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ハプバー~同居開始 編
あいつかなり昔から優美ちゃんの事が好きだったよ
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「元妻に何度か『スワッピングしよう』とか、『友達を呼んでもいい?』って聞いたけど、『異常者』って言われて離婚を切りだされた」
「……それは、ちょっと奥さんに同情します」
「やっぱり普通はそっかー」
あっけらかんとして言う正樹は、離婚した事をあまり後悔とか悲しんだりしていないように感じられる。
「慎也はあれでいて兄思いでさ、僕が離婚して落ち込んでると思ってるみたい。僕、親に対しては、理想の結婚ができなくて申し訳なさはあるけど、僕本人はそれほど落ち込んでないんだよね。どっちかというと元妻といてもつまらなかったし」
「じゃあ、なんで結婚したんですか?」
「やっぱり親の期待? 久賀城の跡取りだし、結婚して跡継ぎ作っておかないとって」
「……割と、軽いですね」
「あははっ、そう見える? 僕、これでも仕事はできるほうなんだけどなー。あと、見た目が結構いいでしょ? その分、中身が残念なように神様に作られたんだと思う」
「はぁ……」
最初は「この人なんなの?」って印象だったけど、事情を知ると逆に同情してしまう自分がいる。
残念な人だと思うには、彼が抱えていたストレス、家庭環境は複雑すぎる。
「僕、結婚前に結構遊んだんだ。女の子を征服して、僕だけを考えさせてると、満たされて寂しくないって思えた。大勢でウェーイってやってるのも好きだったね。……多分、一対一だと『僕だけを愛してくれない』っていう恐れがあったんだと思う。そうこうしているうちに、まともな恋愛ができなくなっちゃったな」
「……それは、同情します」
「泡流すから、目閉じてね」
一言言って、正樹は私の髪を洗い流してくる。
「慎也は優しい、いい子だよ。離婚した僕を気遣って、3Pが大丈夫な彼女と付き合うって言いだした。おっかしいだろ」
うん、発想がおかしい。
普通、そこまで兄に気遣わないと思うけど……。
「あいつ、負い目があるのかな。母親が違う事で、僕が気を遣ってるとか、自分たちが玲奈さんを独り占めしたとか……」
「あー……」
ないとは言えない。
「慎也の下の弟の芳也は二十四歳で、うちの会社にいる。妹の未望は今年大学を卒業。僕が思春期の頃、二人は小さくて母親がどうこうって全然分かってなかった。だから僕の苦悩をリアルタイムで知っていた兄弟は、慎也だけなんだ」
「……そうかもしれませんね」
二度目のシャンプーをしながら、正樹が尋ねてくる。
「話は変わるけどさ、慎也は怒ると思うけど、あいつかなり昔から優美ちゃんの事が好きだったよ」
「ほ、本当ですか?」
うっすら……、なんとなーく感じていたので、いきなり正解を突きつけられてドキッとする。
「就職してから急に慎也が生き生きしてね。『すっごいカッコイイ人がいる』って言ってた。最初、カッコイイ前提で『折原さん、折原さん』って言ってたから、僕男かと思ってた。あっは!」
「……あはは……。まぁ、岬くんには『折原さんカッコイイですね』って言われてたから、何も知らない人にはそう思われもしゃーないかもですね」
確かに、〝折原さん〟だけじゃ男か女か分からない。
「『仕事ができて、外見だけじゃなくて内面も格好いい』って、毎日のように嬉しそうに話してたんだ」
「そ、そうですか……」
嬉しい……けど、恥ずかしい。
「あいつは自分の価値を分かってる。何をすればやっかみを受けるかとか、女の子が勘違いするかとかもわきまえてる。だから自分が纏わり付く事で、優美ちゃんの仕事の邪魔にならないか気をつけてたみたいだ。ああ見えてあいつ、気にしいなところもあるんだよ」
「はぁ……」
「それに誘ってもまったく靡かないから、『男としての自信がなくなった』って落ち込んでたな。おっかしー」
「そ……それは、申し訳ないとしか……」
確かに何回か飲みや食事に誘われた。
けど私は、なにかと理由をつけて断り続けていた。
なにせ私はつよつよ女……に見えて、元自己肯定感ゼロオバケだった。
慎也のようなハイスペックイケメンに好かれるなんて、「何か裏があるんじゃないだろうか?」って疑ってしまっていた。
いつだったか、慎也がとても落ち込んでいた時があって、私から一度誘った事はあった。
けどその時も、あまり踏み込んだら失礼だなと思って、仕事と筋トレという色気のない話で終わったので、彼と私の間の〝もしも〟はできなかったと思い込んでいた。
「優美ちゃん、モテるでしょ?」
二度目のシャンプーを流し、コンディショナーを髪に揉み込みながら正樹が尋ねてくる。
それに私は「あははっ」と軽く笑った。
「量より質という意味でなら、全然モテません」
これはマジだ。
「バーとかで飲んでいて、声を掛けられる事は沢山あります。でも大体『遊んでそうな女だから、ワンナイトやってやろう』っていうのばっかりです。真剣に付き合おうっていう人は、もっとベクトルの違う女性に声を掛けると思います。偏見かもしれませんが、声を掛けてくる人って、性欲がオーラになって滲み出ている、ギラギラした人ばっかりに見えます」
「あっはは! 分かる! 僕らもまったく同じだよ。それの女の子バージョン。多いのは、肉食系っていうより、ロールキャベツかな。見た目可愛い系だけど、中身はしたたかそうっていう」
「あー……」
そういう人、営業部にもいるなー。
見た目はフワフワしてるんだけど、内面はすんごい激しい。
「……それは、ちょっと奥さんに同情します」
「やっぱり普通はそっかー」
あっけらかんとして言う正樹は、離婚した事をあまり後悔とか悲しんだりしていないように感じられる。
「慎也はあれでいて兄思いでさ、僕が離婚して落ち込んでると思ってるみたい。僕、親に対しては、理想の結婚ができなくて申し訳なさはあるけど、僕本人はそれほど落ち込んでないんだよね。どっちかというと元妻といてもつまらなかったし」
「じゃあ、なんで結婚したんですか?」
「やっぱり親の期待? 久賀城の跡取りだし、結婚して跡継ぎ作っておかないとって」
「……割と、軽いですね」
「あははっ、そう見える? 僕、これでも仕事はできるほうなんだけどなー。あと、見た目が結構いいでしょ? その分、中身が残念なように神様に作られたんだと思う」
「はぁ……」
最初は「この人なんなの?」って印象だったけど、事情を知ると逆に同情してしまう自分がいる。
残念な人だと思うには、彼が抱えていたストレス、家庭環境は複雑すぎる。
「僕、結婚前に結構遊んだんだ。女の子を征服して、僕だけを考えさせてると、満たされて寂しくないって思えた。大勢でウェーイってやってるのも好きだったね。……多分、一対一だと『僕だけを愛してくれない』っていう恐れがあったんだと思う。そうこうしているうちに、まともな恋愛ができなくなっちゃったな」
「……それは、同情します」
「泡流すから、目閉じてね」
一言言って、正樹は私の髪を洗い流してくる。
「慎也は優しい、いい子だよ。離婚した僕を気遣って、3Pが大丈夫な彼女と付き合うって言いだした。おっかしいだろ」
うん、発想がおかしい。
普通、そこまで兄に気遣わないと思うけど……。
「あいつ、負い目があるのかな。母親が違う事で、僕が気を遣ってるとか、自分たちが玲奈さんを独り占めしたとか……」
「あー……」
ないとは言えない。
「慎也の下の弟の芳也は二十四歳で、うちの会社にいる。妹の未望は今年大学を卒業。僕が思春期の頃、二人は小さくて母親がどうこうって全然分かってなかった。だから僕の苦悩をリアルタイムで知っていた兄弟は、慎也だけなんだ」
「……そうかもしれませんね」
二度目のシャンプーをしながら、正樹が尋ねてくる。
「話は変わるけどさ、慎也は怒ると思うけど、あいつかなり昔から優美ちゃんの事が好きだったよ」
「ほ、本当ですか?」
うっすら……、なんとなーく感じていたので、いきなり正解を突きつけられてドキッとする。
「就職してから急に慎也が生き生きしてね。『すっごいカッコイイ人がいる』って言ってた。最初、カッコイイ前提で『折原さん、折原さん』って言ってたから、僕男かと思ってた。あっは!」
「……あはは……。まぁ、岬くんには『折原さんカッコイイですね』って言われてたから、何も知らない人にはそう思われもしゃーないかもですね」
確かに、〝折原さん〟だけじゃ男か女か分からない。
「『仕事ができて、外見だけじゃなくて内面も格好いい』って、毎日のように嬉しそうに話してたんだ」
「そ、そうですか……」
嬉しい……けど、恥ずかしい。
「あいつは自分の価値を分かってる。何をすればやっかみを受けるかとか、女の子が勘違いするかとかもわきまえてる。だから自分が纏わり付く事で、優美ちゃんの仕事の邪魔にならないか気をつけてたみたいだ。ああ見えてあいつ、気にしいなところもあるんだよ」
「はぁ……」
「それに誘ってもまったく靡かないから、『男としての自信がなくなった』って落ち込んでたな。おっかしー」
「そ……それは、申し訳ないとしか……」
確かに何回か飲みや食事に誘われた。
けど私は、なにかと理由をつけて断り続けていた。
なにせ私はつよつよ女……に見えて、元自己肯定感ゼロオバケだった。
慎也のようなハイスペックイケメンに好かれるなんて、「何か裏があるんじゃないだろうか?」って疑ってしまっていた。
いつだったか、慎也がとても落ち込んでいた時があって、私から一度誘った事はあった。
けどその時も、あまり踏み込んだら失礼だなと思って、仕事と筋トレという色気のない話で終わったので、彼と私の間の〝もしも〟はできなかったと思い込んでいた。
「優美ちゃん、モテるでしょ?」
二度目のシャンプーを流し、コンディショナーを髪に揉み込みながら正樹が尋ねてくる。
それに私は「あははっ」と軽く笑った。
「量より質という意味でなら、全然モテません」
これはマジだ。
「バーとかで飲んでいて、声を掛けられる事は沢山あります。でも大体『遊んでそうな女だから、ワンナイトやってやろう』っていうのばっかりです。真剣に付き合おうっていう人は、もっとベクトルの違う女性に声を掛けると思います。偏見かもしれませんが、声を掛けてくる人って、性欲がオーラになって滲み出ている、ギラギラした人ばっかりに見えます」
「あっはは! 分かる! 僕らもまったく同じだよ。それの女の子バージョン。多いのは、肉食系っていうより、ロールキャベツかな。見た目可愛い系だけど、中身はしたたかそうっていう」
「あー……」
そういう人、営業部にもいるなー。
見た目はフワフワしてるんだけど、内面はすんごい激しい。
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