじゃなくて、弱音吐きたかったり現状報告したかったら、聞いてあげるよ」

 確かに、と思って私は頷く。

「その辺は個人差があるかもね。私は学生時代から、常に誰かと一緒に行動しなくても大丈夫なタイプだったから。元からの性格とか家庭環境とか、育ち方とか、少なからず影響してると思う」

 うんうん、と頷くと、文香がまたツンデレを発揮した。

「言っとくけど、優美が面倒見るって言うから手を貸すだけだからね。優美が付き合うなら食事とかも付き合ってあげてもいいけど、そこは勘違いしないで」

「ぶふっふふふふ……! ツンデレいただきました!」

「優美!」

 和人くんも口に含んだコーヒーを吹き出さないように必死だ。
 彼は文香のこういうところが、可愛くて仕方ないんだろうなぁ。分かるよ。

「五十嵐さんから連絡なくても、もし迷惑じゃなかったら私から誘うよ。無理そうだったら気兼ねなく断っていいからね。私も軽く誘うし」

「ありがとう。……でも、副社長とか怒らない?」

「あー!」

 そういえば、二人の事をすっかり忘れてた。

 急に私は挙動不審になり、視線を泳がせて冷や汗を掻く。
 叩かれた左頬を手で確認し、文香に「腫れてる?」と尋ねる。

「コンシーラーとファンデ総動員させても、無理だね。大人しく怒られてきな」

「ぐぅ……」

 うなる私に、五十嵐さんが恐る恐る声を掛けてくる。

「ご、ごめん……」

「いや、これは私の問題」

 うん、と頷いた私は、とりあえず彼らが納得しそうな言い訳を考え始めた。



**



 ブランチをゆっくりとって四人でたわいのない話をしたあと、私と五十嵐さんは文香のマンションを出た。

「昨日の男たち、連絡来ても大丈夫?」

「着拒やブロックはした。今、本当は夜の仕事してるんだけど、それもやめて、また昼間の仕事を探す」

「うん、頑張って」

「ありがとう」

 私はポンポンと彼女の肩を叩き、「じゃあね!」と徒歩でマンションに向かう。
 ゆっくり歩いて十五分ぐらいの距離だけど、シミュレーションしておかないと。

(うーん……)

 考えながら歩いているうちに、特徴的な外装の高層マンションが見えてきた。

(とりあえず、ラウンジでちょっと考えるか)

 コンシェルジュさんに会釈をしてそう考えたんだけれど、――甘かった。





(う……っ!!)

 ラウンジのソファに座って考え事をしようと思ったけれど、そこにはすでに二人がいた。

「あっ、帰って来た!」
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