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浜崎&五十嵐トラブル 編
人としての誇り
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「私の友達に酷い事をしている奴を許せない」という感情は、傍から見ると美しい友情だ。
または〝婚約者を盗ろうとする淫乱女〟が大嫌いで、そんな人ならどれだけ攻撃して叩きのめしても構わないと思ったのだろう。
そういう心理は、人数が多くなればなるほど強くなる。
SNSの炎上がいい例だ。
でも第三者から見ればただの逆恨みだったり、正当性のない主張だっていうのもよくある話だ。
ただの憂さ晴らし、ストレス発散でワーワー騒ぐ人は多い。
正義中毒っていう言葉もあるし、そういう人はどれだけ酷い行いをしても、自分たちに非があると思っていないんだろう。
誹謗中傷して、個人情報を悪用し、迷惑電話をかけたりネットストーカーをしても、すべて〝悪者を成敗するための正義の行い〟になる。
そういう人は、ターゲットにした〝悪〟の事情なんて考えない。
大切なのは自分の主張と、共感してくれる〝正義〟の仲間だけだから。
〝正義〟の名において〝悪〟を叩き潰す行為は、とんでもなく気持ちいいと聞く。
私は何かに盲目的になるのが嫌だから、色んなものに対してできるだけフラットな見方をするようにしている。
それは簡単なようでいて、実はとても難しい。
彼女たちは直接私が何かをした訳ではないのに、私を憎んで悪者とした。
気持ちは分からないではないけれど、感情のままに騒ぎ立てた挙げ句こうしてお叱りを受けている姿を見ると、私は自分の頭で考えて、流されないようにしたいなと思う。
それに私は、どんなに卑劣な事をされても、決して同じ場所で泥試合をしない。
それが私の、人としての誇りだ。
プライドが高いっていうのは、そういう事をいうのだと思っている。
ゴチャゴチャとした騒ぎで多少なりとも動揺したけれど、私は自分の気持ちを再確認していた。
その時、浜崎くんが口を開いた。
「優美、本当に悪かった。お前の話を聞いて、俺が誤解してたと分かった」
「もういいよ、ありがとう。じゃあ私から最後に一言! 困ったら筋トレしろよ!」
私の総括を聞いて、全員が笑った。
正直、今までの空気がキツかったので、笑ってくれて良かった。
彼らが個室を去る時、浜崎くんが「お通し代」と言って四千円を置いていった。
二人にとっては貸し借りする額ではないけれど、正樹は「受け取っておくよ」と微笑んだ。
これが浜崎くんのけじめと誠意だと理解したからだろう。
個室に三人きりになって、私は伸びをした。
「っはー! 疲れた!」
「お疲れさん」
「お疲れ! 僕もまじめモード疲れた!」
正樹のセリフに、私は思わず破顔する。
「正樹があんなにまじめにできるとは思わなかった。見直したかも」
「えー? 酷くない? 僕、会社ではまじめに副社長やってるんだけど……」
トントンと肩を叩かれ、「なに?」と慎也を見ると、むっちゅう……とキスをされた。
「さっき。妬いたから」
あ。
「慎也が妬くかな?」と思ったところ、やっぱり妬いてた。
「ごめんて」
よしよしと彼の頭を撫でるけれど、慎也は拗ねた目で私を見て、またキスしてくる。
「慎也。気持ちは分かるけど、ここは飯屋だからね。イチャイチャは家で」
「……分かってるよ」
正樹に言われ、慎也は溜め息をつきつつ顔を離す。
「せっかくだから、何か食べて気を取り直そうか」
私は立ち上がってメニューを手に取る。
「そうだな。店にも悪いし」
そのあと私たちはドリンクメニューを広げ、呼び出しボタンを押して飲み物を頼んだ。
「優美ちゃんはこれで良かったの?」
向かいの席に移動した正樹が尋ねてくる。
「ん?」
「五十嵐は話の途中で帰ったし、あれを謝罪とするかは悩み所だ。勿論、彼女の友達も。……まぁ、浜崎はちゃんと反省したみたいだけど」
「うーん。……まぁ、いいんじゃない?」
そう言った私の手を、隣から慎也が握ってきた。
横にいる彼を見ると、物言いたげな目をしている。
「言いたい事は言ったし、彼女たちがした事はいけない事だって伝えられた。五十嵐さんは相当訳ありみたいだし、お友達も浅はかだったけど、これで懲りたと思う。浜崎くんも、これ以上ネガティブな事は言わないと思うし」
正樹と慎也が同時に溜め息をついた。
または〝婚約者を盗ろうとする淫乱女〟が大嫌いで、そんな人ならどれだけ攻撃して叩きのめしても構わないと思ったのだろう。
そういう心理は、人数が多くなればなるほど強くなる。
SNSの炎上がいい例だ。
でも第三者から見ればただの逆恨みだったり、正当性のない主張だっていうのもよくある話だ。
ただの憂さ晴らし、ストレス発散でワーワー騒ぐ人は多い。
正義中毒っていう言葉もあるし、そういう人はどれだけ酷い行いをしても、自分たちに非があると思っていないんだろう。
誹謗中傷して、個人情報を悪用し、迷惑電話をかけたりネットストーカーをしても、すべて〝悪者を成敗するための正義の行い〟になる。
そういう人は、ターゲットにした〝悪〟の事情なんて考えない。
大切なのは自分の主張と、共感してくれる〝正義〟の仲間だけだから。
〝正義〟の名において〝悪〟を叩き潰す行為は、とんでもなく気持ちいいと聞く。
私は何かに盲目的になるのが嫌だから、色んなものに対してできるだけフラットな見方をするようにしている。
それは簡単なようでいて、実はとても難しい。
彼女たちは直接私が何かをした訳ではないのに、私を憎んで悪者とした。
気持ちは分からないではないけれど、感情のままに騒ぎ立てた挙げ句こうしてお叱りを受けている姿を見ると、私は自分の頭で考えて、流されないようにしたいなと思う。
それに私は、どんなに卑劣な事をされても、決して同じ場所で泥試合をしない。
それが私の、人としての誇りだ。
プライドが高いっていうのは、そういう事をいうのだと思っている。
ゴチャゴチャとした騒ぎで多少なりとも動揺したけれど、私は自分の気持ちを再確認していた。
その時、浜崎くんが口を開いた。
「優美、本当に悪かった。お前の話を聞いて、俺が誤解してたと分かった」
「もういいよ、ありがとう。じゃあ私から最後に一言! 困ったら筋トレしろよ!」
私の総括を聞いて、全員が笑った。
正直、今までの空気がキツかったので、笑ってくれて良かった。
彼らが個室を去る時、浜崎くんが「お通し代」と言って四千円を置いていった。
二人にとっては貸し借りする額ではないけれど、正樹は「受け取っておくよ」と微笑んだ。
これが浜崎くんのけじめと誠意だと理解したからだろう。
個室に三人きりになって、私は伸びをした。
「っはー! 疲れた!」
「お疲れさん」
「お疲れ! 僕もまじめモード疲れた!」
正樹のセリフに、私は思わず破顔する。
「正樹があんなにまじめにできるとは思わなかった。見直したかも」
「えー? 酷くない? 僕、会社ではまじめに副社長やってるんだけど……」
トントンと肩を叩かれ、「なに?」と慎也を見ると、むっちゅう……とキスをされた。
「さっき。妬いたから」
あ。
「慎也が妬くかな?」と思ったところ、やっぱり妬いてた。
「ごめんて」
よしよしと彼の頭を撫でるけれど、慎也は拗ねた目で私を見て、またキスしてくる。
「慎也。気持ちは分かるけど、ここは飯屋だからね。イチャイチャは家で」
「……分かってるよ」
正樹に言われ、慎也は溜め息をつきつつ顔を離す。
「せっかくだから、何か食べて気を取り直そうか」
私は立ち上がってメニューを手に取る。
「そうだな。店にも悪いし」
そのあと私たちはドリンクメニューを広げ、呼び出しボタンを押して飲み物を頼んだ。
「優美ちゃんはこれで良かったの?」
向かいの席に移動した正樹が尋ねてくる。
「ん?」
「五十嵐は話の途中で帰ったし、あれを謝罪とするかは悩み所だ。勿論、彼女の友達も。……まぁ、浜崎はちゃんと反省したみたいだけど」
「うーん。……まぁ、いいんじゃない?」
そう言った私の手を、隣から慎也が握ってきた。
横にいる彼を見ると、物言いたげな目をしている。
「言いたい事は言ったし、彼女たちがした事はいけない事だって伝えられた。五十嵐さんは相当訳ありみたいだし、お友達も浅はかだったけど、これで懲りたと思う。浜崎くんも、これ以上ネガティブな事は言わないと思うし」
正樹と慎也が同時に溜め息をついた。
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