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ハプバー~同居開始 編
あんまり燃えないんだよね
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「慎也は飯作っててよ。同じ職場だから優美ちゃんの好みも分かってるんだろ」
言いながら正樹は下着ごとスウェットズボンを脱ぎ、私のバスローブも脱がせる。
「正樹!」
「優美ちゃん、綺麗にしたげるね」
「ちょっ、ああああ……」
私は広いバスルームに押し込まれ、全裸の正樹は鼻歌を歌いながらシャワーのコックを捻った。
「まずお腹洗おうか」
正樹はシャワーの温度を確認したあと、私のうなじから背中、胸元にシャワーを当てて太腿や脛、ふくらはぎも温める。
それから私のお腹にシャワーを当て、昨日たっぷり精液を掛けた腹部を、手で撫でて洗ってきた。
「僕たちの父親は、久賀城の社長兼CEOをやってるんだ」
やにわに正樹が身の上話を始める。
突然だったけれど、彼がそのためにバスルームで二人きりになったのだと理解した。
家族の事でも、多分慎也にはあまり聞かせたくないのかもしれない。
「うちの父親は〝ハーフ〟で、祖父はフランス人だ。祖母は日本人で、とても可愛らしい人だよ。僕と慎也は祖父の色素をちょっと隔世遺伝で引き継いでしまった感じの外見をしてるね」
「……確かに、目の色が薄めだと思いました」
正樹は私の体のぬるつきを取ったあと、ベリーとマリンの香りがするボディソープをたっぷり手に取り、泡立ててから私の体を洗ってきた。
「僕の母は、父とお見合いをして結婚した、ちょっと家柄のいいお嬢さんだった。亡くなったのは僕が小さい頃だったから、どんな人だったかはあまり記憶はない。周りの証言だと、儚げな印象ながら、なかなか楽しい人だったみたいだ。父は母を愛していたけど、独身でい続ける事を周囲が放っておかなかった」
「お察しします」
そりゃそうだろう。
私みたいな一般人から見たら、政略結婚なんていつの時代? っていう感じだ。
けど今だって、企業同士の結びつきを考えて縁談を組むのはざらにあるんだろう。
「そして父が次に結婚したのは、岬観光グループのお嬢さん――慎也の母だった。玲奈さんっていう人だけど、前妻の子である僕に冷たく当たらなかったし、とてもいい人だよ。逆に愛情深すぎて、ちょっと心配性なところもあるけど」
「そうなんですね。それは良かったです」
「僕と慎也は仲良く育った。……でも、僕は慎也と弟妹が大きくなるにつれ、勝手に疎外感を覚えていたんだ」
それも、想像に難くない。
どれだけ後妻の玲奈さんが気を遣って優しくしても、慎也や弟妹が懐いても、正樹は自分だけが〝違う〟と思ってしまうのだろう。
正樹は泡を洗い流したあと、私をバスチェアに座らせる。
お風呂は追い炊きしている最中だ。
「だからなのかな。僕が久賀城の会社に入った頃には、慎也は『兄貴が会社を継ぐべきだ』と言って、自分は岬の姓を名乗って飲食会社に就職してしまったんだ」
「あ……」
ここでようやく、二人の苗字が違う理由に行き着いた。
「慎也の本当の名前は、久賀城慎也……?」
「そう」
正樹は私の髪をたっぷり濡らし、頭皮マッサージする。
慣れているのか分からないけど、とても気持ちいい。
「僕はいま三十歳でさ、二十八歳の時に一回結婚してたんだ」
「あ、はい」
彼の指輪の痕を思いだし、後ろめたい気持ちになる。
この人は、誰かの夫だったんだ。
「相手は二つ年下の、ちょっと有名な会社の社長令嬢だった。でも……、まぁ、嫌われたよね」
「え?」
こんな何もかも兼ね揃えている人が、嫌われるなんて……。
「最初は『運命を感じました』って甘えて、ベタ惚れだった。でも、僕の中にある闇や歪みを知ったあと、『ついていけない』って言われて別れたんだ。結婚生活は一年しかもたなかったな。彼女も子連れで再婚にならなくて良かったんじゃない?」
サラッと言うあたり、正樹の闇の深さがうかがい知れる。
「ちなみに、どういう歪みなのか具体的にお聞きしても……?」
「んー」
正樹はシャワーを止め、シャンプーを手に取って泡立ててから私の髪を洗い始めた。
「僕、一対一のセックスだとあんまり燃えないんだよね」
「あっ……」
それですべてを察してしまった。
道理でこの人、私と慎也のセックスの最中にすんなり乱入してきた訳だ。
事情を察し、私は溜め息をつく。
言いながら正樹は下着ごとスウェットズボンを脱ぎ、私のバスローブも脱がせる。
「正樹!」
「優美ちゃん、綺麗にしたげるね」
「ちょっ、ああああ……」
私は広いバスルームに押し込まれ、全裸の正樹は鼻歌を歌いながらシャワーのコックを捻った。
「まずお腹洗おうか」
正樹はシャワーの温度を確認したあと、私のうなじから背中、胸元にシャワーを当てて太腿や脛、ふくらはぎも温める。
それから私のお腹にシャワーを当て、昨日たっぷり精液を掛けた腹部を、手で撫でて洗ってきた。
「僕たちの父親は、久賀城の社長兼CEOをやってるんだ」
やにわに正樹が身の上話を始める。
突然だったけれど、彼がそのためにバスルームで二人きりになったのだと理解した。
家族の事でも、多分慎也にはあまり聞かせたくないのかもしれない。
「うちの父親は〝ハーフ〟で、祖父はフランス人だ。祖母は日本人で、とても可愛らしい人だよ。僕と慎也は祖父の色素をちょっと隔世遺伝で引き継いでしまった感じの外見をしてるね」
「……確かに、目の色が薄めだと思いました」
正樹は私の体のぬるつきを取ったあと、ベリーとマリンの香りがするボディソープをたっぷり手に取り、泡立ててから私の体を洗ってきた。
「僕の母は、父とお見合いをして結婚した、ちょっと家柄のいいお嬢さんだった。亡くなったのは僕が小さい頃だったから、どんな人だったかはあまり記憶はない。周りの証言だと、儚げな印象ながら、なかなか楽しい人だったみたいだ。父は母を愛していたけど、独身でい続ける事を周囲が放っておかなかった」
「お察しします」
そりゃそうだろう。
私みたいな一般人から見たら、政略結婚なんていつの時代? っていう感じだ。
けど今だって、企業同士の結びつきを考えて縁談を組むのはざらにあるんだろう。
「そして父が次に結婚したのは、岬観光グループのお嬢さん――慎也の母だった。玲奈さんっていう人だけど、前妻の子である僕に冷たく当たらなかったし、とてもいい人だよ。逆に愛情深すぎて、ちょっと心配性なところもあるけど」
「そうなんですね。それは良かったです」
「僕と慎也は仲良く育った。……でも、僕は慎也と弟妹が大きくなるにつれ、勝手に疎外感を覚えていたんだ」
それも、想像に難くない。
どれだけ後妻の玲奈さんが気を遣って優しくしても、慎也や弟妹が懐いても、正樹は自分だけが〝違う〟と思ってしまうのだろう。
正樹は泡を洗い流したあと、私をバスチェアに座らせる。
お風呂は追い炊きしている最中だ。
「だからなのかな。僕が久賀城の会社に入った頃には、慎也は『兄貴が会社を継ぐべきだ』と言って、自分は岬の姓を名乗って飲食会社に就職してしまったんだ」
「あ……」
ここでようやく、二人の苗字が違う理由に行き着いた。
「慎也の本当の名前は、久賀城慎也……?」
「そう」
正樹は私の髪をたっぷり濡らし、頭皮マッサージする。
慣れているのか分からないけど、とても気持ちいい。
「僕はいま三十歳でさ、二十八歳の時に一回結婚してたんだ」
「あ、はい」
彼の指輪の痕を思いだし、後ろめたい気持ちになる。
この人は、誰かの夫だったんだ。
「相手は二つ年下の、ちょっと有名な会社の社長令嬢だった。でも……、まぁ、嫌われたよね」
「え?」
こんな何もかも兼ね揃えている人が、嫌われるなんて……。
「最初は『運命を感じました』って甘えて、ベタ惚れだった。でも、僕の中にある闇や歪みを知ったあと、『ついていけない』って言われて別れたんだ。結婚生活は一年しかもたなかったな。彼女も子連れで再婚にならなくて良かったんじゃない?」
サラッと言うあたり、正樹の闇の深さがうかがい知れる。
「ちなみに、どういう歪みなのか具体的にお聞きしても……?」
「んー」
正樹はシャワーを止め、シャンプーを手に取って泡立ててから私の髪を洗い始めた。
「僕、一対一のセックスだとあんまり燃えないんだよね」
「あっ……」
それですべてを察してしまった。
道理でこの人、私と慎也のセックスの最中にすんなり乱入してきた訳だ。
事情を察し、私は溜め息をつく。
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