【本編完結】【R-18】逃れられない淫らな三角関係~美形兄弟に溺愛されています~

臣桜

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浜崎&五十嵐トラブル 編

労災にならないかな

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「『もとから美人です』みたいな雰囲気だして、もとはブスでデブだったんですね!? あの目だって、絶対アイプチに決まってますよぉ! あっはっは! 化粧落としたら、絶対ブス! そんな女に騙されるなんて、副社長可哀想! あんな偽物が副社長に愛されるなんて、あり得ないと思ってたんです!」

 が、副社長に怒鳴りつけられた。

「努力した人を笑うな!」

 ビリッと空気が震えるほどの怒声を出され、私はビクッと肩を跳ねさせた。
 顔を上げると、副社長が激しい目で私を睨んでいた。

「お前のような奴が、他人の見えない努力や苦しみを無視して、『ズルした』と騒ぐんだ! ズルをしたと思うなら、優美と同じメニューを同じ時間だけやってみろ!」
「できる訳ないじゃない! 私、こんなにか弱いんだから! それに、私はデブじゃないし!」

「なら、やりもしないで、他人を『ズルい』と言うな。だからお前は心の底から腐りきった、クズでブスだって言っているんだ」
「~~~~っだから、なんで美奈代の事をブスって言うのぉ! 意地悪ぅ!」

 こんな意地悪な人、大っ嫌い!
 私を褒めてくれない男なんて、価値がない、見る目のないただのバカ!





 目の前でワンワンと泣く頭のおかしい女を前に、僕は困り切って溜め息をつく。

 彼女を放置して秘書室のドアをノックすると、秘書が心配そうな顔で出てきた。

「大丈夫ですか?」

「埒があかない。とりあえず警備室に連絡してくれ。社員としての処分は、追って話し合う」

「承知いたしました」

「今日はこのあと、会議や会食等はないな?」

「はい」

「私はこのあと都内の支店を見回ってそのまま直帰する。先に地下駐車場に行っているから、あとから追いついてくれ」

「承知いたしました。すぐに準備をいたします」

 号泣する五十嵐美奈代を放置して、僕はパソコンをシャットダウンしたあと、コートを着て副社長室を出る。
 ここの後始末は、第二秘書が担当してくれるはずだ。

 エレベーターに乗ったあと、僕は慎也に『終わった』とメッセージを送った。

 浜崎が嘘をついていたのはくだらない見栄からだろうし、慎也の話から仕事のできないタイプなのは分かっていた。
 ああいう男が必死になって守るのは、自分のプライドだ。
 五十嵐美奈代みたいな「すごーい」と褒めてくれる、ちょっと外見のいい女にならすぐに騙される。

 言ってしまえばクズ同士お似合いだが、これ以上優美ちゃんを害するのなら放置しておけない。

 五十嵐も、生い立ちから考えれば同情すべき点はあったのだろう。
 だが満足する点を見失い、周囲を傷付けながら暴走列車のような人生を送っている。

 彼女に必要なのは、自分を慰めてくれる男でも金でも、快楽でもない。
 精神科に通ってカウンセラーと話をし、必要に応じて薬を服用する事だ。

「あーあ……。きったねぇもん見ちゃった……。このショック、労災にならないかな」

 エレベーターの壁にもたれかかり、僕は情けなく呟く。

 僕は元妻から〝異常者〟呼ばわりされた男だけど、女なら誰だっていい訳じゃない。
 何とも思っていない女からあんな汚い迫られ方をされたら、勿論ショックだ。

「……帰ったら優美ちゃんに慰めてもらおう」

 呟いて、ポケットからスマホを出すと、優美ちゃんフォルダを開く。

 五十嵐の言う通り、彼女はタレント向きの凄い美人という訳じゃない。

 けれど優美ちゃんはキリッとした顔立ちや、メイクのうまさからできる女感がある。
 体は引き締まってヘルシーな色気があるし、胸もお尻も大きくて張りがある。
 何より「自分は強い女」と言い聞かせて己を奮い立たせても、その奥に脆い所があるのを僕はとても気に入っている。

 誰しも〝外〟向けの顔と、見せたくない顔がある。
 僕が魅力を感じるのは、自分の弱さを知りながら、それでも懸命に最善を尽くして前に進む潔さだ。

 優美ちゃんは劣等感を抱えながらも、前向きに生きようとしている。
 彼女は決して自分のネガティブな感情を、他人にぶつけたりしない。

 他人に怒りを抱く時は、理不尽な目に遭った時だけだから「当然だろ」となる。
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