【本編完結】【R-18】逃れられない淫らな三角関係~美形兄弟に溺愛されています~

臣桜

文字の大きさ
上 下
227 / 539
五十嵐と再会 編

ちゃんと自分の事、褒められてる?

しおりを挟む
「ちょっとずつでいいよ。低いハードルを作って、毎日コツコツクリアしていったら、きっと変われるよ。ポジティブになれる」

「どうやって?」

 お。興味を示したな? よしよし。

「五十嵐さんって、ちゃんと自分の事、褒められてる?」

「……褒めか分からないけど、外見には気を遣ってるし、SNSに写真をアップしたら褒められる」

「前半はOK、後半は三角」

 そう言うと、彼女は少し瞠目する。

「好きな格好をして、テンション爆上げさせるのは凄くいいよ! どんどんやろう。自分が『可愛い、素敵』と思った格好をするのはいいと思う。ネイルだってメイクだって、究極の自己満で、気分爆上げの材料。外見に気を遣うって、会う人への敬意にも繋がるしね」

 理解したのか、五十嵐さんは頷く。

「逆にSNSの投稿って、評価するのが画面の向こうの第三者でしょ? 自分がいいと思ったもんを投稿してるのに、仮に否定されたらムカつかない?」

「ムカつく」

 心当たりがあるのか、彼女はムスッとして頷く。

「そういう風に、自分の価値を決めるのを他人に委ねたら駄目なの。だから、他人から『可愛い、素敵、最高』って言われなくても、自分一人で『私って最高なんだが?』って思えるようになったほうが、手っ取り早くない? 褒めてくれる人たちがいなくても、自分一人で気分爆上げできるんだから」

「……確かに。……でも、人の声は気になる」

 うん、分かるんだけどさ。

「否定されたら無視する努力をしよう。もしくは、SNSとリアルをしっかり分ける。SNS上で、本当のあなたの三割も見せてないんじゃない? それって、ただのキャラクターだよ」

「キャラクター?」

「もしくは、ペルソナと言うべきか。SNSの五十嵐さんはフォロワーに応援されて作り上げたものだと思う。でもアカウントを消してしまえば無になる。そんなものを否定されて、現実のあなたの何が損なわれる? ネット上と現実を一緒にしたら危険なの。ネット上で否定されて、自分を否定されたって思ったらすぐに病む。だからリアルの自分に『価値がある』と思えるものを作っておくの。SNSは〝企業アカウント〟ぐらいに考えておけばいいんじゃないかな」

 彼女はしばらく、黙って私の言葉をよく考えていたようだった。

「……褒められないと、不安になる。リアルの友達、少ないから」

「休日、何してる?」

「ショッピングして……、男と会って、あとは家でSNS見てる」

「ナントカ教室みたいなの参加してみたら? リアルのサークルとか」

「えぇ?」

 彼女は顔をしかめ私を睨む。

「同じ事してると人間の脳って麻痺するの。その小さなルーチンの世界がすべてになる。〝参加〟する場所を変えるだけで、グッと新しい世界が開けるよ。それに、知識と経験も増えて素敵な人になる。ハードル高かったら、行った所のない場所に行ってみるとか、散歩とかでもいい。とにかく、新しい情報を頭に入れるの。そうしないと、どんどん老化するよ」

「老化はカンベン」

 眉間に皺を寄せた彼女に、私は笑いかける。

「体の老化は仕方ないし、どうでもいいの。問題は精神の老化。時代と共に周りが変わってるのに、対応しないと考えの堅い人間になっちゃう。へたすると、周りから嫌われて孤独になる。柔軟になればなるほど、色んな事が楽しくなるよ。それで、心はいつまでも若々しくいられる」

「……ババアになりたくない」

 その言葉に、私は苦笑いする。

「あのさ、五十嵐さんって二十五歳だっけ? 女子高生から見たら、十分〝ババア〟だと思うよ」

 彼女はムッとした顔になる。

「女子高生は中学生から見て〝ババア〟。外見を馬鹿にする言葉を口にしたら、自分もそう言われても文句を言えないの。『殴るなら殴り返される覚悟をしなきゃ』だよ? 頭のいい人は『パッと見て分かる、外見や数字、記号、属性でしか人を評価できない人』を嫌う。そういう人と付き合わないと思う」

 五十嵐さんは唇を歪め、溜め息をつく。

「一番強いのは人を悪く言わない人。ムッとしても自分で処理できて、常に人当たり良くできる人は尊敬される。そういう風にできない人が多いから、『気取ってる』って嫉妬されるかもしれない。でも無駄な敵は作らなくて済むし、味方を作りやすい。大抵の人はそういう人を好きになって憧れるしね」

 私は胡座をかいていた脚を戻し、少し真剣な表情になって彼女を見た。

「価値観を変えよう? 年齢や見た目は変わるし、それを価値のすべてにしたら、いつか自分に失望する。代わりに内面を磨くの。すっぴんで自分を飾る物がなくなっても、『あの人素敵な人だな』って思われる人になろう」

「〝意識高い系〟の女になれっていうの? ベランダでハーブ育てて、すっぴんでオーガニックコットンの服着てるような」

「いやー、そんなんじゃなくてさ」

 私は両手をあげて伸びをしてから、ゆっくり二の腕のストレッチをした。

「無意識に自分をいじめるの、やめなって事」

「いじめる……?」

 怪訝な表情をする彼女は、心当たりがないという顔をしている。

「『可愛くありたい』はいい。けど、『可愛くないと』は自分の首を絞める。理想通りになれなかったら自分を否定してしまう。完璧じゃなくていいから『このまんまの自分でいいよ』って思えるようにならないと」

 私はピッ、と指を二本立てる。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...