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これからの事 編

楽しい事をしたい、考えたい

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「有名な人が宣伝しているから買う」で、買い物を失敗する例だってあるだろう。

 けどそれが人に関する噂なら、直接その人に「どうなの?」と聞きづらい場合だって勿論ある。

 そういう時は、基本加担しない、信じないの一択だ。
 逆に、相手に対して「気の毒に……」と思う。

 仮に私の悪い噂を聞いて信じ込んでる人がいたとしても、そんな単純な人に嫌われても大して痛くも痒くもないな、とは思う。

 私は自分が尊敬できる人と仲良くなりたいと思っているから。

「ああはなりたくないな」という人に嫌われても、逆に「距離を取ってくれてありがとう」としか思わない。

 そういう人に気を遣い続けていると疲れるだけだし、女性同士のグループみたいなのの付き合いも、うんざりしている。

 表面上ニコニコしながら、「自分より幸せになるなよ」と牽制し合う。

 その時も、佐藤さんがブランド物のアクセサリーをつけていたからという理由で、二人は「自慢してるよねー」と同意し合い、他の事にも文句を付け始めたのだ。

 私の友達には、そういう事を言う人はいない。

 友達の幸せを「素敵だね」と素直に喜べる人たちばかりだ。
 もしくは、「羨ましいな」と思っても、その嫉妬心を良いエネルギーに変えられたり、誰かにぶつけるのは間違えていると、自制できる人たちだ。

 そんな彼女たちなので、私が「結婚しました」と〝一抜け〟を言えば、絶対何か言うだろうなぁ……と思っている。

 そして私の家庭に介入し、夫がどういう人か、どこで働き、年収はどれぐらいか、新居はどこでどんな家、内装はどうなっているか。
 結婚指輪はどこのブランドで、新婚旅行はどこに行ったのか。

 少しでも見下せるポイントを粗探ししようとして、根掘り葉掘り聞いてくるに違いない。

 ああいう人たちは、嫉妬しているのにそれを認めたくないから、何でもいいからバカにできる点を探そうとする。

 何もなければ、私が二十八歳だという事で「ギリギリだよね」と言ったり、私の印象から「旦那さん、尻に敷かれそう」とか言うだろう。

 生きているだけ、そこにいるだけで、存在そのものが悪口の材料になる。

 それを思うと、嫌で堪らない。

 彼女たちみたいな人になら、嫌われても構わないと思っている。
 でも面倒事が増えて構わないとは思っていない。

 評判とか、〝他者から見た自分〟にはあまりこだわらないようにしたいと思っている。
 けれど会社だとどうしても仕事に関わり、へたすると顧客にまで誤った噂を流されかねない。

 彼女たちには前科があるからだ。

 商談中にいきなり取引先相手から「こんな話を聞いたんだけど、本当?」と言われた。

 聞いてみれば根も葉もない私の悪い噂で……。

 どうやって吹き込んだかは分からないけれど、〝たまたま〟遭遇した時に言われたんだそうだ。

 その時は「折原さんに限ってないと思うけど」と笑っていたので、普段私が積み上げた信頼が買ったと思っている。

 けど、仕事の嫉妬や個人的感情を、社外に出すなよ! は凄く思って悔しかった。

 私だって人間だから、煩わしい事は少ないほうがいい。

 だから結婚生活についても、つい心配してしまうのだ。

 ウキウキ新生活を送っているのに、会社に行くのが憂鬱……、思わず佐藤さんたちの事を考えてしまう……なんて御免だ。

 悩めば慎也と正樹にも心配をかける。
 そして、五十嵐さんのような制裁が繰り返されるかもしれない。

 考えると、面倒で堪らない。

 もっと他にやるべき事があるはずなのに、「どうしてそうなるの」と思ってしまう。
 そんなくだらない悩みに対峙している暇があるなら、もっと楽しい事ができるはずだし、時間が勿体なくて堪らない。

 どんなお金持ちでも、時間だけは買えない。
 時間が一番の財産とも言える。
 そしてその時間を少しでも幸せに過ごすために、私は働いてお金を稼いでいる。

 貯金も勿論するけれど、限られた中で美味しい物を食べ、好きな友達と過ごし、買い物をし、お金を貯めて旅行に行く。

 楽しい事をしたい、考えたい。

 世界にはもっともっと素敵な事があるはずなのに、私がどう頑張っても変えられないモンスターのせいで、うじうじ悩みたくない。

 だからこそ、彼女たちに結婚について探られたくない。

 誤魔化し続けて、彼女たちが諦めるのを待てばいいのかもしれない。
 けど同じ部署内にターゲットがいる状態なら、そうそう矛先を変えないだろう。

 私は第三者的に見てスタイルがいいと言われるし、できる女系のメイクをして美人だという評価も得ている。

 勿論、文香のお陰だ。

 営業成績もトップクラスだし、彼女たちはいつもつまらなく思っているのだろう。

 同じ部署内には他にも女性がいるけれど、見た目普通で、堅実に仕事をこなし、一日が終わったら帰っていく……という仕事人ばかりだ。

 そういう人と私、どちらをコケにしたいかだ。
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