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イギリス 編

ハネムーンの案

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 観光して買い物もしたあと、満足してディナーをとったあとホテルに戻った。





 着替えてメイクも落として、今回そもそもは正樹の出張だったけど、私の誕生日もあったんだなと思いだす。

「こんな豪勢な誕生日プレゼント、ありがとうね。次は正樹の誕生日だから、何か盛大にやらないと」

 正樹の誕生日は十一月十日で、慎也は五月二十日だ。
 三人して十日、二十日、三十日なので覚えやすい。特売日みたいだ。

「楽しみにしてるよ」

 私は彼の〝楽しみ〟を想像してなまぬるーく笑った。

「さて……」

 明日の午後フライトなので、早めに寝ないと……と腰に手を当てたんだけど……。

 う……っ。

 突き刺さるような視線を感じ、私は顔を上げられない。

 今リビングルームにいるけど、二人はベッドルームに近い場所に立っている。

 そろぉ……と視線を上げると、二人がニコニコしている。

 アレですね……。
 旅行最終日だし、そっちも誠意を見せろ……的な。

 はい、分かりました。

「……………………せめてお風呂に入らせてください」

 よく分からないけど、とても低姿勢に頼むと、二人は「よろしい」と頷いた。





 いつもお風呂の中でいちゃつき始めて、訳が分からないまま気持ちよくなって、ベッドにもつれ込んで……という流れが多い。

 私はお風呂が好きで、旅行先であってもバスタイムはのんびり取りたい派だった。
 あとからきちんとお相手しますと言って、今回はお風呂とエッチは別にしてもらった。

「イギリス、どうだった?」

 円形のジェットバスに浸かりながら、慎也が尋ねてくる。
 髪も体も洗ったあとで、今はバスオイルを垂らしたいい匂いのお湯に浸かれて満足だ。

「楽しかったよ。ありがとう。本当にプレ・ハネムーンだね」

 仕事から帰ってきて突然「イギリス行くよ」はびっくりしたけど、来たら来たで楽しかった。

 泊まっているホテルが久賀城ホールディングスのホテルなのもあり、ホテルのご飯が美味しかったのもありがたい。

 ちなみに、ビッグベンやテムズ川、でっかい観覧車のロンドン・アイなどの観光名所は、二人が仕事している間に護衛さんと一緒に見学済みだ。

「本当のハネムーンは、南の島に行こうって思ってるんだけど、どう?」

 正樹が尋ねてきて、私は「いいね!」と頷く。

「本当にいい? 優美は行きたい国とかない?」

 慎也が私の意見を聞いてくれ、なんだか嬉しくもありがたい。

「二人が行きたい所でいいよ。どこにいっても最高の思い出になると思うし。何より、心安らげるハネムーンであってほしい。あと、三人で過ごすから、プライバシーが守れる所かな」

「それもそうだね。僕が当初考えていたのは、バリ、ハミルトンとかだけど、王道でハワイもいいかもね。オアフ島で観光してさ、あとはマウイ島とかハワイ島でのんびりするのもアリかも」

「おー。いいかもね。ハワイなら、観光もゆっくりも叶えられそう」

 私が乗り気になったからか、慎也も今度は何も言わない。

 会話をしながら、私は無意識にお腹を揉んでほぐしていた。
 むくんだふくらはぎや太腿とかもだけど、この旅行でむっちりお肉がついてしまった気がして、お風呂のたびに必死に揉みほぐしていた。

 セルライト撲滅、セルライト撲滅……。

「優美ちゃんさぁ、そんなにお腹とか気になるの?」

「えっ? 気になる? やっぱり緩くなってきた?」

 とっさに身を乗り出した瞬間、横にいた慎也が、ガッ! と私のウエストを掴んできた。

「わぁっ!」

 思わず悲鳴を上げた私の腰をしっかり掴んだ慎也は、その手を自分の目の前にかざす。

「大して変わってないと思うけど」

 どんな測り方しとんじゃい。

「慎也たちはそんなに気にしてないだろうけど、私はミリ単位で気にしてるの」

 ブッスゥ……、とむくれてみせると、正樹がケロリと言う。

「もう帰国だから、また一緒に絞ろうよ」

 うん……。そうなんだけどさ。

「はー。最近自分に甘かったから、追い込みますか!」

 ピシャッと自分の頬を叩いて気合いを入れた時、正樹がにんまりと笑った。

「何なら〝激しい運動〟に協力してもいいけど」

 彼の言わんとする事をする理解した私は、横を向いてじんわりと赤面する。

「……そういう言い方、ちょっとおじさんっぽいんだけど」

「優美ちゃんを抱けるなら、何だっていいよ」

 目を細め嬉しそうに笑った正樹が、私の頬に手を伸ばし親指で唇をなぞってくる。

 慎也は私を抱き寄せ、首筋にキスをし始めた。
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