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五十嵐と再会 編
じゃー、寝よっか!
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「文香、ありがとー」
ホッカホカになってリビングにいる文香に声を掛けると、「麦茶飲みなー」と言った彼女がキッチンに向かう。
殴られた箇所を冷やすのに、タオルで巻いた保冷剤も出してくれた。
五十嵐さんと言えば、一緒にいたのが〝Fam〟だと分かって冷や汗を掻いている。
私にあれこれやった事や、私と文香が親友なのもあり、今とっても気まずい思いをしているだろう。
おまけに同じ空間には和人くんもいて、孤立無援に思っているのも分かる。
「優美ちゃん、座って。そっちの子も」
Tシャツにハーフパンツ姿の和人くんに勧められ、私たちはソファに座る。
高層階は基本的にカーテンを閉じないから、窓の外に夜景が広がっているのが見える。
「すご……」
五十嵐さんはボソッと呟き、麦茶を持って来た文香に「どうも」と頭を下げる。
「ありがと!」
私も麦茶を受け取り、ゴッゴッ……と飲む。
一気にグラスを空にしたあと、ポットからセルフで注いで、また勢いよく飲む。
お風呂のあとは水分補給が大事だ。
「……で、どーする訳? ここまで来たなら泊まるなり何なり、好きにしていーけど」
文香は和人くんの隣に座り、脚を組む。
と、和人くんが口を開いた。
「ある程度、君の事を聞いているけど、この家の中を写真で撮ったり、SNSに投稿するとかはやめてほしい」
「……しない。誓う」
すっかりテンションが下がった五十嵐さんは、敵意を見せる気力もないみたいだった。
「じゃー、寝よっか!」
「「「は?」」」
私の提案に、三人が声を上げる。
「あのさ、今日は金曜日で、皆一週間の疲れが溜まってる訳。で、私たちはお酒も残ってる。夜って疲労MAXになっていて、体も脳も疲れ切ってる。そんな状態で大事な話をしても、絶対にいい結果にならない」
これは私のポリシーで、絶対に夜に決め事はしない。
〝夜のテンション〟なんて言葉もあるし、無駄なネットショッピングをしたり、グダグダしたメッセージを送ってしまう事もある。
お酒を伴った接待は夜にするものだけど、私はそういうので大事な話は一度もしなかった。
判断力が鈍っている状態で何かすれば、あとから後悔する。
そう思っているからこそ、夜は〝休む時間〟と決めていた。
「あと、五十嵐さんに言っておきたいけど、あなたを虐めるつもりはまったくないから安心してね!」
「……分かった」
思う事はあるんだろうけれど、彼女は素直に頷く。
「ぐっすり寝て、明日美味しいクロワッサンでも食べよ」
近所には美味しいパン屋さんがあって、文香の家に泊まりに来るたびに、朝に買いに行っている。
「はい、じゃあ解散! 文香と和人くんの家なのに、仕切ってごめんね」
「いや、いいよ。優美ちゃんの拾い物だし、決定権は優美ちゃんにあると思ってる」
「ありがとう。今度なんかお礼するね」
それでその日は終わりになり、私と五十嵐さんは別の部屋で寝る事になった。
文香はこれからお風呂だ。家主なのにさーせん。
部屋に入る前、五十嵐さんが呼び止めてくる。
「あの」
「ん?」
「……ありがとう。あと、殴られたの、私のせい? ごめん」
ぶっきらぼうながらも、きちんと謝ってくれる彼女を見て、嬉しくなった。
「大した事ないよ。どういたしまして! おやすみ!」
彼女に挨拶をして、私は部屋に入った。
(あ、ヤバイ)
お布団に入ってスヤァ……、しようとしたところで、私は慎也と正樹に何も言っていないのを思いだした。
「起こしたら悪いしなー」と思って、電話ではなくトークルームにメッセージを入れる。
『今日、文香の所に泊まっていくね。連絡遅くなってごめん』
送信した瞬間、既読のマークがついた。おおう……。
『心配した!』
慎也からはそう返信があり、正樹はゆるーいキャラクターのスタンプで『激おこです!』と送ってくる。
何だかなぁ……。
『大人だから心配しなくても大丈夫だよ。明日、お昼過ぎか、午後の早い内には帰る』
『了解。ゆっくりしといで』
『楽しんでね』
メッセージが終わり、私はスンヤリと眠りに入った。
ホッカホカになってリビングにいる文香に声を掛けると、「麦茶飲みなー」と言った彼女がキッチンに向かう。
殴られた箇所を冷やすのに、タオルで巻いた保冷剤も出してくれた。
五十嵐さんと言えば、一緒にいたのが〝Fam〟だと分かって冷や汗を掻いている。
私にあれこれやった事や、私と文香が親友なのもあり、今とっても気まずい思いをしているだろう。
おまけに同じ空間には和人くんもいて、孤立無援に思っているのも分かる。
「優美ちゃん、座って。そっちの子も」
Tシャツにハーフパンツ姿の和人くんに勧められ、私たちはソファに座る。
高層階は基本的にカーテンを閉じないから、窓の外に夜景が広がっているのが見える。
「すご……」
五十嵐さんはボソッと呟き、麦茶を持って来た文香に「どうも」と頭を下げる。
「ありがと!」
私も麦茶を受け取り、ゴッゴッ……と飲む。
一気にグラスを空にしたあと、ポットからセルフで注いで、また勢いよく飲む。
お風呂のあとは水分補給が大事だ。
「……で、どーする訳? ここまで来たなら泊まるなり何なり、好きにしていーけど」
文香は和人くんの隣に座り、脚を組む。
と、和人くんが口を開いた。
「ある程度、君の事を聞いているけど、この家の中を写真で撮ったり、SNSに投稿するとかはやめてほしい」
「……しない。誓う」
すっかりテンションが下がった五十嵐さんは、敵意を見せる気力もないみたいだった。
「じゃー、寝よっか!」
「「「は?」」」
私の提案に、三人が声を上げる。
「あのさ、今日は金曜日で、皆一週間の疲れが溜まってる訳。で、私たちはお酒も残ってる。夜って疲労MAXになっていて、体も脳も疲れ切ってる。そんな状態で大事な話をしても、絶対にいい結果にならない」
これは私のポリシーで、絶対に夜に決め事はしない。
〝夜のテンション〟なんて言葉もあるし、無駄なネットショッピングをしたり、グダグダしたメッセージを送ってしまう事もある。
お酒を伴った接待は夜にするものだけど、私はそういうので大事な話は一度もしなかった。
判断力が鈍っている状態で何かすれば、あとから後悔する。
そう思っているからこそ、夜は〝休む時間〟と決めていた。
「あと、五十嵐さんに言っておきたいけど、あなたを虐めるつもりはまったくないから安心してね!」
「……分かった」
思う事はあるんだろうけれど、彼女は素直に頷く。
「ぐっすり寝て、明日美味しいクロワッサンでも食べよ」
近所には美味しいパン屋さんがあって、文香の家に泊まりに来るたびに、朝に買いに行っている。
「はい、じゃあ解散! 文香と和人くんの家なのに、仕切ってごめんね」
「いや、いいよ。優美ちゃんの拾い物だし、決定権は優美ちゃんにあると思ってる」
「ありがとう。今度なんかお礼するね」
それでその日は終わりになり、私と五十嵐さんは別の部屋で寝る事になった。
文香はこれからお風呂だ。家主なのにさーせん。
部屋に入る前、五十嵐さんが呼び止めてくる。
「あの」
「ん?」
「……ありがとう。あと、殴られたの、私のせい? ごめん」
ぶっきらぼうながらも、きちんと謝ってくれる彼女を見て、嬉しくなった。
「大した事ないよ。どういたしまして! おやすみ!」
彼女に挨拶をして、私は部屋に入った。
(あ、ヤバイ)
お布団に入ってスヤァ……、しようとしたところで、私は慎也と正樹に何も言っていないのを思いだした。
「起こしたら悪いしなー」と思って、電話ではなくトークルームにメッセージを入れる。
『今日、文香の所に泊まっていくね。連絡遅くなってごめん』
送信した瞬間、既読のマークがついた。おおう……。
『心配した!』
慎也からはそう返信があり、正樹はゆるーいキャラクターのスタンプで『激おこです!』と送ってくる。
何だかなぁ……。
『大人だから心配しなくても大丈夫だよ。明日、お昼過ぎか、午後の早い内には帰る』
『了解。ゆっくりしといで』
『楽しんでね』
メッセージが終わり、私はスンヤリと眠りに入った。
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