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浜崎&五十嵐トラブル 編
労災にならないかな
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「『もとから美人です』みたいな雰囲気だして、もとはブスでデブだったんですね!? あの目だって、絶対アイプチに決まってますよぉ! あっはっは! 化粧落としたら、絶対ブス! そんな女に騙されるなんて、副社長可哀想! あんな偽物が副社長に愛されるなんて、あり得ないと思ってたんです!」
が、副社長に怒鳴りつけられた。
「努力した人を笑うな!」
ビリッと空気が震えるほどの怒声を出され、私はビクッと肩を跳ねさせた。
顔を上げると、副社長が激しい目で私を睨んでいた。
「お前のような奴が、他人の見えない努力や苦しみを無視して、『ズルした』と騒ぐんだ! ズルをしたと思うなら、優美と同じメニューを同じ時間だけやってみろ!」
「できる訳ないじゃない! 私、こんなにか弱いんだから! それに、私はデブじゃないし!」
「なら、やりもしないで、他人を『ズルい』と言うな。だからお前は心の底から腐りきった、クズでブスだって言っているんだ」
「~~~~っだから、なんで美奈代の事をブスって言うのぉ! 意地悪ぅ!」
こんな意地悪な人、大っ嫌い!
私を褒めてくれない男なんて、価値がない、見る目のないただのバカ!
目の前でワンワンと泣く頭のおかしい女を前に、僕は困り切って溜め息をつく。
彼女を放置して秘書室のドアをノックすると、秘書が心配そうな顔で出てきた。
「大丈夫ですか?」
「埒があかない。とりあえず警備室に連絡してくれ。社員としての処分は、追って話し合う」
「承知いたしました」
「今日はこのあと、会議や会食等はないな?」
「はい」
「私はこのあと都内の支店を見回ってそのまま直帰する。先に地下駐車場に行っているから、あとから追いついてくれ」
「承知いたしました。すぐに準備をいたします」
号泣する五十嵐美奈代を放置して、僕はパソコンをシャットダウンしたあと、コートを着て副社長室を出る。
ここの後始末は、第二秘書が担当してくれるはずだ。
エレベーターに乗ったあと、僕は慎也に『終わった』とメッセージを送った。
浜崎が嘘をついていたのはくだらない見栄からだろうし、慎也の話から仕事のできないタイプなのは分かっていた。
ああいう男が必死になって守るのは、自分のプライドだ。
五十嵐美奈代みたいな「すごーい」と褒めてくれる、ちょっと外見のいい女にならすぐに騙される。
言ってしまえばクズ同士お似合いだが、これ以上優美ちゃんを害するのなら放置しておけない。
五十嵐も、生い立ちから考えれば同情すべき点はあったのだろう。
だが満足する点を見失い、周囲を傷付けながら暴走列車のような人生を送っている。
彼女に必要なのは、自分を慰めてくれる男でも金でも、快楽でもない。
精神科に通ってカウンセラーと話をし、必要に応じて薬を服用する事だ。
「あーあ……。きったねぇもん見ちゃった……。このショック、労災にならないかな」
エレベーターの壁にもたれかかり、僕は情けなく呟く。
僕は元妻から〝異常者〟呼ばわりされた男だけど、女なら誰だっていい訳じゃない。
何とも思っていない女からあんな汚い迫られ方をされたら、勿論ショックだ。
「……帰ったら優美ちゃんに慰めてもらおう」
呟いて、ポケットからスマホを出すと、優美ちゃんフォルダを開く。
五十嵐の言う通り、彼女はタレント向きの凄い美人という訳じゃない。
けれど優美ちゃんはキリッとした顔立ちや、メイクのうまさからできる女感がある。
体は引き締まってヘルシーな色気があるし、胸もお尻も大きくて張りがある。
何より「自分は強い女」と言い聞かせて己を奮い立たせても、その奥に脆い所があるのを僕はとても気に入っている。
誰しも〝外〟向けの顔と、見せたくない顔がある。
僕が魅力を感じるのは、自分の弱さを知りながら、それでも懸命に最善を尽くして前に進む潔さだ。
優美ちゃんは劣等感を抱えながらも、前向きに生きようとしている。
彼女は決して自分のネガティブな感情を、他人にぶつけたりしない。
他人に怒りを抱く時は、理不尽な目に遭った時だけだから「当然だろ」となる。
が、副社長に怒鳴りつけられた。
「努力した人を笑うな!」
ビリッと空気が震えるほどの怒声を出され、私はビクッと肩を跳ねさせた。
顔を上げると、副社長が激しい目で私を睨んでいた。
「お前のような奴が、他人の見えない努力や苦しみを無視して、『ズルした』と騒ぐんだ! ズルをしたと思うなら、優美と同じメニューを同じ時間だけやってみろ!」
「できる訳ないじゃない! 私、こんなにか弱いんだから! それに、私はデブじゃないし!」
「なら、やりもしないで、他人を『ズルい』と言うな。だからお前は心の底から腐りきった、クズでブスだって言っているんだ」
「~~~~っだから、なんで美奈代の事をブスって言うのぉ! 意地悪ぅ!」
こんな意地悪な人、大っ嫌い!
私を褒めてくれない男なんて、価値がない、見る目のないただのバカ!
目の前でワンワンと泣く頭のおかしい女を前に、僕は困り切って溜め息をつく。
彼女を放置して秘書室のドアをノックすると、秘書が心配そうな顔で出てきた。
「大丈夫ですか?」
「埒があかない。とりあえず警備室に連絡してくれ。社員としての処分は、追って話し合う」
「承知いたしました」
「今日はこのあと、会議や会食等はないな?」
「はい」
「私はこのあと都内の支店を見回ってそのまま直帰する。先に地下駐車場に行っているから、あとから追いついてくれ」
「承知いたしました。すぐに準備をいたします」
号泣する五十嵐美奈代を放置して、僕はパソコンをシャットダウンしたあと、コートを着て副社長室を出る。
ここの後始末は、第二秘書が担当してくれるはずだ。
エレベーターに乗ったあと、僕は慎也に『終わった』とメッセージを送った。
浜崎が嘘をついていたのはくだらない見栄からだろうし、慎也の話から仕事のできないタイプなのは分かっていた。
ああいう男が必死になって守るのは、自分のプライドだ。
五十嵐美奈代みたいな「すごーい」と褒めてくれる、ちょっと外見のいい女にならすぐに騙される。
言ってしまえばクズ同士お似合いだが、これ以上優美ちゃんを害するのなら放置しておけない。
五十嵐も、生い立ちから考えれば同情すべき点はあったのだろう。
だが満足する点を見失い、周囲を傷付けながら暴走列車のような人生を送っている。
彼女に必要なのは、自分を慰めてくれる男でも金でも、快楽でもない。
精神科に通ってカウンセラーと話をし、必要に応じて薬を服用する事だ。
「あーあ……。きったねぇもん見ちゃった……。このショック、労災にならないかな」
エレベーターの壁にもたれかかり、僕は情けなく呟く。
僕は元妻から〝異常者〟呼ばわりされた男だけど、女なら誰だっていい訳じゃない。
何とも思っていない女からあんな汚い迫られ方をされたら、勿論ショックだ。
「……帰ったら優美ちゃんに慰めてもらおう」
呟いて、ポケットからスマホを出すと、優美ちゃんフォルダを開く。
五十嵐の言う通り、彼女はタレント向きの凄い美人という訳じゃない。
けれど優美ちゃんはキリッとした顔立ちや、メイクのうまさからできる女感がある。
体は引き締まってヘルシーな色気があるし、胸もお尻も大きくて張りがある。
何より「自分は強い女」と言い聞かせて己を奮い立たせても、その奥に脆い所があるのを僕はとても気に入っている。
誰しも〝外〟向けの顔と、見せたくない顔がある。
僕が魅力を感じるのは、自分の弱さを知りながら、それでも懸命に最善を尽くして前に進む潔さだ。
優美ちゃんは劣等感を抱えながらも、前向きに生きようとしている。
彼女は決して自分のネガティブな感情を、他人にぶつけたりしない。
他人に怒りを抱く時は、理不尽な目に遭った時だけだから「当然だろ」となる。
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