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箱根クリスマス旅行 編
私からのクリスマスプレゼント
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でも何が起こるか分からないのが、人生だ。
ハプバーで慎也に捕獲されたあたりから、私の人生はほぼほぼこうなると決まっていたのだろう。
「ねぇ、優美。すぐじゃないけど、そのうち俺たちの家族に会って」
「うん」
「僕の色んな背景を含め、家族には本当の事を言おうと思ってる。勿論、乱交パーティーに行ってたとか、優美ちゃんと慎也がハプバーで……とか、そういうのは伏せるけどね」
「あはは……」
流石にハプバーの事は人様に言えず、私は乾いた笑いを漏らす。
「馬鹿正直に何でも言わなくてもいいけど、僕が二人と一緒にいたいと思うなら、僕がその理由をきちんと話すべきだ。その上で、慎也と優美ちゃんが〝受け入れてくれる〟っていう形にしたら、綺麗に収まると思う」
「でもそれじゃあ正樹が……」
一人だけ誤解されてしまう。
私の隣で寝転んでいる慎也が、頭を撫でてきた。
「そこは俺たち兄弟に任せて。両親だって再婚したあと正樹が戸惑っていたのは分かってる。生まれてしまった誤解や心の壁を、今きちんと話すタイミングなのかもしれない。今までぶつかり合わず避けていた問題を、結婚前にきっちり清算するだけだ」
慎也が言ったあと、正樹が頷いて続ける。
「僕は優美ちゃんと出会って、慎也とも本音で話せた。僕はようやく自分の家族や人生に向き合おうとしてるんだ。慎也の言った通り、家族を避けていたのは僕だ。結婚っていう人生の転機を前に、きちんと話し合うよ」
彼の決意が固いと知り、私ももう言う事はないなと感じた。
「分かった。必要があれば援護する。それ以外は余計な事は言わずに見守ってる」
「うん、ありがとう。きっとこれは、長年僕ら家族が放置していた問題なんだ。スッキリさせて、皆で幸せになりたい」
正樹はもう後ろめたいもののない顔をしている。
良かった。
「ねぇ、優美。俺からクリスマスプレゼントないっていうのはアレだから、受け取って」
慎也が浴衣の袖から細長い箱を取り出す。
それを見て、素朴な疑問を抱いてしまった。
……どうやってしまってたんだろう。
部屋に戻ったあと、ゴソゴソしてたとは思ってたけど……。
さすがに寝たままではと思って起き上がり、受け取る。
箱は正樹が贈ってくれた婚約指輪と、同じジュエリーブランドの物だ。
パカリと開くと、中には四つ葉のクローバーを模したのか、ペアシェイプのルビーを四つ並べ、その周囲をラウンドダイヤモンドであしらったペンダントが入っていた。
うう……。これもウン百万はしそうだな……。
ジュエリー負けする自信はあるけれど、彼らが私に贈りたいと思ってくれたなら、堂々とつけるマインドでいたい。
せっかくもらった物を「自分には勿体ないから」という理由で、しまい込んでおくのは彼らに失礼だ。
身の丈に合わないと思うなら、少しでもこのペンダントに似合う自分になれるよう、頑張ればいい。
慎也はペンダントを見て微笑む。
「優美、七月三十日生まれだろ。七月の誕生石も、七月三十日の守護石もルビー。優美は普段、アクセサリーをつけないみたいだから慣れないかもだけど、お守りにしといて。男よけにもなると思う。あっ、仕事中はいいからね」
そう言って慎也は私の首にペンダントをつけてくれた。
「……ありがとう」
微笑んだあと、私はとある事を思いだした。
「あのね、私からもクリスマスプレゼントがあるんだけど」
「「何!?」」
二人が息ぴったりに、弾かれたように尋ねてくる。
その様子に思わず笑ったあと、「ちょい待って」と言って荷物を置いている場所に向かう。
旅館に向かう時に、ブランド物の紙袋を二つ持っていたら二人から「それなーに?」と言われてしまう。
なので小さめのトランクに畳んだままのショッパーを入れ、箱は潰れないようにしまっておいた。
そして現地セットという作戦だ。
「……二人ならいつもいい物を身につけてそうで、今さら……っていう感じだけど」
箱をショッパーに入れて、目印の付箋を取り、私は二人にそれぞれのプレゼントを渡す。
高級感のある黒いショッパーには、金色の箔押しでエンブレムとロゴがついている。
「はい、どうぞ」
「「ありがとう!」」
正座して待っていた二人は、嬉しそうにプレゼントを受け取り、互いをチラッと気にする。
「あー、諍いが起こらないように、同じ物の色違いにしています。許したまえ」
「優美がくれた物で喧嘩はしないよ」
嬉しそうにラッピングを丁寧に剥がした慎也は、正方形の箱に収められたベルトに目を輝かせる。
正樹がいい笑顔でお礼を言ってきた。
ハプバーで慎也に捕獲されたあたりから、私の人生はほぼほぼこうなると決まっていたのだろう。
「ねぇ、優美。すぐじゃないけど、そのうち俺たちの家族に会って」
「うん」
「僕の色んな背景を含め、家族には本当の事を言おうと思ってる。勿論、乱交パーティーに行ってたとか、優美ちゃんと慎也がハプバーで……とか、そういうのは伏せるけどね」
「あはは……」
流石にハプバーの事は人様に言えず、私は乾いた笑いを漏らす。
「馬鹿正直に何でも言わなくてもいいけど、僕が二人と一緒にいたいと思うなら、僕がその理由をきちんと話すべきだ。その上で、慎也と優美ちゃんが〝受け入れてくれる〟っていう形にしたら、綺麗に収まると思う」
「でもそれじゃあ正樹が……」
一人だけ誤解されてしまう。
私の隣で寝転んでいる慎也が、頭を撫でてきた。
「そこは俺たち兄弟に任せて。両親だって再婚したあと正樹が戸惑っていたのは分かってる。生まれてしまった誤解や心の壁を、今きちんと話すタイミングなのかもしれない。今までぶつかり合わず避けていた問題を、結婚前にきっちり清算するだけだ」
慎也が言ったあと、正樹が頷いて続ける。
「僕は優美ちゃんと出会って、慎也とも本音で話せた。僕はようやく自分の家族や人生に向き合おうとしてるんだ。慎也の言った通り、家族を避けていたのは僕だ。結婚っていう人生の転機を前に、きちんと話し合うよ」
彼の決意が固いと知り、私ももう言う事はないなと感じた。
「分かった。必要があれば援護する。それ以外は余計な事は言わずに見守ってる」
「うん、ありがとう。きっとこれは、長年僕ら家族が放置していた問題なんだ。スッキリさせて、皆で幸せになりたい」
正樹はもう後ろめたいもののない顔をしている。
良かった。
「ねぇ、優美。俺からクリスマスプレゼントないっていうのはアレだから、受け取って」
慎也が浴衣の袖から細長い箱を取り出す。
それを見て、素朴な疑問を抱いてしまった。
……どうやってしまってたんだろう。
部屋に戻ったあと、ゴソゴソしてたとは思ってたけど……。
さすがに寝たままではと思って起き上がり、受け取る。
箱は正樹が贈ってくれた婚約指輪と、同じジュエリーブランドの物だ。
パカリと開くと、中には四つ葉のクローバーを模したのか、ペアシェイプのルビーを四つ並べ、その周囲をラウンドダイヤモンドであしらったペンダントが入っていた。
うう……。これもウン百万はしそうだな……。
ジュエリー負けする自信はあるけれど、彼らが私に贈りたいと思ってくれたなら、堂々とつけるマインドでいたい。
せっかくもらった物を「自分には勿体ないから」という理由で、しまい込んでおくのは彼らに失礼だ。
身の丈に合わないと思うなら、少しでもこのペンダントに似合う自分になれるよう、頑張ればいい。
慎也はペンダントを見て微笑む。
「優美、七月三十日生まれだろ。七月の誕生石も、七月三十日の守護石もルビー。優美は普段、アクセサリーをつけないみたいだから慣れないかもだけど、お守りにしといて。男よけにもなると思う。あっ、仕事中はいいからね」
そう言って慎也は私の首にペンダントをつけてくれた。
「……ありがとう」
微笑んだあと、私はとある事を思いだした。
「あのね、私からもクリスマスプレゼントがあるんだけど」
「「何!?」」
二人が息ぴったりに、弾かれたように尋ねてくる。
その様子に思わず笑ったあと、「ちょい待って」と言って荷物を置いている場所に向かう。
旅館に向かう時に、ブランド物の紙袋を二つ持っていたら二人から「それなーに?」と言われてしまう。
なので小さめのトランクに畳んだままのショッパーを入れ、箱は潰れないようにしまっておいた。
そして現地セットという作戦だ。
「……二人ならいつもいい物を身につけてそうで、今さら……っていう感じだけど」
箱をショッパーに入れて、目印の付箋を取り、私は二人にそれぞれのプレゼントを渡す。
高級感のある黒いショッパーには、金色の箔押しでエンブレムとロゴがついている。
「はい、どうぞ」
「「ありがとう!」」
正座して待っていた二人は、嬉しそうにプレゼントを受け取り、互いをチラッと気にする。
「あー、諍いが起こらないように、同じ物の色違いにしています。許したまえ」
「優美がくれた物で喧嘩はしないよ」
嬉しそうにラッピングを丁寧に剥がした慎也は、正方形の箱に収められたベルトに目を輝かせる。
正樹がいい笑顔でお礼を言ってきた。
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