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浜崎&五十嵐トラブル 編
警告
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「美奈代さんの学生時代です」
「はぁ!? マジ!? すっげぇブスじゃん!」
浜崎の目が侮蔑するものに変わり、俺は心の中で無感動に「あー、終わったな」と呟く。
「うっわぁ……。騙されてた。岬、教えてくれてありがとな。腹の子だって俺の子か分からないし、結婚する前に気づけて良かったわ」
ドン引きした……という様子で、浜崎は写真を押しやる。
「いえいえ、どういたしまして。つきましてご相談、もとい警告なのですが」
「……は? 警告?」
浜崎は、訳が分かっていないという顔でこちらを見る。
「美奈代さんと終わったからといって、折原さんに迫るのだけはやめてくださいね。手を出したら、……社会的に殺しますからね?」
笑っていない目で、俺は浜崎を凝視し、口元だけにっこり笑う。
「…………え? だってあいつ……正樹って奴と付き合ってない? お前、何の関係があるんだよ」
それは俺との関係を会社の中で伏せてたからだよ。
表立って優美との関係を言えなかった弊害が、ここに出ている。
でもここで三人の関係をへたに教えれば、優美が淫乱だという噂を立てられかねない。
だから今は正樹に彼氏の座を譲っておく事にした。
「正樹は俺の兄です。折原さんはこれから家族になるので、くだらない事で悩ませたくないんです。……俺の父は久賀城ホールディングスの社長です。祖父は会長。俺はこれから家が経営する会社に入り、役員として働いていきます。……この意味が分かりますね?」
「社会的に殺す」と言った意味を理解したのだろう。浜崎はやや青ざめた顔で何度も頷いた。
「……わ、分かった」
「それから、四年前に折原さんと別れた時、彼女がヤリマンだとか不名誉な噂を流した事を、改めて彼女に謝罪してほしいんです」
「あ、あれは……っ」
浜崎はうろたえる。
本当にこの手の男は、仕事はできないくせにプライドだけは無駄に高い。
「折原さんから聞きましたけど、彼女を抱こうとして、勃たなくてできなかったんですよね? 格好悪いと思って、話が広まる前に彼女がヤリマンだと言いふらした」
思っていた事を口にすると、浜崎は黙り込む。
「折原さんがその程度の事で、他人に悪口を言うとでも思っていましたか? 器が小さいのは勝手です。でも他人も自分と同じだと思って迷惑行為をするのはやめてください」
浜崎が苦渋に満ちた顔をしているのは、図星だからなのか、俺の背後にある久賀城の家に遠慮してなのか。
「勃たなかったのはあなたにとって一大事だったでしょう。でも折原さんにとってはどうでもいい事だったんです」
「どうでも……って……」
浜崎は呆然として呟く。
そりゃあ、自分の事しか考えてない奴はそう思うか。
「彼女が見ている世界はもっと広いです。あなたとできなかった夜だって、生理的なものだから仕方がないと考えたでしょう。そのあとは酔ったあなたの体調を心配して、翌日自宅に帰ったら何をしようか予定を立てていたんじゃないですか? 女性は男が思っているよりずっとドライで、忙しい分、計画的なんです」
そう。ずっと優美を見ていたから、俺には分かっている。
彼女が次から次にテキパキ働けているのも、手を動かしながら同時進行で予定を立てているからだ。
そういう思考回路は、料理手順に似ている。
米をといで炊いているうちに、味を染みさせる必要のある煮物を先に作り、あとから揚げ物を作って熱いうちに食べる。
先々の事を考えなければ、効率よく動くなんて土台無理だ。
「そんな……」
「あなたが勃たなかったのを見て、折原さんは飲み過ぎだと心配はしても、馬鹿になんてしなかった。あなたが勝手に被害者ぶっただけなんですよ。あなたがいつも『失敗した奴はバカにされて当然』って思っているからそう感じるだけなんです。折原さんはそんな事、考えません。彼女は誇り高く、他人に優しい人ですから」
事実を突きつけられ、浜崎は項垂れている。
今さら反省しようが、こいつが優美の名誉を傷付けた事は変わらない。
俺は、優美の誇りを守るためならどんな手でも使ってみせる。
「兄は非常に怒っています。いずれ婚約者を侮辱されたと訴えるでしょう」
「な……っ」
「はぁ!? マジ!? すっげぇブスじゃん!」
浜崎の目が侮蔑するものに変わり、俺は心の中で無感動に「あー、終わったな」と呟く。
「うっわぁ……。騙されてた。岬、教えてくれてありがとな。腹の子だって俺の子か分からないし、結婚する前に気づけて良かったわ」
ドン引きした……という様子で、浜崎は写真を押しやる。
「いえいえ、どういたしまして。つきましてご相談、もとい警告なのですが」
「……は? 警告?」
浜崎は、訳が分かっていないという顔でこちらを見る。
「美奈代さんと終わったからといって、折原さんに迫るのだけはやめてくださいね。手を出したら、……社会的に殺しますからね?」
笑っていない目で、俺は浜崎を凝視し、口元だけにっこり笑う。
「…………え? だってあいつ……正樹って奴と付き合ってない? お前、何の関係があるんだよ」
それは俺との関係を会社の中で伏せてたからだよ。
表立って優美との関係を言えなかった弊害が、ここに出ている。
でもここで三人の関係をへたに教えれば、優美が淫乱だという噂を立てられかねない。
だから今は正樹に彼氏の座を譲っておく事にした。
「正樹は俺の兄です。折原さんはこれから家族になるので、くだらない事で悩ませたくないんです。……俺の父は久賀城ホールディングスの社長です。祖父は会長。俺はこれから家が経営する会社に入り、役員として働いていきます。……この意味が分かりますね?」
「社会的に殺す」と言った意味を理解したのだろう。浜崎はやや青ざめた顔で何度も頷いた。
「……わ、分かった」
「それから、四年前に折原さんと別れた時、彼女がヤリマンだとか不名誉な噂を流した事を、改めて彼女に謝罪してほしいんです」
「あ、あれは……っ」
浜崎はうろたえる。
本当にこの手の男は、仕事はできないくせにプライドだけは無駄に高い。
「折原さんから聞きましたけど、彼女を抱こうとして、勃たなくてできなかったんですよね? 格好悪いと思って、話が広まる前に彼女がヤリマンだと言いふらした」
思っていた事を口にすると、浜崎は黙り込む。
「折原さんがその程度の事で、他人に悪口を言うとでも思っていましたか? 器が小さいのは勝手です。でも他人も自分と同じだと思って迷惑行為をするのはやめてください」
浜崎が苦渋に満ちた顔をしているのは、図星だからなのか、俺の背後にある久賀城の家に遠慮してなのか。
「勃たなかったのはあなたにとって一大事だったでしょう。でも折原さんにとってはどうでもいい事だったんです」
「どうでも……って……」
浜崎は呆然として呟く。
そりゃあ、自分の事しか考えてない奴はそう思うか。
「彼女が見ている世界はもっと広いです。あなたとできなかった夜だって、生理的なものだから仕方がないと考えたでしょう。そのあとは酔ったあなたの体調を心配して、翌日自宅に帰ったら何をしようか予定を立てていたんじゃないですか? 女性は男が思っているよりずっとドライで、忙しい分、計画的なんです」
そう。ずっと優美を見ていたから、俺には分かっている。
彼女が次から次にテキパキ働けているのも、手を動かしながら同時進行で予定を立てているからだ。
そういう思考回路は、料理手順に似ている。
米をといで炊いているうちに、味を染みさせる必要のある煮物を先に作り、あとから揚げ物を作って熱いうちに食べる。
先々の事を考えなければ、効率よく動くなんて土台無理だ。
「そんな……」
「あなたが勃たなかったのを見て、折原さんは飲み過ぎだと心配はしても、馬鹿になんてしなかった。あなたが勝手に被害者ぶっただけなんですよ。あなたがいつも『失敗した奴はバカにされて当然』って思っているからそう感じるだけなんです。折原さんはそんな事、考えません。彼女は誇り高く、他人に優しい人ですから」
事実を突きつけられ、浜崎は項垂れている。
今さら反省しようが、こいつが優美の名誉を傷付けた事は変わらない。
俺は、優美の誇りを守るためならどんな手でも使ってみせる。
「兄は非常に怒っています。いずれ婚約者を侮辱されたと訴えるでしょう」
「な……っ」
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