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ハプバー~同居開始 編
課長に『休みます』って言ってよ
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「いっ、いま何時!?」
「あと十分で八時半かな?」
「はち……っ」
ザァッと血の気が引く音がした気がした。
服、――は、一旦家に帰って着替えないと。メイクはしてる暇がないから、顔を洗って下地とクッションファンデと眉毛だけ何とかして……。
物凄い勢いで出勤する手立てを考えている私に、慎也がポンとスマホを手渡してきた。
「課長に『休みます』って言ってよ」
「えっ?」
まさかセックスが理由で会社を休むなんて! と慎也を睨んだが、指摘された。
「気付いてない? 今すっごい声してるよ」
「え? あ、あー……」
言われた通り、昨日大声で喘ぎすぎたせいか、声がガサガサだ。
「俺はさっき課長に連絡しておいたよ。優美も早い内に言っておいたら?」
「でっ、でも……っ、二人一緒に休むなんて……」
絶対変に思われる。
特に、浜崎くん辺りに知られたら、なんて言われるか……。
「だって俺と優美がプライベートで親しくしてるなんて、誰も思わないだろ。実際、急接近したのは一昨日の話だし。優美は風邪を引いただけ」
うろたえていると、背後から正樹が頬にキスをしてきた。
「僕の事、知りたくない? 丁度、出張から帰ってきたばっかりで休みだから、三人でゆっくり過ごそうよ」
確かに、正樹が何者かは知りたい気持ちはある。
でも……。
「優美、今月有給使った?」
「…………分かった」
了承すると、慎也はどこに置いていたのか私のスマホを手渡してきた。
……あ、ご丁寧に電源切ってある。
一体、この人たち何なんだろう。
もしかしたら、とんでもないのに目を付けられたかもしれない。
「電話するから、二人とも絶対に声出さないでね。黙っててよ」
念を押すと、二人は大人しく頷いた。
私は少し緊張して、課長に電話を掛ける。
きっちりした人なので、この時間にはすでに出勤して掃除をしているはずだ。
課長がきちんとしているので、営業部全体が「上もやるなら自分も」と、部署内はとても整理整頓されている。
飲み会で聞いた話では柔道部出身で、きちんと掃除するのが身についているらしい。
コール音が数度鳴ったあと『はい』と課長の声がした。
「おはようございます。折原です」
『うわっ、折原さん? 凄い声してるね』
やっぱり凄い声なんだ……。
「あ、あの……。風邪を引いてしまいまして……。今日大丈夫ならお休みを頂きたいと思います」
『あー……と、今日はどうしてもという業務はないから、いいよ。ゆっくり休んで。昨日、夕方から土砂降りだったから、それに当たった? 折原さん、いっつも走り込みしてるみたいだし』
「そ、そうなんです」
『俺もジョギングしてるけど、雨天は無理しないほうがいいよ。じゃあね』
「はい。失礼いたします」
呆然としたまま通話を終え、思わず溜め息を漏らす。
「よし、休み確定! ゆっくりしよう!」
「あ、あの。服を……」
「優美ちゃんが寝てる間、楽そうな部屋着を仕入れたんだけど、それ着ない?」
正樹がベッドから下りて、寝室スペースの向こう側にあるソファセットから、スウェットのマキシワンピースを手に取り広げる。
「どう? 好き?」
「あ、はい。楽そうで…………、え?」
気のせいでなければ、ワンピースの胸元や袖のラインに、高級ハイブランドのロゴがついている気がする。
「もっ……、もしかしてそれ……」
ブランドの名前を口にすると、正樹は特に気にしていない表情で「え? そうだけど」と頷く。
「嫌い? 他に気に入りのブランドある?」
「いっ、いやっ、そうじゃなくて! こんな状況で、一回しか着なさそうなのに、そんなブランドの服着られません!」
「優美ー」
今度は後ろから慎也が抱き締めてくる。
「あと十分で八時半かな?」
「はち……っ」
ザァッと血の気が引く音がした気がした。
服、――は、一旦家に帰って着替えないと。メイクはしてる暇がないから、顔を洗って下地とクッションファンデと眉毛だけ何とかして……。
物凄い勢いで出勤する手立てを考えている私に、慎也がポンとスマホを手渡してきた。
「課長に『休みます』って言ってよ」
「えっ?」
まさかセックスが理由で会社を休むなんて! と慎也を睨んだが、指摘された。
「気付いてない? 今すっごい声してるよ」
「え? あ、あー……」
言われた通り、昨日大声で喘ぎすぎたせいか、声がガサガサだ。
「俺はさっき課長に連絡しておいたよ。優美も早い内に言っておいたら?」
「でっ、でも……っ、二人一緒に休むなんて……」
絶対変に思われる。
特に、浜崎くん辺りに知られたら、なんて言われるか……。
「だって俺と優美がプライベートで親しくしてるなんて、誰も思わないだろ。実際、急接近したのは一昨日の話だし。優美は風邪を引いただけ」
うろたえていると、背後から正樹が頬にキスをしてきた。
「僕の事、知りたくない? 丁度、出張から帰ってきたばっかりで休みだから、三人でゆっくり過ごそうよ」
確かに、正樹が何者かは知りたい気持ちはある。
でも……。
「優美、今月有給使った?」
「…………分かった」
了承すると、慎也はどこに置いていたのか私のスマホを手渡してきた。
……あ、ご丁寧に電源切ってある。
一体、この人たち何なんだろう。
もしかしたら、とんでもないのに目を付けられたかもしれない。
「電話するから、二人とも絶対に声出さないでね。黙っててよ」
念を押すと、二人は大人しく頷いた。
私は少し緊張して、課長に電話を掛ける。
きっちりした人なので、この時間にはすでに出勤して掃除をしているはずだ。
課長がきちんとしているので、営業部全体が「上もやるなら自分も」と、部署内はとても整理整頓されている。
飲み会で聞いた話では柔道部出身で、きちんと掃除するのが身についているらしい。
コール音が数度鳴ったあと『はい』と課長の声がした。
「おはようございます。折原です」
『うわっ、折原さん? 凄い声してるね』
やっぱり凄い声なんだ……。
「あ、あの……。風邪を引いてしまいまして……。今日大丈夫ならお休みを頂きたいと思います」
『あー……と、今日はどうしてもという業務はないから、いいよ。ゆっくり休んで。昨日、夕方から土砂降りだったから、それに当たった? 折原さん、いっつも走り込みしてるみたいだし』
「そ、そうなんです」
『俺もジョギングしてるけど、雨天は無理しないほうがいいよ。じゃあね』
「はい。失礼いたします」
呆然としたまま通話を終え、思わず溜め息を漏らす。
「よし、休み確定! ゆっくりしよう!」
「あ、あの。服を……」
「優美ちゃんが寝てる間、楽そうな部屋着を仕入れたんだけど、それ着ない?」
正樹がベッドから下りて、寝室スペースの向こう側にあるソファセットから、スウェットのマキシワンピースを手に取り広げる。
「どう? 好き?」
「あ、はい。楽そうで…………、え?」
気のせいでなければ、ワンピースの胸元や袖のラインに、高級ハイブランドのロゴがついている気がする。
「もっ……、もしかしてそれ……」
ブランドの名前を口にすると、正樹は特に気にしていない表情で「え? そうだけど」と頷く。
「嫌い? 他に気に入りのブランドある?」
「いっ、いやっ、そうじゃなくて! こんな状況で、一回しか着なさそうなのに、そんなブランドの服着られません!」
「優美ー」
今度は後ろから慎也が抱き締めてくる。
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