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テーマパークダブルデート 編
ダブルデート
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それからあとは、少しごたついたけれど予定通りになった。
翌日、何食わぬ顔で出社したけれど、慎也は課長に「お話があります」と言って二人でどこかに向かった。
慎也の苗字は岬だけど、会社の上層部は彼が久賀城の御曹司だと知っている。
その上で彼が一社員として働きたいと申し出たので雇用し、彼の個人的なお願いで〝岬慎也〟の苗字を使う事をよしとしたらしい。
なので慎也が「久賀城ホールディングスで働くので、退職したいです」と言っても、恐らく誰も反対しないだろう。
結婚はまだ先で、三人で相談した通り、一年ほど恋人関係を続けて互いの家族に紹介が終わったら……と考えている。
やがて慎也は今年いっぱいで退社すると決まり、年末には忘年会も兼ねて盛大な送別会が行われる事になった。
女性社員たちは「狙ってたのに……」という悔しさを滲ませ、連絡先を交換できないか画策する。
そんな彼女たちの姿を隅っこから観察している私は、ちょっと性格が良くないかもしれない。
私は現在住んでいる賃貸マンションの解約を管理人さんに告げ、少しずつ荷物を元麻布のマンションに運んでいる。
文香にも事の顛末を話し――――大爆笑された。
いや、正樹の事については詳しく話してないんだけど、「ハプバーで出会った挙げ句、結婚するの!?」と、テーブルをバンバン叩き、涙を流して笑われた。
最終的に「あんたがいいんなら、いいんじゃない? 慎也くん良さそうな子だったし」と祝福してくれた。
こう言った文香が、のちの私のモンペ的に変化していくのは、また別の話になる。
ハロウィンが迫り、私は連休を利用して、初めて二人とお泊まりデートをする事になった。
二人が連れて行ってくれたのは、関西にあるテーマパークだ。
私が緊張しないように、文香と和人くんも誘ってのグループデートだ。
テーマパークはすっかりハロウィン色に染まっていて、私は文香とキャアキャア言いながら写真を撮りまくった。
和人くんは心の広い人なので、事情を察した上で、持ち前の人の良さを発揮して二人と仲良くしてくれていた。
アトラクションを楽しむ時は、どうしても二人乗りが多いので、慎也と正樹が順番に私の隣に座っていた。
夜になるとハロウィンらしい、ゾンビが徘徊するイベントが始まり、ステージ上にいるゾンビがダンスをする様子は「格好いい」と思って見ていられたのだが――。
――終わったあとは堪らなかった。
なぜなら、ダンスが終わったのを合図に、ゾンビたちが手に武器を持って一斉に一襲いかかってきたからだ。
「ぃ、ぎ、――あ、あぁああああぁ……っ!!」
私は悲鳴を上げて全力ダッシュした。
何せ私はグロ耐性が弱い。
汚い叫び声を上げながら、百メートル十二秒台のスピードで走る私を、全員がゲラッゲラ笑って見送っていたけれど、知らん。本当に知らん。
私はへたをすればゾンビ(キャスト)に攻撃しかねない勢いだったので、慎也と正樹が笑いながら追いかけてきた。
安全な場所まで避難したあと、私は少しベソベソ泣いてしまった。
「あっはは! 可愛いね、優美ちゃん。ゾンビ嫌いなんだ?」
シャツにジーンズ姿の正樹は、いまだ手を打ち鳴らして笑っている。
「嫌いですよ!」
若干キレ気味に答える私を、慎也が「まぁまぁ」と宥めてチュッと頬にキスをしてきた。
「機嫌直して、優美。嫌いなのは分かったから、今度から気を付ける」
「ん……」
そう言われると、こっちが我が儘を言っているような気持ちになるので、気持ちを落ち着かせる。
「文香さんたちと離れちまったけど、向こうもホテルに戻るだろうし、先に帰るか?」
「うん」
心身共に疲弊した私は、慎也に手を差し出され、素直に頷く。
両側から手を握られ、私はライトアップされたテーマパークを楽しみつつ、ホテルまで戻った。
翌日、何食わぬ顔で出社したけれど、慎也は課長に「お話があります」と言って二人でどこかに向かった。
慎也の苗字は岬だけど、会社の上層部は彼が久賀城の御曹司だと知っている。
その上で彼が一社員として働きたいと申し出たので雇用し、彼の個人的なお願いで〝岬慎也〟の苗字を使う事をよしとしたらしい。
なので慎也が「久賀城ホールディングスで働くので、退職したいです」と言っても、恐らく誰も反対しないだろう。
結婚はまだ先で、三人で相談した通り、一年ほど恋人関係を続けて互いの家族に紹介が終わったら……と考えている。
やがて慎也は今年いっぱいで退社すると決まり、年末には忘年会も兼ねて盛大な送別会が行われる事になった。
女性社員たちは「狙ってたのに……」という悔しさを滲ませ、連絡先を交換できないか画策する。
そんな彼女たちの姿を隅っこから観察している私は、ちょっと性格が良くないかもしれない。
私は現在住んでいる賃貸マンションの解約を管理人さんに告げ、少しずつ荷物を元麻布のマンションに運んでいる。
文香にも事の顛末を話し――――大爆笑された。
いや、正樹の事については詳しく話してないんだけど、「ハプバーで出会った挙げ句、結婚するの!?」と、テーブルをバンバン叩き、涙を流して笑われた。
最終的に「あんたがいいんなら、いいんじゃない? 慎也くん良さそうな子だったし」と祝福してくれた。
こう言った文香が、のちの私のモンペ的に変化していくのは、また別の話になる。
ハロウィンが迫り、私は連休を利用して、初めて二人とお泊まりデートをする事になった。
二人が連れて行ってくれたのは、関西にあるテーマパークだ。
私が緊張しないように、文香と和人くんも誘ってのグループデートだ。
テーマパークはすっかりハロウィン色に染まっていて、私は文香とキャアキャア言いながら写真を撮りまくった。
和人くんは心の広い人なので、事情を察した上で、持ち前の人の良さを発揮して二人と仲良くしてくれていた。
アトラクションを楽しむ時は、どうしても二人乗りが多いので、慎也と正樹が順番に私の隣に座っていた。
夜になるとハロウィンらしい、ゾンビが徘徊するイベントが始まり、ステージ上にいるゾンビがダンスをする様子は「格好いい」と思って見ていられたのだが――。
――終わったあとは堪らなかった。
なぜなら、ダンスが終わったのを合図に、ゾンビたちが手に武器を持って一斉に一襲いかかってきたからだ。
「ぃ、ぎ、――あ、あぁああああぁ……っ!!」
私は悲鳴を上げて全力ダッシュした。
何せ私はグロ耐性が弱い。
汚い叫び声を上げながら、百メートル十二秒台のスピードで走る私を、全員がゲラッゲラ笑って見送っていたけれど、知らん。本当に知らん。
私はへたをすればゾンビ(キャスト)に攻撃しかねない勢いだったので、慎也と正樹が笑いながら追いかけてきた。
安全な場所まで避難したあと、私は少しベソベソ泣いてしまった。
「あっはは! 可愛いね、優美ちゃん。ゾンビ嫌いなんだ?」
シャツにジーンズ姿の正樹は、いまだ手を打ち鳴らして笑っている。
「嫌いですよ!」
若干キレ気味に答える私を、慎也が「まぁまぁ」と宥めてチュッと頬にキスをしてきた。
「機嫌直して、優美。嫌いなのは分かったから、今度から気を付ける」
「ん……」
そう言われると、こっちが我が儘を言っているような気持ちになるので、気持ちを落ち着かせる。
「文香さんたちと離れちまったけど、向こうもホテルに戻るだろうし、先に帰るか?」
「うん」
心身共に疲弊した私は、慎也に手を差し出され、素直に頷く。
両側から手を握られ、私はライトアップされたテーマパークを楽しみつつ、ホテルまで戻った。
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