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浜崎&五十嵐トラブル 編
超えちゃいけないラインを超えた
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ダイニングテーブル近くまで移動したあと、私は立ったまま二人を警戒しつつ、もっもっもっ……と口を動かした。
二人は顔を見合わせ、含んだ視線を交わす。
やっば……。この雰囲気、やっば……。
――けれど。
「OK。今は何もしないから、戻っておいでよ」
「今は」
私は慎也の言葉を復唱する。
「クリスマス払いにしてあげるから」
「何、そのボーナス払いみたいな言い方」
正樹に突っ込みを入れた私は警戒して立っていたが、二人がヒラヒラと手を振って呼び寄せたので元の場所に座った。
慎也が私を後ろから抱き、クッションに身を任せる。
「んまー、でもこれは手を打たないと駄目だな」
「そーだね。超えちゃいけないラインを超えた」
「ちょ……っ。だから被害はないも同然なんだから」
「あのね、優美」
「にゅっ」
慎也が私の頬を手で掴み、唇がタコのように突き出てしまう。
「俺は自分の大切な女に、そんな不名誉な噂が立つ事そのものが嫌なの」
「そうだよ。僕がこないだから怒ってるのは、そういう事。僕は自分自身にある程度の自信を持っている。久賀城家の長男で、久賀城ホールディングスの副社長。その僕が惚れた優美ちゃんが、元彼と頭の悪い女にコケにされていい訳がないの」
「おほほのへんふへひょ」
「ん?」
慎也がパッと手を離す。
「……男のメンツでしょ。……単純に言えば」
「そうだよ? でもそれが大事な時だってある。優美だって、俺たちが事実無根の言いがかりで悪者にされてたらどう思う?」
言われて逆の立場を考え、私はゆるりと首を横に振る。
「……嫌だ。きちんと無実を晴らしたい」
「でしょ? だからあとは僕たちに任せておいて」
正樹がニッコリ笑うと、ただただ「怖い」しか感想がないんですが……。
「……私は何をすればいい?」
協力する事があるのなら、と思って言ってみたけれど、慎也に頭を撫でられ、正樹にチュッとキスをされただけだった。
「優美はそのままでいいよ」
「そう。普通に過ごして、クリスマスのデートを楽しみにしていて」
……甘やかされてるなぁ。
「……ありがと」
何もしないでいいお姫様みたいな扱いをされ、私は苦笑いした。
**
「ちは」
「おー」
俺が気軽に挨拶をして訪れたのは、久賀城ホールディングスの副社長室だ。
年明けからこの会社に勤める事と、経営者一族である事から、今は外部の人間であるけれど、自由に出入りしている。
転職を親父に伝えると大喜びして、近いうちに役員のポストを作ると言っていた。
急に入社する息子に対して、その対応もあからさますぎる。
なのでしばらくは一社員として働き、実力を示せた頃に……と言っているが、親父のやつ聞きゃあしない。
渋い顔をされるのは目に見えているので、もしポンと役員にされた時は鋭意努力をして使える奴だと思ってもらわなければ。
それはともかく、今日ここを訪れたのは別の理由だ。
「身辺調査の結果が出たって?」
「うん」
デスクまで行くと、正樹は引き出しからA4の書類が入る封筒を出して手渡してきた。
「ちょっとそこに座って読むよ」
デスク前にある応接ソファに座り、俺は二件分の調査結果を読む。
「はっ! ……っははっ」
中身を見て、俺は思わず笑いだした。
「きったねぇ」
思わず出た言葉を聞き、正樹もクスクス笑う。
「汚いよねー」
俺はゆったりと脚を組み、肘をついて笑う。
「……さて、どう料理してやろうか」
「あっは! 慎也、悪い顔だな」
「いやいや、正樹の腹の底真っ黒には負けるから」
兄弟で褒め(?)合いをしながら、俺たちは爽やかに笑った。
**
二人は顔を見合わせ、含んだ視線を交わす。
やっば……。この雰囲気、やっば……。
――けれど。
「OK。今は何もしないから、戻っておいでよ」
「今は」
私は慎也の言葉を復唱する。
「クリスマス払いにしてあげるから」
「何、そのボーナス払いみたいな言い方」
正樹に突っ込みを入れた私は警戒して立っていたが、二人がヒラヒラと手を振って呼び寄せたので元の場所に座った。
慎也が私を後ろから抱き、クッションに身を任せる。
「んまー、でもこれは手を打たないと駄目だな」
「そーだね。超えちゃいけないラインを超えた」
「ちょ……っ。だから被害はないも同然なんだから」
「あのね、優美」
「にゅっ」
慎也が私の頬を手で掴み、唇がタコのように突き出てしまう。
「俺は自分の大切な女に、そんな不名誉な噂が立つ事そのものが嫌なの」
「そうだよ。僕がこないだから怒ってるのは、そういう事。僕は自分自身にある程度の自信を持っている。久賀城家の長男で、久賀城ホールディングスの副社長。その僕が惚れた優美ちゃんが、元彼と頭の悪い女にコケにされていい訳がないの」
「おほほのへんふへひょ」
「ん?」
慎也がパッと手を離す。
「……男のメンツでしょ。……単純に言えば」
「そうだよ? でもそれが大事な時だってある。優美だって、俺たちが事実無根の言いがかりで悪者にされてたらどう思う?」
言われて逆の立場を考え、私はゆるりと首を横に振る。
「……嫌だ。きちんと無実を晴らしたい」
「でしょ? だからあとは僕たちに任せておいて」
正樹がニッコリ笑うと、ただただ「怖い」しか感想がないんですが……。
「……私は何をすればいい?」
協力する事があるのなら、と思って言ってみたけれど、慎也に頭を撫でられ、正樹にチュッとキスをされただけだった。
「優美はそのままでいいよ」
「そう。普通に過ごして、クリスマスのデートを楽しみにしていて」
……甘やかされてるなぁ。
「……ありがと」
何もしないでいいお姫様みたいな扱いをされ、私は苦笑いした。
**
「ちは」
「おー」
俺が気軽に挨拶をして訪れたのは、久賀城ホールディングスの副社長室だ。
年明けからこの会社に勤める事と、経営者一族である事から、今は外部の人間であるけれど、自由に出入りしている。
転職を親父に伝えると大喜びして、近いうちに役員のポストを作ると言っていた。
急に入社する息子に対して、その対応もあからさますぎる。
なのでしばらくは一社員として働き、実力を示せた頃に……と言っているが、親父のやつ聞きゃあしない。
渋い顔をされるのは目に見えているので、もしポンと役員にされた時は鋭意努力をして使える奴だと思ってもらわなければ。
それはともかく、今日ここを訪れたのは別の理由だ。
「身辺調査の結果が出たって?」
「うん」
デスクまで行くと、正樹は引き出しからA4の書類が入る封筒を出して手渡してきた。
「ちょっとそこに座って読むよ」
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「はっ! ……っははっ」
中身を見て、俺は思わず笑いだした。
「きったねぇ」
思わず出た言葉を聞き、正樹もクスクス笑う。
「汚いよねー」
俺はゆったりと脚を組み、肘をついて笑う。
「……さて、どう料理してやろうか」
「あっは! 慎也、悪い顔だな」
「いやいや、正樹の腹の底真っ黒には負けるから」
兄弟で褒め(?)合いをしながら、俺たちは爽やかに笑った。
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