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浜崎&五十嵐トラブル 編
こんな子だったっけ
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彼も冷静になれず、ムキになってあんな事をして、後戻りできなかったんだろう。
後悔する時もあったかもしれないけれど、その時は私もツンツンしていた。
お互い意地を張ってしまえば、間に誰かが入って話し合う場を設けない限り、勘違いと意地の張り合いが永遠に続く。
そのネガティブな空気に、無関係な人たちをどんどん巻き込んでいく。
浜崎くん側の人は私を淫乱で最低な女と思い、私側の人は浜崎くんを悪評を広めた最悪な人と思う。
と、私はある事を思いだして、確認しようと思った。
「ねぇ、浜崎くんの友達の加納さんっていたじゃない」
「あ、あぁ」
彼女名前を聞き、浜崎くんはギクリとした表情をする。
あー、これは当たってるな。
私は内心溜め息をつきながら、心を鬼にして続きを口にした。
「浜崎くんと付き合っている時に、友達だって紹介されたよね? で、そのあと彼女が結婚したっていうから、私はお祝いのカードとプレゼントを送った」
私は一旦言葉を切り、溜め息をつく。
「浜崎くんと別れた直後、自宅に迷惑電話が頻繁に掛かってきたの。私、面倒だから番号通知の契約はしてなかったんだよね。だから、ブロックとかができなくて、四か月ぐらい迷惑電話に悩まされた」
浜崎くんはジッとテーブルを見て、唇を引き結ぶ。
「我慢してたけど迷惑電話は収まらず、嫌になって番号通知契約して、非通知ブロックしてようやく落ち着いた。けど、それまで迷惑電話って掛かったためしがなかったんだよね。セールスや間違い電話はあったけど、あんなしつこいのはなかった。消去法したら、どうしても思い当たる人が彼女しかいなかった。お祝いの品の伝票に、個人情報が書いてある訳だし。……あの電話って、加納さんにやらせた? それとも浜崎くん?」
浜崎くんを見つめると、彼は頷いた。
「俺が……、調子に乗って優美のある事ない事、悪口を言ったら、……『ちょっと困らせてやろうか』って言って、憂さ晴らしにイタ電したって言ってた。……その時は大した事じゃない、ただの悪戯電話って思ってたんだけど……」
あー、最悪。
「当時、迷惑電話ってどういう処分になるのかな? って調べたら、警察案件みたい。彼女が犯人って今分かったけど、もう二度と、私以外の人にもこういう事をしないように言ってね。結婚して親になった人なんだよ? 善意の贈り物を利用して、迷惑行為をするとかあり得ないから。そんな親、子供が可哀想だ」
「…………分かった。すまない」
浜崎くんはこの上なく落ち込んで、謝罪する。
あれから四年経ったし、もう迷惑電話は掛かってないから時効だろう。
でも人として最低の事だから、それは本人に分からせないといけない。
〝類は友を呼ぶ〟って言ったら、関係者ない人まで巻き込んでしまうけれど、尊敬する人が言っていた。
『自分の周りにいる仲のいい五人の平均が、自分』だ、って。
年齢を経て人付き合いが変わるからこそ、周囲の人に気を付けていきたい。
悄然とした浜崎くんは、一回水を飲んでから口を開いた。
「……謝ろうと思ったきっかけは、訴えると聞いたからだった。爺さんの遺産が入ったと言っても、一生豪遊できる額じゃない。久賀城さんが金に糸目をつけず徹底的に争い、示談になってもかなり支払う事になる。それは避けたいと思って謝罪に応じた」
お金の話がでた時、それまでむくれて黙っていた五十嵐さんが、ギョロッと浜崎くんを見た。
「でも俺は――」
「慶吾さん。お祖父さんの遺産ってそんなはした金なの?」
何か言いかけた浜崎くんの言葉を、五十嵐さんが遮った。
「え?」
横槍が入ると思っていなかった彼は、呆気にとられて五十嵐さんを見る。
そのあと不愉快そうに歪んだ表情は、ラブラブで結婚する婚約者に向けられるものではなかった。
(何があったの……? この二人。まさか、私のせい?)
嫌な予感がしたけれど、二人の空気はどんどん不穏になっていく。
「人の爺さんの遺産の事を、はした金っていうなよ」
「だって慶吾さん、大金が入ったって言い方をしてたじゃない。だから私……」
「ハッ! 『だから私、金目当てであなたに近付いたのに』か?」
浜崎くんがせせら笑うが、五十嵐さんも動じていない。
……こんな子だったっけ……。
もっと、キュルンとして、小型犬とか飼ってそうな……。
後悔する時もあったかもしれないけれど、その時は私もツンツンしていた。
お互い意地を張ってしまえば、間に誰かが入って話し合う場を設けない限り、勘違いと意地の張り合いが永遠に続く。
そのネガティブな空気に、無関係な人たちをどんどん巻き込んでいく。
浜崎くん側の人は私を淫乱で最低な女と思い、私側の人は浜崎くんを悪評を広めた最悪な人と思う。
と、私はある事を思いだして、確認しようと思った。
「ねぇ、浜崎くんの友達の加納さんっていたじゃない」
「あ、あぁ」
彼女名前を聞き、浜崎くんはギクリとした表情をする。
あー、これは当たってるな。
私は内心溜め息をつきながら、心を鬼にして続きを口にした。
「浜崎くんと付き合っている時に、友達だって紹介されたよね? で、そのあと彼女が結婚したっていうから、私はお祝いのカードとプレゼントを送った」
私は一旦言葉を切り、溜め息をつく。
「浜崎くんと別れた直後、自宅に迷惑電話が頻繁に掛かってきたの。私、面倒だから番号通知の契約はしてなかったんだよね。だから、ブロックとかができなくて、四か月ぐらい迷惑電話に悩まされた」
浜崎くんはジッとテーブルを見て、唇を引き結ぶ。
「我慢してたけど迷惑電話は収まらず、嫌になって番号通知契約して、非通知ブロックしてようやく落ち着いた。けど、それまで迷惑電話って掛かったためしがなかったんだよね。セールスや間違い電話はあったけど、あんなしつこいのはなかった。消去法したら、どうしても思い当たる人が彼女しかいなかった。お祝いの品の伝票に、個人情報が書いてある訳だし。……あの電話って、加納さんにやらせた? それとも浜崎くん?」
浜崎くんを見つめると、彼は頷いた。
「俺が……、調子に乗って優美のある事ない事、悪口を言ったら、……『ちょっと困らせてやろうか』って言って、憂さ晴らしにイタ電したって言ってた。……その時は大した事じゃない、ただの悪戯電話って思ってたんだけど……」
あー、最悪。
「当時、迷惑電話ってどういう処分になるのかな? って調べたら、警察案件みたい。彼女が犯人って今分かったけど、もう二度と、私以外の人にもこういう事をしないように言ってね。結婚して親になった人なんだよ? 善意の贈り物を利用して、迷惑行為をするとかあり得ないから。そんな親、子供が可哀想だ」
「…………分かった。すまない」
浜崎くんはこの上なく落ち込んで、謝罪する。
あれから四年経ったし、もう迷惑電話は掛かってないから時効だろう。
でも人として最低の事だから、それは本人に分からせないといけない。
〝類は友を呼ぶ〟って言ったら、関係者ない人まで巻き込んでしまうけれど、尊敬する人が言っていた。
『自分の周りにいる仲のいい五人の平均が、自分』だ、って。
年齢を経て人付き合いが変わるからこそ、周囲の人に気を付けていきたい。
悄然とした浜崎くんは、一回水を飲んでから口を開いた。
「……謝ろうと思ったきっかけは、訴えると聞いたからだった。爺さんの遺産が入ったと言っても、一生豪遊できる額じゃない。久賀城さんが金に糸目をつけず徹底的に争い、示談になってもかなり支払う事になる。それは避けたいと思って謝罪に応じた」
お金の話がでた時、それまでむくれて黙っていた五十嵐さんが、ギョロッと浜崎くんを見た。
「でも俺は――」
「慶吾さん。お祖父さんの遺産ってそんなはした金なの?」
何か言いかけた浜崎くんの言葉を、五十嵐さんが遮った。
「え?」
横槍が入ると思っていなかった彼は、呆気にとられて五十嵐さんを見る。
そのあと不愉快そうに歪んだ表情は、ラブラブで結婚する婚約者に向けられるものではなかった。
(何があったの……? この二人。まさか、私のせい?)
嫌な予感がしたけれど、二人の空気はどんどん不穏になっていく。
「人の爺さんの遺産の事を、はした金っていうなよ」
「だって慶吾さん、大金が入ったって言い方をしてたじゃない。だから私……」
「ハッ! 『だから私、金目当てであなたに近付いたのに』か?」
浜崎くんがせせら笑うが、五十嵐さんも動じていない。
……こんな子だったっけ……。
もっと、キュルンとして、小型犬とか飼ってそうな……。
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