21 / 539
ハプバー~同居開始 編
バカみたい
しおりを挟む
「一回しかないなんて、そりゃあないでしょ。俺と付き合ってくれないの?」
「そっ、それは……。前向きに検討するけど……。でも、正樹、……さん、が混じるなんて、この部屋に一緒に住んでいるなら……」
「正樹でいいよ。あ、そうだ。名刺渡そうか」
ペントハウスはメゾネットになっていて、二階に上がる階段は二箇所あった。
覚えている限り、慎也と入ったベッドは、部屋に入って左側の階段から上がった場所にあった。
今のベッドは右手に壁がある。
二階部分はコの字型のフロアがある中心が吹き抜けになっていて、首を巡らせると反対側に恐らく最初に使っただろうベッドがあった。
「……ベッド、移動したの?」
「そう。俺のベッドはグチャグチャになったからね。シーツは取り替えたけど、また優美を移動させるより、このまま正樹のベッドで寝たほうがいいと思って」
「……お気遣い、ありがとう……」
二階はつや消しの黒い床になっていて、角にあるソファセットや照明はシンプルながらモダンなデザインだ。
それぞれのベッドの中間には、ブティックのように服が綺麗に陳列されたコーナーがある。
体型が似ているから、服を共有しているんだろうか。
戻って来た正樹は、私に「はい」と名刺を手渡した。
「ご丁寧にありがとうございます。私も名刺を……」
そう言ってバッグを探そうとするが、「いいよ」と正樹に言われる。
「弟んトコの営業部の折原優美ちゃん。前から話は聞いてたから知ってるよ」
「弟!?」
素っ頓狂な声を上げた私は、慌てて名刺を見る。
――え?
そこには『久賀城ホールディングス 代表取締役副社長 COO』と書かれてある。
はぁ……?
え……?
久賀城ホールディングスと言えば、ホテルや旅館、温泉旅館に旅行会社を手がけている大企業だ。
ぼんやりとした顔で正樹を見ると、彼は悪戯が成功したという顔で無邪気に笑う。
「仕事しやすいように都内にあちこち家を持っていてね。ここはメインで使っている家の一つなんだ。他にも国内海外、別荘や家は持っているけど」
とんでもない世界に、私はただ呆然とするしかない。
「……慎也……は……、苗字……」
「慎也は親父の後妻の子。僕の母さんは子供の頃に亡くなったんだ」
「あ……、それは……」
「全然気にしてないから、優美ちゃんが気遣う事はないの」
子供に言い含めるように言って、正樹は私の頭をポンポンと撫でてくる。
その左手の薬指に、指輪の痕があるのを見つけてしまった。
思わず食い入るように見ていたからか、正樹が笑う。
「あはっ、気付いた? 結婚してたんだ」
「……してた?」
「うん、してた。離婚したけどね」
軽く言われ、どう反応したらいいのか分からなくなる。
「それで……弟と同居?」
「まぁ、色々便利だし。服もサイズが近いから共有できる」
今度は後ろから私を抱き締めて、慎也が答えてきた。
その〝共有〟という言葉が心の奥にズンと響き、急に落ち込んでしまった。
「…………女性も二人で〝共有〟して遊んでるの?」
――バカみたい。
こんなハイスペックイケメンが、私みたいなのを相手にする訳がない。
ハプバーにも日常的に行っていて、イケメンで女性にモテるからセックスの相手に困っていない。
都内に沢山家があるから、どこに女性を連れ込んでもバレずにうまくやっているんだろう。
すぐに着替えを手配する手際の良さも納得できた。
きっと遊ぶだけ遊んで、別れる時は手切れ金を払ってスッパリ縁を切って、お嬢様とか有名人の奥さんをもらうんだ。
〝理解〟して気持ちが冷めた私は、上手に張り巡らされた罠に掛かった自分が情けなくて堪らなくなった。
結局、こじらせお一人様はこうなるんだ。
傷付いているのは私なのに、急に声のトーンを低くした慎也が脅すように言ってくる。
「……そうだって言ったらどうなんだよ。俺と付き合うのを〝前向きに検討〟してたんじゃないのか? さっき言ったばかりの事を反故にするのか?」
急に慎也の声のトーンが低くなった。
ギクリとして後ろを振り向くと、慎也が底冷えした目で私を見つめている。
怒らせた――のか分からない。
でも、私だって遊ばれるって分かって付き合うほど暇じゃない。
「そっ、それは……。前向きに検討するけど……。でも、正樹、……さん、が混じるなんて、この部屋に一緒に住んでいるなら……」
「正樹でいいよ。あ、そうだ。名刺渡そうか」
ペントハウスはメゾネットになっていて、二階に上がる階段は二箇所あった。
覚えている限り、慎也と入ったベッドは、部屋に入って左側の階段から上がった場所にあった。
今のベッドは右手に壁がある。
二階部分はコの字型のフロアがある中心が吹き抜けになっていて、首を巡らせると反対側に恐らく最初に使っただろうベッドがあった。
「……ベッド、移動したの?」
「そう。俺のベッドはグチャグチャになったからね。シーツは取り替えたけど、また優美を移動させるより、このまま正樹のベッドで寝たほうがいいと思って」
「……お気遣い、ありがとう……」
二階はつや消しの黒い床になっていて、角にあるソファセットや照明はシンプルながらモダンなデザインだ。
それぞれのベッドの中間には、ブティックのように服が綺麗に陳列されたコーナーがある。
体型が似ているから、服を共有しているんだろうか。
戻って来た正樹は、私に「はい」と名刺を手渡した。
「ご丁寧にありがとうございます。私も名刺を……」
そう言ってバッグを探そうとするが、「いいよ」と正樹に言われる。
「弟んトコの営業部の折原優美ちゃん。前から話は聞いてたから知ってるよ」
「弟!?」
素っ頓狂な声を上げた私は、慌てて名刺を見る。
――え?
そこには『久賀城ホールディングス 代表取締役副社長 COO』と書かれてある。
はぁ……?
え……?
久賀城ホールディングスと言えば、ホテルや旅館、温泉旅館に旅行会社を手がけている大企業だ。
ぼんやりとした顔で正樹を見ると、彼は悪戯が成功したという顔で無邪気に笑う。
「仕事しやすいように都内にあちこち家を持っていてね。ここはメインで使っている家の一つなんだ。他にも国内海外、別荘や家は持っているけど」
とんでもない世界に、私はただ呆然とするしかない。
「……慎也……は……、苗字……」
「慎也は親父の後妻の子。僕の母さんは子供の頃に亡くなったんだ」
「あ……、それは……」
「全然気にしてないから、優美ちゃんが気遣う事はないの」
子供に言い含めるように言って、正樹は私の頭をポンポンと撫でてくる。
その左手の薬指に、指輪の痕があるのを見つけてしまった。
思わず食い入るように見ていたからか、正樹が笑う。
「あはっ、気付いた? 結婚してたんだ」
「……してた?」
「うん、してた。離婚したけどね」
軽く言われ、どう反応したらいいのか分からなくなる。
「それで……弟と同居?」
「まぁ、色々便利だし。服もサイズが近いから共有できる」
今度は後ろから私を抱き締めて、慎也が答えてきた。
その〝共有〟という言葉が心の奥にズンと響き、急に落ち込んでしまった。
「…………女性も二人で〝共有〟して遊んでるの?」
――バカみたい。
こんなハイスペックイケメンが、私みたいなのを相手にする訳がない。
ハプバーにも日常的に行っていて、イケメンで女性にモテるからセックスの相手に困っていない。
都内に沢山家があるから、どこに女性を連れ込んでもバレずにうまくやっているんだろう。
すぐに着替えを手配する手際の良さも納得できた。
きっと遊ぶだけ遊んで、別れる時は手切れ金を払ってスッパリ縁を切って、お嬢様とか有名人の奥さんをもらうんだ。
〝理解〟して気持ちが冷めた私は、上手に張り巡らされた罠に掛かった自分が情けなくて堪らなくなった。
結局、こじらせお一人様はこうなるんだ。
傷付いているのは私なのに、急に声のトーンを低くした慎也が脅すように言ってくる。
「……そうだって言ったらどうなんだよ。俺と付き合うのを〝前向きに検討〟してたんじゃないのか? さっき言ったばかりの事を反故にするのか?」
急に慎也の声のトーンが低くなった。
ギクリとして後ろを振り向くと、慎也が底冷えした目で私を見つめている。
怒らせた――のか分からない。
でも、私だって遊ばれるって分かって付き合うほど暇じゃない。
23
お気に入りに追加
1,818
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる