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浜崎&五十嵐トラブル 編
会社へのいやがらせ
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「折原さんこそ、『可愛くない』ってよく言われるでしょう。……お互い平行線のようですね。折原さんって意地悪ばっかり言うので、気分が悪くなりました」
言ったあと、五十嵐さんは砂糖たっぷりのカフェオレを飲み干し、「行こ」と友達に声を掛けてカフェを出て行った。
……おい、会計私持ちかよ。
…………まったく、どっちが品のない行為をしてるんだか。
嵐が去ったあと、私は自分のコーヒーをクイーッと飲み干してから、仕方がないので四人分のコーヒー代を支払ってカフェを出た。
**
そのあとが、最悪だった。
「折原さん、ちょっといいか?」
翌日出社すると、A4用紙を手にした課長に呼ばれる。
「はい?」
席を立って課長についていくと、使っていない会議室で話をする事になった。
「会社への苦情で、折原さんが恋人のいる人に迫って、迷惑を掛けているっていうのが複数入ったんだけど」
「はぁ?」
やばい。思わず声が出た。
そしてすぐ思い浮かんだのは、五十嵐さんとそのオトモダチの顔だ。
私はふかーい溜め息をつき、シワシワの○ケモンみたいな顔になる。
「課長、説明させて頂いていいですか?」
「聞こう。俺は折原さんの人柄を知っているつもりだ。むやみやたらにこんな苦情がくると思っていない」
「ありがとうございます……」
課長に勧められ、私は会議室の椅子に座る。
それから四年前に浜崎くんと別れた時の話から、現在に至るまでをざっくりと説明した。
勿論、慎也と正樹と恋人関係なのは伏せておいたけれど、今は正式にお付き合いしている恋人がいるという話はした。
「確かに、四年前に折原さんが……あー、誰とでも関係するとか、性欲が旺盛だという噂は聞いた。正直それについては業務内容には関係しないし、社名に傷が付くような出来事でも起こらなければ、個人の問題だからと放置しておいたが……」
「あの時は面倒で否定してまわるのをやめましたが、すべて浜崎くんが自分のプライドを守るためについた嘘です。私は巻き込まれたに過ぎません。私はいま素敵な恋人に恵まれていて、浜崎くんごときに未練なんて感じません。昨日お会いした五十嵐さんという女性についても、羨ましいなんてこれっぽっちも思いませんし、正直、別れた人の事なんて、どうっっっ…………でもいいです」
最後は渾身の力を込めて言った。
私は嫌いだと思った人について、スッと興味を失う。
たとえ浜崎くんが同じ職場にいても、過去に彼氏だった事実はなかった事にして、徹底的に同僚という立場を貫く。
嫌な事があっても空気を悪くせずひたすら働くのは、社会人として当たり前の事だと思っているからだ。
そもそも、関係が終わった相手に対し、いつまでも拘って嫌がらせをするなんてどうかしてる。
「……まぁ、そうだろうな。大体そんなところだろうと思ったけど……」
課長は溜め息をつき、手に持っていた紙を適当に折り始めた。
恐らく、苦情のメールを印刷したものだろう。
「折原さんには今後も期待してるから、気にしなくていいよ。上には俺から伝えておく。今後も仕事に励んでほしい」
「分かりました! ありがとうございます!」
「ただ、へたに騒がれるのを避けるために、できるだけ浜崎くんとは接触しないほうがいいかもしれないな。俺からも配慮しておく」
「ありがとうございます!」
良かったー!
私は課長に感謝して、会議室をあとにした。
**
「……っていう事があってね」
「「はぁ?」」
その日の夜に慎也が作ってくれたアジフライ定食をペロッと食べ、デザートに正樹が買ってきてくれた大福を囓りつつ話すと、二人の声が見事なまでにハモッた。
「なんでそれ、当日に言わなかった訳?」
慎也が苛ついた声を出す。
「ねぇ、優美ちゃん。僕、ペナルティって言ったよね?」
正樹の笑顔が怖い。
「ちょ……っ、なんで私が悪い事になってるの!? 結局お咎めなしになったんだから、いいでしょ!」
危機を感じた私は、大福の残りを口の中に入れ、立ち上がって二人から距離を取る。
言ったあと、五十嵐さんは砂糖たっぷりのカフェオレを飲み干し、「行こ」と友達に声を掛けてカフェを出て行った。
……おい、会計私持ちかよ。
…………まったく、どっちが品のない行為をしてるんだか。
嵐が去ったあと、私は自分のコーヒーをクイーッと飲み干してから、仕方がないので四人分のコーヒー代を支払ってカフェを出た。
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そのあとが、最悪だった。
「折原さん、ちょっといいか?」
翌日出社すると、A4用紙を手にした課長に呼ばれる。
「はい?」
席を立って課長についていくと、使っていない会議室で話をする事になった。
「会社への苦情で、折原さんが恋人のいる人に迫って、迷惑を掛けているっていうのが複数入ったんだけど」
「はぁ?」
やばい。思わず声が出た。
そしてすぐ思い浮かんだのは、五十嵐さんとそのオトモダチの顔だ。
私はふかーい溜め息をつき、シワシワの○ケモンみたいな顔になる。
「課長、説明させて頂いていいですか?」
「聞こう。俺は折原さんの人柄を知っているつもりだ。むやみやたらにこんな苦情がくると思っていない」
「ありがとうございます……」
課長に勧められ、私は会議室の椅子に座る。
それから四年前に浜崎くんと別れた時の話から、現在に至るまでをざっくりと説明した。
勿論、慎也と正樹と恋人関係なのは伏せておいたけれど、今は正式にお付き合いしている恋人がいるという話はした。
「確かに、四年前に折原さんが……あー、誰とでも関係するとか、性欲が旺盛だという噂は聞いた。正直それについては業務内容には関係しないし、社名に傷が付くような出来事でも起こらなければ、個人の問題だからと放置しておいたが……」
「あの時は面倒で否定してまわるのをやめましたが、すべて浜崎くんが自分のプライドを守るためについた嘘です。私は巻き込まれたに過ぎません。私はいま素敵な恋人に恵まれていて、浜崎くんごときに未練なんて感じません。昨日お会いした五十嵐さんという女性についても、羨ましいなんてこれっぽっちも思いませんし、正直、別れた人の事なんて、どうっっっ…………でもいいです」
最後は渾身の力を込めて言った。
私は嫌いだと思った人について、スッと興味を失う。
たとえ浜崎くんが同じ職場にいても、過去に彼氏だった事実はなかった事にして、徹底的に同僚という立場を貫く。
嫌な事があっても空気を悪くせずひたすら働くのは、社会人として当たり前の事だと思っているからだ。
そもそも、関係が終わった相手に対し、いつまでも拘って嫌がらせをするなんてどうかしてる。
「……まぁ、そうだろうな。大体そんなところだろうと思ったけど……」
課長は溜め息をつき、手に持っていた紙を適当に折り始めた。
恐らく、苦情のメールを印刷したものだろう。
「折原さんには今後も期待してるから、気にしなくていいよ。上には俺から伝えておく。今後も仕事に励んでほしい」
「分かりました! ありがとうございます!」
「ただ、へたに騒がれるのを避けるために、できるだけ浜崎くんとは接触しないほうがいいかもしれないな。俺からも配慮しておく」
「ありがとうございます!」
良かったー!
私は課長に感謝して、会議室をあとにした。
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「……っていう事があってね」
「「はぁ?」」
その日の夜に慎也が作ってくれたアジフライ定食をペロッと食べ、デザートに正樹が買ってきてくれた大福を囓りつつ話すと、二人の声が見事なまでにハモッた。
「なんでそれ、当日に言わなかった訳?」
慎也が苛ついた声を出す。
「ねぇ、優美ちゃん。僕、ペナルティって言ったよね?」
正樹の笑顔が怖い。
「ちょ……っ、なんで私が悪い事になってるの!? 結局お咎めなしになったんだから、いいでしょ!」
危機を感じた私は、大福の残りを口の中に入れ、立ち上がって二人から距離を取る。
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