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箱根クリスマス旅行 編

露天風呂

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「ちょ……っ、それやったら、本気で怒るからね! 今回のお泊まりだって、正樹としかエッチしないんだから! 慎也と温泉入ってやんない!」

 怒りを示すと、逆に喜んだのは正樹だ。

「よし、慎也、足の匂い嗅いでいいよ。そんでもって舐めてやれ。いてっ!」

 バンッ! と物凄い音がしたので、恐らくテーブルの下で慎也が正樹の脚を叩いたんだろう。
 そしてゴソゴソと慎也がテーブルの下から這いでる。

「……一緒に温泉入りたいし、セックスしたいからやめた」

 そっちから恥ずかしい事をしてきたくせに、そのむくれた顔はなんなのか。

「……はぁ。本当に困った人だな……」

 呆れ果てた私は、お茶を飲み干す。

「でも好きなんだろ?」

 座椅子に座り直した慎也が、にっこり笑う。

「……そこまで堂々と言われると、返事に困るんだけど……」

 苦笑いしたけれど、慎也も正樹も楽しそうだ。

「こんなにカッチリとすべてが嵌まった相手って、初めてなんだ。優美を前にすると、不安がなくなる。優美ならこの先安心してずっと愛していけるっていう自信がある。だから愛されている自信もあるんだ」

「僕もだよ。三人でいると、心地いいよね」

 三人でなんて普通じゃないのに、二人は心の底から幸せそうな、満ち足りた顔をしている。
 だからなのか、私もつい笑ってしまう。

「仕方ないなぁ……」

 私は人の役に立ちたいという、奉仕精神が強い。
 求められると嬉しくなるから、この二人との相性はぴったりなんだろう。

「ねぇ、優美。温泉入ろう」

 慎也に甘く微笑まれ、私も笑い返す。

「いいよ」

「よーし、じゃあ準備しよっか」

 正樹が立ち上がり、荷物のほうへ歩いていく。

「温泉前の甘いお菓子って、倒れないようにだったっけ」

「そうそう。でも優美が倒れたら俺たちが介抱してあげるから、心配しなくていいよ」

「ふふ、頼りにしてる」

 改めて裸になって、一緒にお風呂に入ると思うと少し恥ずかしい。
 でも私達は恋人なんだから、と自分に言い聞かせ、赤面しながら着替えや洗面道具などの準備をした。





 全裸でテラスに出ると、さすが十二月末だけあって鳥肌が立ってしまう。
 先にバスルームで体や髪は洗ったので、あとは急いで露天風呂にチャポンと浸かるのみだ。

「気持ちいい……」
「冬で、クリスマスって思うと、露天風呂も何だか特別に思えるよね」

 正樹が手でゆっくりと水面を掻き、泉質を確認している。
 なお、並びはいつも通りに二人の間に私がいる。
 私も両手でお湯をすくい、指の間で零してから濡れた手で髪を撫でつけた。

「さっきね、ちょっとだけ『ん』と思ったんだけど、聞いてもいい?」

 正樹に尋ねると、彼はニコッと笑って「勿論」と頷いた。

「さっきの流れで慎也が私の足の匂いを嗅いだとして、正樹と二人きりで温泉に入ってエッチしたとするじゃない」

 反対側で慎也が拗ね、私の肩に顎をのせてきた。

「うん。足の匂い嗅いでほしかった?」

「バカ!」

 クスクス笑う正樹の肩をペチンと叩き、私は軽く笑って続きを話す。

「あれって、私と二人でもいいっていう事なの? 正樹は三人が好きなんでしょう? 正樹の望む〝正解〟が少し分からなくて、聞いてみたいと思ったの」

「んー、難しく思えるかもだけど、僕は優美ちゃんが好きだよ」

「うん……」

 それも三人ありきなのか、二人でもOKなのか、時々分からなくなる。

「慎也は怒るだろうけど、もし慎也がいなかったら、優美ちゃんとなら普通に結婚してもやっていけると思っている」

「んー」

 慎也が私の肩口で低くうなり、私の胸を揉んできた。

 怒ってる、怒ってる……。

「僕は結局、僕を丸ごと受け入れてくれる女性がほしかったのかもしれない。元妻じゃなくても、普通の感覚の女性なら三人で付き合うとか、セックスするとかは受け入れられないでしょ。一時的なら、ちやほやされるからっていう理由でOKかもしれないけど、結婚後も関わってくるってなると、相当ヤバイ奴じゃないとOK出さないと思うんだ」

 ヤバイ奴……。

 私は思わず苦笑いする。
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