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バレンタイン 編

女は度胸

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 シャワーブースに三人で入ると、さすがにギュウギュウだった。

 何をやっているのか……。
 そもそも三人で入る前提の大きさじゃないでしょ。

 と言っても、二人は私の体を洗うと言ってきかない。

 ようやく体を洗い終えたあと、飲み物を飲みながら夜景を見下ろし、バスタブに浸かる。
 湯上がりのケアをしている途中で、私は洗面台にのっている巾着袋をチラチラ見て、赤面しつつ言った。

「あの、〝準備〟するから先にベッドルームに行ってて」

「OK」

「楽しみにしてるね」

 そう言って、下着一枚にバスローブを羽織った彼らは出ていった。

 ……さて……。

 バスタオルを巻いた私は、鏡越しに自分を見て溜め息をつく。

 フェイスケアとかはいつもの物を使わなくても、高級アメニティが用意されてあったので問題ない。
 むしろいつもと違った物を使えて少し嬉しい。
 髪も良さそうなドライヤーで乾かし、ヘアオイルを使ってツヤサラができあがっている。

「はぁ……」

 溜め息をつき、私は巾着袋を開ける。

 中から出てきたのは黒いレースだ。

 文香とも相談したけど、トップレスになっているセクシーランジェリーは、着けたままプレイできていい。
 けど、剥き出しのまま、洗面所からベッドルームに行くのも抵抗がある。

 そのブランドでは綺麗なレースでできたニップレスも売っていた。
 別売りの接着剤で乳首につけるらしいけれど、それはいかがなものかと思ったのだ。

 何だかんだで、彼らは吸ったりする訳で。
 なのに接着剤がついているのは、宜しくないかな? と思ったのだ。

 だから、ホルターネックみたいな形状で、胸の中心部をレースが通って乳首を隠してくれる物を選んだ。
 正面から見たら、黒いレースでトライアングルができている感じだ。

 それに同じデザインのガーターベルト。

 そして文香に「いいからこれにしろ」と言われた、オープンストリングショーツ……。
 ストリングっていうほどだから、ほとんど紐だ。
 鼠径部にだけほんの小さな三角形のレースがある。
 けど〝オープン〟なので肝心の場所はまるっと布地がない。
 代わりにレースの先端からイヤリングみたいにチャームが下がっていて、余計にいやらしい。

 これ……、アレだな。
 仰向けになったら丁度、クリの部分にチャームの先端がくるような……。

 あああああ……、恥ずかしい!
 ……でも、これもバレンタインだ!

 二人は甘い物はそれほど……だから、チョコレートを〝もらう〟事は嬉しくても、食べる事についてはあまり興味がないだろう。

 だからこそ、私自身のほうで満足してもらう。

 我慢……、我慢だ……。

「……痴女みたいだ……」

 できあがった自分を鏡で見て、真っ赤になって呟く。

「女は度胸」

 鏡の中の自分に言い聞かせ、私はバスローブを羽織ってフワフワスリッパに足を入れた。





「お……、お待たせしました……」

 ベッドルームを覗き込むと、二人はすでにキングサイズベッドに座って雑談していた。

 バスローブ姿なので、滲み出る男優感……。

 ……は置いといて。

「おー、待ってた。……で、どう?」

 慎也が嬉しそうに言い、ベッドの上で正座する。

「いい子で待ってました!」

 正樹も言い、同じように正座する。

 ………………ああああああ…………、恥ずかしい…………。

 ……しゃーない……。腹をくくりますか。

「……笑わないでね」

 私は小さい声でお願いしたあと、バスローブの腰紐を引いた。

 ……めっちゃ凝視してる……。

 恥ずかしいけれど、ゆっくり脱いでいくと、二人は静かに目を見開いて興奮を表す。
 口も大きく開いていて、声には出していないけれど「わぁーお」と言っているのが分かった。外国人か。

 大事な部分が剥き出しになっているのが恥ずかしく、私は彼らと同じようにベッドの上に正座した。

「……ど、どうぞ宜しくお願い致します……」

 まるで武家の娘が三つ指ついているみたいな感じで、我ながら何をやっているのかと首を傾げたくなる。
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