111 / 539
文香&和也とお茶 編
とっても居心地良かったんだよ
しおりを挟む
「その時に優美がなんの下心もなく声を掛けてくれて、何か……フッと気持ちが軽くなったんだよね。ぶっちゃけ、第一印象は『垢抜けてない子だな』って思ったけど、雰囲気から誠実そうだなっていうのは分かった」
「あはは! あの時はまだムチムチしてたし、ファッションセンスも壊滅的だったよね」
当時を思うと垢抜けてないと言われてもその通りなので、怒る気にもならない。
「まぁ、友達になるのに必要な項目じゃないしね。優美は私を敵視しなかったし、普通の子みたいに扱ってくれた。それが友達になろうって思った一番の要因だった。側にいると、とっても居心地良かったんだよ」
「いやいや、照れるじゃないか」
私は冗談めかして言う。
けれど、文香は真顔のまま続ける。
「私みたいなのに近付く〝友達〟ってね、金持ちとか顔がいいとか、それが目当てなの。一緒にいれば何かラッキーな事があるだろうとか、金持ちで顔のいい友達がいたら自分のステータスになるとか、そういう事しか考えない。誕生日になるとプレゼントをもらったりもしたけど、お揃いのアクセとか……こう、友達なのに独占欲を満たしてくるような感じで気持ち悪かった」
「あー……」
何となく理解し、私は頷く。
「そういうのを見透かしておざなりな態度を取ってると、結局陰口叩かれるんだよね。『春コスメ、何がオススメ?』って聞かれたから、あらゆるブランドのコスメをリサーチした上で教えるでしょ? そしたら裏じゃ『新商品、全ブランド買えるのを自慢してる』とか言われて……。知らんわってなる」
文香の闇が深いのは分かっているので、私は大人しく話を聞く。
出されたデザートは、バレンタインを意識したのか、ベリー系のフランボワーズで、ハート型になっていて可愛い。
加えて店のロゴがついたチョコレートもついていて、私と文香は一旦黙って写真を撮る。
写真撮影が終わったあと、文香は高級チョコをポイッと無造作に口の中に入れた。
そしてモゴモゴしながら話の続きをする。
「結局ある種の女って、マウントの取り合いでしか自分の価値を見いだせないんだよね。友達なのに、何で相手より優れる必要があるのか分からないけど……。とにかく学生時代の〝友達〟は皆、私の欠点を探そうとしてた。そういうのにはこりごりだったんだけど……」
口の中でチョコレートを溶かし、文香は私を見てニコッと笑う。
「優美って、私に『何が好きなの?』って聞いてくれたじゃない。あれ、嬉しかったな。それで私が〝バケ丸〟って言っても全然バカにしなかったし、引かなかった」
文香の言うバケ丸っていうのは、アニメに出てくるゆるキャラっぽいオバケのキャラクターだ。
どこにどうヒットしたのか分からないけど、彼女はバケ丸のグッズを集めてるし、何なら子供に混じって劇場版アニメも見に行ってる。
私もそれに付き合ってるけど、さすが劇場版だけあってアニメの作り込みも凄く、感動するストーリーで見る目が変わった。
『凄かったね。子供向けと思ってあなどれない』と素直に言うと、文香はとっても喜んでいた。
正直、私はその作品やバケ丸に嵌まるほどではないし、いまだ「好き」とも言い切れない。
でも親友が好きなものなら肯定したいし、喜んでくれるならグッズとかプレゼントしたいと思ってる。
「優美って私の好きなものを大切にしてくれるし、手作りでバケ丸のぬいぐるみも作ってくれたでしょ? あれ、ほんっとうに嬉しくて……。だから優美とは一生の友達になれると思った」
文香に言われ、私は「あはは」と笑う。
「喜んでくれたのは嬉しいけど、オーバーだよ。材料だって高いもんじゃないし、顔の刺繍も慣れてないからグチャグチャになっちゃったし」
そう。言葉の通り、材料は百均で揃えたフェルトと綿がメインだ。
遙か昔、中学生の家庭科で習ったシンプルな縫い方で作ったので、慣れていない事もありお世辞にも上手とは言えない仕上がりになった。
けれど文香は「ううん」と首を横に振る。
「作ってくれるっていう気持ちがプライスレスでしょ。あれって世界に一つだよ? 誰も持ってないバケ丸グッズだよ? サイコーじゃん」
「えへへ、なら良かった」
文香の好きな物をプレゼントしたいと思ったけど、デパコス類は当時の私には高かったし、どうせなら気持ちを込めた物かな……と思った。
勿論、そのマスコットの他にも、バスソルトとか精一杯お洒落な物はあげたんだけど。
「喜びのサイドチェスト」
照れ隠しに、そう言ってポーズを取ると、文香と和人くんが笑い崩れた。
「ちょ……っ、この店でやめ……」
「ラットスプレッド・フロント」
両肘を張ってむいっと背中の筋肉を強調したところで、調子に乗りすぎたのか、ブラウスの肩周りがミチッといったのでやめておいた。
「まぁ、そんな感じで私は〝本当の友達〟を見つけられたと思ってる。だから優美のダイエットや女磨きにも、知る限りの事を教えたし、自分でも勉強してアドバイスした。お陰で私も勉強になったよ」
笑って涙が滲んだのか、文香は指先で目元を拭う。
「あはは! あの時はまだムチムチしてたし、ファッションセンスも壊滅的だったよね」
当時を思うと垢抜けてないと言われてもその通りなので、怒る気にもならない。
「まぁ、友達になるのに必要な項目じゃないしね。優美は私を敵視しなかったし、普通の子みたいに扱ってくれた。それが友達になろうって思った一番の要因だった。側にいると、とっても居心地良かったんだよ」
「いやいや、照れるじゃないか」
私は冗談めかして言う。
けれど、文香は真顔のまま続ける。
「私みたいなのに近付く〝友達〟ってね、金持ちとか顔がいいとか、それが目当てなの。一緒にいれば何かラッキーな事があるだろうとか、金持ちで顔のいい友達がいたら自分のステータスになるとか、そういう事しか考えない。誕生日になるとプレゼントをもらったりもしたけど、お揃いのアクセとか……こう、友達なのに独占欲を満たしてくるような感じで気持ち悪かった」
「あー……」
何となく理解し、私は頷く。
「そういうのを見透かしておざなりな態度を取ってると、結局陰口叩かれるんだよね。『春コスメ、何がオススメ?』って聞かれたから、あらゆるブランドのコスメをリサーチした上で教えるでしょ? そしたら裏じゃ『新商品、全ブランド買えるのを自慢してる』とか言われて……。知らんわってなる」
文香の闇が深いのは分かっているので、私は大人しく話を聞く。
出されたデザートは、バレンタインを意識したのか、ベリー系のフランボワーズで、ハート型になっていて可愛い。
加えて店のロゴがついたチョコレートもついていて、私と文香は一旦黙って写真を撮る。
写真撮影が終わったあと、文香は高級チョコをポイッと無造作に口の中に入れた。
そしてモゴモゴしながら話の続きをする。
「結局ある種の女って、マウントの取り合いでしか自分の価値を見いだせないんだよね。友達なのに、何で相手より優れる必要があるのか分からないけど……。とにかく学生時代の〝友達〟は皆、私の欠点を探そうとしてた。そういうのにはこりごりだったんだけど……」
口の中でチョコレートを溶かし、文香は私を見てニコッと笑う。
「優美って、私に『何が好きなの?』って聞いてくれたじゃない。あれ、嬉しかったな。それで私が〝バケ丸〟って言っても全然バカにしなかったし、引かなかった」
文香の言うバケ丸っていうのは、アニメに出てくるゆるキャラっぽいオバケのキャラクターだ。
どこにどうヒットしたのか分からないけど、彼女はバケ丸のグッズを集めてるし、何なら子供に混じって劇場版アニメも見に行ってる。
私もそれに付き合ってるけど、さすが劇場版だけあってアニメの作り込みも凄く、感動するストーリーで見る目が変わった。
『凄かったね。子供向けと思ってあなどれない』と素直に言うと、文香はとっても喜んでいた。
正直、私はその作品やバケ丸に嵌まるほどではないし、いまだ「好き」とも言い切れない。
でも親友が好きなものなら肯定したいし、喜んでくれるならグッズとかプレゼントしたいと思ってる。
「優美って私の好きなものを大切にしてくれるし、手作りでバケ丸のぬいぐるみも作ってくれたでしょ? あれ、ほんっとうに嬉しくて……。だから優美とは一生の友達になれると思った」
文香に言われ、私は「あはは」と笑う。
「喜んでくれたのは嬉しいけど、オーバーだよ。材料だって高いもんじゃないし、顔の刺繍も慣れてないからグチャグチャになっちゃったし」
そう。言葉の通り、材料は百均で揃えたフェルトと綿がメインだ。
遙か昔、中学生の家庭科で習ったシンプルな縫い方で作ったので、慣れていない事もありお世辞にも上手とは言えない仕上がりになった。
けれど文香は「ううん」と首を横に振る。
「作ってくれるっていう気持ちがプライスレスでしょ。あれって世界に一つだよ? 誰も持ってないバケ丸グッズだよ? サイコーじゃん」
「えへへ、なら良かった」
文香の好きな物をプレゼントしたいと思ったけど、デパコス類は当時の私には高かったし、どうせなら気持ちを込めた物かな……と思った。
勿論、そのマスコットの他にも、バスソルトとか精一杯お洒落な物はあげたんだけど。
「喜びのサイドチェスト」
照れ隠しに、そう言ってポーズを取ると、文香と和人くんが笑い崩れた。
「ちょ……っ、この店でやめ……」
「ラットスプレッド・フロント」
両肘を張ってむいっと背中の筋肉を強調したところで、調子に乗りすぎたのか、ブラウスの肩周りがミチッといったのでやめておいた。
「まぁ、そんな感じで私は〝本当の友達〟を見つけられたと思ってる。だから優美のダイエットや女磨きにも、知る限りの事を教えたし、自分でも勉強してアドバイスした。お陰で私も勉強になったよ」
笑って涙が滲んだのか、文香は指先で目元を拭う。
22
お気に入りに追加
1,819
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
【R-18・短編】部長と私の秘め事
臣桜
恋愛
彼氏にフラれた上村朱里は、酔い潰れていた所を上司の速見尊に拾われ、家まで送られる。タクシーの中で元彼との気が進まないセックスの話などをしていると、部長が自分としてみるか?と言い……。
かなり前に企画で書いたものです。急いで一日ぐらいで書いたので、本当はもっと続きそうなのですがぶつ切りされています。いつか続きを連載版で書きたいですが……、いつになるやら。
ムーンライトノベルズ様にも転載しています。
表紙はニジジャーニーで生成しました
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
サディストの飼主さんに飼われてるマゾの日記。
風
恋愛
サディストの飼主さんに飼われてるマゾヒストのペット日記。
飼主さんが大好きです。
グロ表現、
性的表現もあります。
行為は「鬼畜系」なので苦手な人は見ないでください。
基本的に苦痛系のみですが
飼主さんとペットの関係は甘々です。
マゾ目線Only。
フィクションです。
※ノンフィクションの方にアップしてたけど、混乱させそうなので別にしました。
ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~
taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。
お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥
えっちめシーンの話には♥マークを付けています。
ミックスド★バスの第5弾です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる