198 / 539
イギリス 編
思ってるようなのじゃないから
しおりを挟む
「帰国したら、沢山甘えていいからな?」
「お、言ったね? ……っていうか、一週間近くいるとさすがにお醤油味の物とか、お寿司食べたいわ」
「あー、分かる!」
こっちに来てからトレーニングできてなくてヤバいけど、ラーメン食べたいなぁ。
そんな事を思っていると、足音がして正樹が現れた。
と、その後ろにはシャーロットさん。
彼女はワンピースをはためかせ、私を凝視している。
え……? 何? こわ……。
『シャーロット』
正樹が彼女の名前を呼んで嗜め、彼女の目の前に手をかざして、私を見ないようにする。
『あら、ごめんなさい』
彼女は軽やかに笑って向かいのソファに座り、青い目でまた私を凝視してきた。
スニーカーを履いた足下から、まるでスキャンするような視線でジィー……と見てくるので、いささか居心地が悪い。
『あの、何か?』
『いいえ』
声を掛けてもにっこり笑われるので、正直不気味で堪らない。
……あー、我慢、我慢……。
私は頬を引きつらせて笑い返す。
そのあと参加したクリスさんも交え、世間話をしながら湖を堪能した。
**
途中、ボウネス近辺でクルーザーを停め、湖上で遅めのランチをとった。
そのあと、ボウネスに船をつけ観光する。
……んだけど、慎也と正樹はシャーロットさん預けだ。
はぁ……。
歩いて行く三人を見送り、私はワシワシとキャップ越しに頭を掻く。
『ロティーが悪いね。けど、あいつのアレ、優美が思ってるようなのじゃないから』
クリスさんが話し掛けてきて、私は「へっ!?」と声を上げる。
すると彼は、申し訳なさそうに苦笑した。
『優美、ロティーに嫉妬してるだろ』
『し、…………てない、って言ったら嘘になりますけど、…………あー…………』
いかんせん、ゴチャッとした感情を打ち明けるには、相手が悪すぎる。
『まぁ、心配しなくていいよ』
ポンと肩を叩かれ、『少し歩こうか』と言われたので、観光する事にした。
後ろからはエディさんが着いてきている。
自由時間は十分にあるので、バスに乗って例の某うさぎを扱う展示館に行く事にした。
ビルさんは船に残って、ゆっくり読書をするらしい。
**
お土産に、女性陣が喜びそうなうさぎグッズを買ったあと、私たちはアイスクリームを食べながらベンチに座っていた。
いまだに、なんでこのメンツなのか分からないけど、おもてなししてくれてるんだから乗っかっておかないとという心境だ。
『正樹、元気になって良かったよ』
クリスさんがそう言ったので、私は「ん?」と彼を見る。
『あいつと初めて会ったのは八年前だけど、離婚したあとは物凄い落ち込んでたからな』
『あー、その期間の正樹に会ってたんですよね』
『あいつの家族とも交流してたけど、皆あいつを気遣っていたな。そりゃあ、離婚したてなら地雷だろうけど』
隣でエディさんが無言でこちらを睨んだけど、クリスさんは慣れているのかまったく気にしない。
『正樹が優美に出会えて良かったよ。勿論、慎也も。あいつはずっと一途に〝好きな人がいる〟って言い続けてたし』
照れ臭くなり、私は意味もなく頭を掻く。
『だから俺は、三人を応援したい。まぁ、最初に話を聞いた時はちょっとびっくりしたけど。今回の滞在で三人の様子を見てて、うまくいってるんだなって思った』
『ありがとうございます』
ホッとした時、エディさんが口を挟んできた。
『例の話を考えてくれたか?』
あー、もう!
例の話と聞いて、クリスさんが怪訝な顔をする。
『クルージングの間に色々考えてみましたが、どう考えても誰も幸せになりませんね』
『どうしてだ? 少なくとも俺は助かるし、君には報酬が発生する』
『私、お金がほしいなんて一言も言ってませんけど』
私たちの会話を聞き、クリスさんは不穏なものを感じて眉を寄せる。
『兄貴、何の話?』
『女よけの役目を、彼女に引き受けてもらえないか、交渉している』
『バカか!?』
『バカですよね』
クリスさんの言葉に、私は深く頷く。
「お、言ったね? ……っていうか、一週間近くいるとさすがにお醤油味の物とか、お寿司食べたいわ」
「あー、分かる!」
こっちに来てからトレーニングできてなくてヤバいけど、ラーメン食べたいなぁ。
そんな事を思っていると、足音がして正樹が現れた。
と、その後ろにはシャーロットさん。
彼女はワンピースをはためかせ、私を凝視している。
え……? 何? こわ……。
『シャーロット』
正樹が彼女の名前を呼んで嗜め、彼女の目の前に手をかざして、私を見ないようにする。
『あら、ごめんなさい』
彼女は軽やかに笑って向かいのソファに座り、青い目でまた私を凝視してきた。
スニーカーを履いた足下から、まるでスキャンするような視線でジィー……と見てくるので、いささか居心地が悪い。
『あの、何か?』
『いいえ』
声を掛けてもにっこり笑われるので、正直不気味で堪らない。
……あー、我慢、我慢……。
私は頬を引きつらせて笑い返す。
そのあと参加したクリスさんも交え、世間話をしながら湖を堪能した。
**
途中、ボウネス近辺でクルーザーを停め、湖上で遅めのランチをとった。
そのあと、ボウネスに船をつけ観光する。
……んだけど、慎也と正樹はシャーロットさん預けだ。
はぁ……。
歩いて行く三人を見送り、私はワシワシとキャップ越しに頭を掻く。
『ロティーが悪いね。けど、あいつのアレ、優美が思ってるようなのじゃないから』
クリスさんが話し掛けてきて、私は「へっ!?」と声を上げる。
すると彼は、申し訳なさそうに苦笑した。
『優美、ロティーに嫉妬してるだろ』
『し、…………てない、って言ったら嘘になりますけど、…………あー…………』
いかんせん、ゴチャッとした感情を打ち明けるには、相手が悪すぎる。
『まぁ、心配しなくていいよ』
ポンと肩を叩かれ、『少し歩こうか』と言われたので、観光する事にした。
後ろからはエディさんが着いてきている。
自由時間は十分にあるので、バスに乗って例の某うさぎを扱う展示館に行く事にした。
ビルさんは船に残って、ゆっくり読書をするらしい。
**
お土産に、女性陣が喜びそうなうさぎグッズを買ったあと、私たちはアイスクリームを食べながらベンチに座っていた。
いまだに、なんでこのメンツなのか分からないけど、おもてなししてくれてるんだから乗っかっておかないとという心境だ。
『正樹、元気になって良かったよ』
クリスさんがそう言ったので、私は「ん?」と彼を見る。
『あいつと初めて会ったのは八年前だけど、離婚したあとは物凄い落ち込んでたからな』
『あー、その期間の正樹に会ってたんですよね』
『あいつの家族とも交流してたけど、皆あいつを気遣っていたな。そりゃあ、離婚したてなら地雷だろうけど』
隣でエディさんが無言でこちらを睨んだけど、クリスさんは慣れているのかまったく気にしない。
『正樹が優美に出会えて良かったよ。勿論、慎也も。あいつはずっと一途に〝好きな人がいる〟って言い続けてたし』
照れ臭くなり、私は意味もなく頭を掻く。
『だから俺は、三人を応援したい。まぁ、最初に話を聞いた時はちょっとびっくりしたけど。今回の滞在で三人の様子を見てて、うまくいってるんだなって思った』
『ありがとうございます』
ホッとした時、エディさんが口を挟んできた。
『例の話を考えてくれたか?』
あー、もう!
例の話と聞いて、クリスさんが怪訝な顔をする。
『クルージングの間に色々考えてみましたが、どう考えても誰も幸せになりませんね』
『どうしてだ? 少なくとも俺は助かるし、君には報酬が発生する』
『私、お金がほしいなんて一言も言ってませんけど』
私たちの会話を聞き、クリスさんは不穏なものを感じて眉を寄せる。
『兄貴、何の話?』
『女よけの役目を、彼女に引き受けてもらえないか、交渉している』
『バカか!?』
『バカですよね』
クリスさんの言葉に、私は深く頷く。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,763
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる