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箱根クリスマス旅行 編
人って思っている以上に強いし、頑丈だよ
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「いや、優美ちゃんはヤバイ奴っていうより、無限の母性の塊に思えたんだ」
「母性?」
私は自分がそんなに優しいタイプではないと思っているので、キョトンとする。
「いっつも、何だかんだ言って『仕方ないな』って受け入れて笑うでしょ。あれって相当キャパが広くないとできないと思うんだよね」
「うーん……。それって多分、私が二人を信頼してるからだと思う」
正樹が私の太腿に触れてくる。
「私、3Pなんて初めてだもん。こないだお尻を使ったのも初めてだったし、正直怖かったし緊張した。普通使わない場所だし、扱い方を間違えたら危険だし」
「うん」
慎也は私の胸を弄り続けていて、乳首をクリクリと転がしているので、まじめな話をしているというのに私は感じてしまっている。
彼の手を押さえると、お気に召さなかったようで首筋をカプッと噛まれた。
「それでも許したのは、二人を信じてるからなんだ。二人なら、何があっても私を危険な目に遭わさない。潮とかでビシャビシャにしても嗤わないし、私がどんな反応をしても褒めてくれる。気を失っても、二人が側にいてくれるなら身の危険がないって信じられているの」
クスッと正樹が笑い、私の頬にキスをしてきた。
「ありがとう。最高の褒め言葉だ」
「俺も、それは嬉しい」
慎也も、反対側の頬にキスをしてくる。
「俺は心の底から優美を愛してるからね。絶対に危険な目には遭わせない」
初めてまともに「愛している」と言われた気がして、私はじんわりと頬を染める。
「僕も、僕なりのやり方で優美ちゃんを愛しているよ」
チュッ、とまた正樹がこめかみの辺りにキスをする。
「僕が慎也に取って代わろうとしないのは、ある程度諦めがついているからなんだ」
「……諦め?」
彼を見ると、正樹は穏やかな目で庭園を見ていた。
「僕はまともな人間の感覚を持っていない。普通、僕みたいなのは幸せになれない。でも慎也と優美ちゃんは、僕が入る隙間を作ってくれた。本来なら二人だけで愛し合って完結される関係なのに、優美ちゃんの価値観を変えてまで僕を受け入れてくれた。だからとても感謝してるんだ」
彼の言葉を聞いて、私は悲しくなる。
「正樹は何も悪い事をしてないんだから、そんな風に言わなくていいんだよ。まるで自分には、幸せになる資格がないって言っているようなもんじゃない」
私が言うと、正樹は返事をせず黙り込んでしまった。
溜め息をつき、彼も私の肩に顔を埋めてくる。
そして、震える声で弱さを零した。
「…………っ、素直に家族を愛せない自分は、幸せになる資格がないと思っているんだ……っ。本当はこんな事、慎也にも聞かせたくないのに……っ」
普段は軽薄とも言える言動、振る舞いをしている正樹が、私の前でまっさらな裸の心を晒している。
「いい人たちなんだ。玲奈さんは分け隔てなく接してくれたし、慎也も芳也も未望も、僕を本物の〝兄〟として慕ってくれる……。でも、皆の好意、善意を受けるほど、僕の中で疎外感と闇が濃くなっていくんだ……っ」
切なくなり、私は彼の額にキスをした。
「誰も何も言っていない。分かってる。僕が勝手に被害妄想を深めているだけなんだ」
私は彼の髪を指で梳き、穏やかな声で尋ねる。
「何がそんなに怖いの?」
正樹は目を閉じ、しばらく何かを思いだすように沈黙する。
「…………実母の、死の瞬間が幼い記憶にこびりついているんだ。母と話していたのに、段々声が小さくなって途切れて、…………電子音が鳴って医者や看護師が来て…………」
私は思わず、正樹を抱き締めた。
そんな私を、背中から慎也が抱き締めてくる。
「大事なものは、すべて手の中から消えていく恐怖があった。どれだけ大切にしても、死んだら終わりだ。心を砕いて仲良くなっても、いつ死ぬか分からないし、簡単に失ってしまう」
「分かるよ。……分かるって言っても、正樹の気持ちや痛みまでは完全に理解できない。察する事しかできない」
彼の頭を撫で、私は泣いてしまいそうになる目でグッと遠くを睨んだ。
「でもね、人って思っている以上に強いし、頑丈だよ。私を見てみなさい。こんなにも健康的な女性、なかなかいないよ?」
半ば冗談めかして言うと、正樹が顔を上げて弱々しく笑った。
「…………正樹」
私を抱き締めた慎也が、肩口で兄に語りかける。
「母性?」
私は自分がそんなに優しいタイプではないと思っているので、キョトンとする。
「いっつも、何だかんだ言って『仕方ないな』って受け入れて笑うでしょ。あれって相当キャパが広くないとできないと思うんだよね」
「うーん……。それって多分、私が二人を信頼してるからだと思う」
正樹が私の太腿に触れてくる。
「私、3Pなんて初めてだもん。こないだお尻を使ったのも初めてだったし、正直怖かったし緊張した。普通使わない場所だし、扱い方を間違えたら危険だし」
「うん」
慎也は私の胸を弄り続けていて、乳首をクリクリと転がしているので、まじめな話をしているというのに私は感じてしまっている。
彼の手を押さえると、お気に召さなかったようで首筋をカプッと噛まれた。
「それでも許したのは、二人を信じてるからなんだ。二人なら、何があっても私を危険な目に遭わさない。潮とかでビシャビシャにしても嗤わないし、私がどんな反応をしても褒めてくれる。気を失っても、二人が側にいてくれるなら身の危険がないって信じられているの」
クスッと正樹が笑い、私の頬にキスをしてきた。
「ありがとう。最高の褒め言葉だ」
「俺も、それは嬉しい」
慎也も、反対側の頬にキスをしてくる。
「俺は心の底から優美を愛してるからね。絶対に危険な目には遭わせない」
初めてまともに「愛している」と言われた気がして、私はじんわりと頬を染める。
「僕も、僕なりのやり方で優美ちゃんを愛しているよ」
チュッ、とまた正樹がこめかみの辺りにキスをする。
「僕が慎也に取って代わろうとしないのは、ある程度諦めがついているからなんだ」
「……諦め?」
彼を見ると、正樹は穏やかな目で庭園を見ていた。
「僕はまともな人間の感覚を持っていない。普通、僕みたいなのは幸せになれない。でも慎也と優美ちゃんは、僕が入る隙間を作ってくれた。本来なら二人だけで愛し合って完結される関係なのに、優美ちゃんの価値観を変えてまで僕を受け入れてくれた。だからとても感謝してるんだ」
彼の言葉を聞いて、私は悲しくなる。
「正樹は何も悪い事をしてないんだから、そんな風に言わなくていいんだよ。まるで自分には、幸せになる資格がないって言っているようなもんじゃない」
私が言うと、正樹は返事をせず黙り込んでしまった。
溜め息をつき、彼も私の肩に顔を埋めてくる。
そして、震える声で弱さを零した。
「…………っ、素直に家族を愛せない自分は、幸せになる資格がないと思っているんだ……っ。本当はこんな事、慎也にも聞かせたくないのに……っ」
普段は軽薄とも言える言動、振る舞いをしている正樹が、私の前でまっさらな裸の心を晒している。
「いい人たちなんだ。玲奈さんは分け隔てなく接してくれたし、慎也も芳也も未望も、僕を本物の〝兄〟として慕ってくれる……。でも、皆の好意、善意を受けるほど、僕の中で疎外感と闇が濃くなっていくんだ……っ」
切なくなり、私は彼の額にキスをした。
「誰も何も言っていない。分かってる。僕が勝手に被害妄想を深めているだけなんだ」
私は彼の髪を指で梳き、穏やかな声で尋ねる。
「何がそんなに怖いの?」
正樹は目を閉じ、しばらく何かを思いだすように沈黙する。
「…………実母の、死の瞬間が幼い記憶にこびりついているんだ。母と話していたのに、段々声が小さくなって途切れて、…………電子音が鳴って医者や看護師が来て…………」
私は思わず、正樹を抱き締めた。
そんな私を、背中から慎也が抱き締めてくる。
「大事なものは、すべて手の中から消えていく恐怖があった。どれだけ大切にしても、死んだら終わりだ。心を砕いて仲良くなっても、いつ死ぬか分からないし、簡単に失ってしまう」
「分かるよ。……分かるって言っても、正樹の気持ちや痛みまでは完全に理解できない。察する事しかできない」
彼の頭を撫で、私は泣いてしまいそうになる目でグッと遠くを睨んだ。
「でもね、人って思っている以上に強いし、頑丈だよ。私を見てみなさい。こんなにも健康的な女性、なかなかいないよ?」
半ば冗談めかして言うと、正樹が顔を上げて弱々しく笑った。
「…………正樹」
私を抱き締めた慎也が、肩口で兄に語りかける。
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