70 / 539
箱根クリスマス旅行 編
体にいい
しおりを挟む
チェックインする前には余裕で到着できた。
時間前だというのに、車を見ただけで法被を着た男性と着物姿の仲居さん、そして女将さんが出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました」
挨拶をしたあと、荷物は男性が持ってくれた。
宿は外見から立派な格式ある旅館という様子で、毛筆で書かれたロゴに家紋がついている暖簾が凄い。
お金持ちの邸宅なのではと思える門から中に入ると、整えられた美しい庭園が続く向こうに本館があった。
案内されたのは離れで、住宅で言う〝離れ〟と同じように一軒家のような作りをしていた。
部屋の案内を受けたあと、女将さん自らお茶を点ててくれる。
茶道に詳しくないので緊張したけれど、二人がフランクな雰囲気で流れを教えてくれたので、体験して楽しむ事ができた。
やがて女将さんと仲居さんは去り、私たちは座椅子に座ってのんびり寛ぐ。
「凄いね……。こんな立派な宿に連れて来てくれて、ありがとう」
室内は広々としていて、十畳と八畳の和室が続いている。
十畳はいま私達がいる居間みたいな場所で、八畳のほうにはツインベッドが置かれてあった。
女将さんの話では、就寝時には布団を一組敷に来てくれるようだ。
ベッドの奥にはテラスに通じる大きな窓があり、外に露天風呂がある。
庭は目隠しの生け垣に囲まれ、露天風呂から楽しめるように美しく整えられていた。
洗面所はウッド調で落ち着きがありながら、上品な雰囲気だ。
顔を洗うボウルと大きな鏡の横に、別途女性がメイクをしやすいように、椅子と女優ライトのついた鏡がある。こういう気配りは嬉しいものだ。
露天風呂とは別に檜の内風呂とシャワーボックスもあり、そちらも雰囲気たっぷりで楽しめる。
「気に入った?」
「勿論! 贅沢なところに連れてきてくれて、ありがとう!」
にっこり笑うと、慎也も正樹も嬉しそうに笑う。
……宿の人も、男二人に女一人で泊まるのに、余計な詮索をせず表情にも出さないのでプロだなと思う。
もしかしたら〝掃除〟に関して何か裏で言っているかもしれないけれど、それは……なるべく考えないようにしよう。
一応、お客として来ているので。
でも、なるべく汚さないように心がけるので……、あの、許してください……。
人様にご迷惑を掛けるのが苦手な私は、なるべくハメを外さないようにしようと心の中で固く誓った。
……のだけれど。
「じゃあ、一息ついたらさっそく温泉に入ろうか」
歓迎のお茶とお菓子をペロッと食べた慎也が、にこやかに提案する。
「いいね! 僕もこないだトレーニングでちょっと負荷かけ過ぎちゃったから、体を休めたい」
あ、湯治の意味か……。良かった。
「お湯があると道具を冷たいまま使わずに済むから、優美の体にいいよな」
「だねー」
体にいいの意味が違う!
私は心の中で突っ込みを入れ、何とかして温泉からセックスへの流れを回避できないか、ゆーっくりお菓子を食べつつ思考を巡らせる。
「体に負担が掛かってるなら、少しエッチを控えたら?」
「何言ってんの? 僕がその程度で優美ちゃんとのセックスを控えるはずがないでしょ」
彼は真顔で突っ込みを入れ、心底分からないという顔で私を凝視してくる。
……その、「常識を疑われた」っていう顔、やめい。
「優美、靴下脱がせてあげる」
慎也が座椅子を後ろに押しやり、テーブルの下に潜って私の足に触れてきた。
「ちょっと! そんなんいいから、ゆっくりお菓子食べさせて」
横浜で少し歩いたし、足は蒸れている。
匂いが気になる場所に触れられるのは、お風呂に入った直後でない限り抵抗がある。
とっさに足を引っ込めようとするが、その前に足首を掴まれてしまった。
「っもぉぉぉ……!」
私が嫌がる姿を見て、目の前で正樹がテーブルに頬杖をつきニヤニヤしている。
靴下が引っ張られ、素足が空気に触れる。
「……お願いだから、匂い嗅がないで。蒸れてるから嫌なの」
「そういうつもりはなかったけど、そう言われたらリクエストに応えたくなるなぁ」
テーブルの下にいるというのに、慎也がニヤニヤ笑っているのが分かる。
時間前だというのに、車を見ただけで法被を着た男性と着物姿の仲居さん、そして女将さんが出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました」
挨拶をしたあと、荷物は男性が持ってくれた。
宿は外見から立派な格式ある旅館という様子で、毛筆で書かれたロゴに家紋がついている暖簾が凄い。
お金持ちの邸宅なのではと思える門から中に入ると、整えられた美しい庭園が続く向こうに本館があった。
案内されたのは離れで、住宅で言う〝離れ〟と同じように一軒家のような作りをしていた。
部屋の案内を受けたあと、女将さん自らお茶を点ててくれる。
茶道に詳しくないので緊張したけれど、二人がフランクな雰囲気で流れを教えてくれたので、体験して楽しむ事ができた。
やがて女将さんと仲居さんは去り、私たちは座椅子に座ってのんびり寛ぐ。
「凄いね……。こんな立派な宿に連れて来てくれて、ありがとう」
室内は広々としていて、十畳と八畳の和室が続いている。
十畳はいま私達がいる居間みたいな場所で、八畳のほうにはツインベッドが置かれてあった。
女将さんの話では、就寝時には布団を一組敷に来てくれるようだ。
ベッドの奥にはテラスに通じる大きな窓があり、外に露天風呂がある。
庭は目隠しの生け垣に囲まれ、露天風呂から楽しめるように美しく整えられていた。
洗面所はウッド調で落ち着きがありながら、上品な雰囲気だ。
顔を洗うボウルと大きな鏡の横に、別途女性がメイクをしやすいように、椅子と女優ライトのついた鏡がある。こういう気配りは嬉しいものだ。
露天風呂とは別に檜の内風呂とシャワーボックスもあり、そちらも雰囲気たっぷりで楽しめる。
「気に入った?」
「勿論! 贅沢なところに連れてきてくれて、ありがとう!」
にっこり笑うと、慎也も正樹も嬉しそうに笑う。
……宿の人も、男二人に女一人で泊まるのに、余計な詮索をせず表情にも出さないのでプロだなと思う。
もしかしたら〝掃除〟に関して何か裏で言っているかもしれないけれど、それは……なるべく考えないようにしよう。
一応、お客として来ているので。
でも、なるべく汚さないように心がけるので……、あの、許してください……。
人様にご迷惑を掛けるのが苦手な私は、なるべくハメを外さないようにしようと心の中で固く誓った。
……のだけれど。
「じゃあ、一息ついたらさっそく温泉に入ろうか」
歓迎のお茶とお菓子をペロッと食べた慎也が、にこやかに提案する。
「いいね! 僕もこないだトレーニングでちょっと負荷かけ過ぎちゃったから、体を休めたい」
あ、湯治の意味か……。良かった。
「お湯があると道具を冷たいまま使わずに済むから、優美の体にいいよな」
「だねー」
体にいいの意味が違う!
私は心の中で突っ込みを入れ、何とかして温泉からセックスへの流れを回避できないか、ゆーっくりお菓子を食べつつ思考を巡らせる。
「体に負担が掛かってるなら、少しエッチを控えたら?」
「何言ってんの? 僕がその程度で優美ちゃんとのセックスを控えるはずがないでしょ」
彼は真顔で突っ込みを入れ、心底分からないという顔で私を凝視してくる。
……その、「常識を疑われた」っていう顔、やめい。
「優美、靴下脱がせてあげる」
慎也が座椅子を後ろに押しやり、テーブルの下に潜って私の足に触れてきた。
「ちょっと! そんなんいいから、ゆっくりお菓子食べさせて」
横浜で少し歩いたし、足は蒸れている。
匂いが気になる場所に触れられるのは、お風呂に入った直後でない限り抵抗がある。
とっさに足を引っ込めようとするが、その前に足首を掴まれてしまった。
「っもぉぉぉ……!」
私が嫌がる姿を見て、目の前で正樹がテーブルに頬杖をつきニヤニヤしている。
靴下が引っ張られ、素足が空気に触れる。
「……お願いだから、匂い嗅がないで。蒸れてるから嫌なの」
「そういうつもりはなかったけど、そう言われたらリクエストに応えたくなるなぁ」
テーブルの下にいるというのに、慎也がニヤニヤ笑っているのが分かる。
12
お気に入りに追加
1,848
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
敏腕ドクターは孤独な事務員を溺愛で包み込む
華藤りえ
恋愛
塚森病院の事務員をする朱理は、心ない噂で心に傷を負って以来、メガネとマスクで顔を隠し、人目を避けるようにして一人、カルテ庫で書類整理をして過ごしていた。
ところがそんなある日、カルテ庫での昼寝を日課としていることから“眠り姫”と名付けた外科医・神野に眼鏡とマスクを奪われ、強引にキスをされてしまう。
それからも神野は頻繁にカルテ庫に来ては朱理とお茶をしたり、仕事のアドバイスをしてくれたりと関わりを深めだす……。
神野に惹かれることで、過去に受けた心の傷を徐々に忘れはじめていた朱理。
だが二人に思いもかけない事件が起きて――。
※大人ドクターと真面目事務員の恋愛です🌟
※R18シーン有
※全話投稿予約済
※2018.07.01 にLUNA文庫様より出版していた「眠りの森のドクターは堅物魔女を恋に堕とす」の改稿版です。
※現在の版権は華藤りえにあります。
💕💕💕神野視点と結婚式を追加してます💕💕💕
※イラスト:名残みちる(https://x.com/___NAGORI)様
デザイン:まお(https://x.com/MAO034626) 様 にお願いいたしました🌟
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる