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ハプバー~同居開始 編
付き合いたいです
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「私、優美の友達の円城寺文香と言います。とりあえず私が代理で用件だけ聞きますね」
受け答えをしたあと、文香はスマホをタップして電話をスピーカーにする。
『折原さん、どうしていますか?』
岬くんの声が聞こえ、私はドキッとする。
文香は私の方を見て「しー」と指を唇の前に立て、黙っているよう指示する。
「いま、お手洗いに行っているんです。昨日の事は彼女から聞いていて、気まずいと言っていたので勝手に電話に出ました。ごめんなさい」
『いえ、電話が通じて安心しました』
「ていうか、あの子にハプバーを教えたの私なんです。だからあの子が日常的にああいう所に行く訳じゃないっていう事は、承知してくださいね? 見た目に似合わずまじめで繊細なところもある子なので、勘違いをされたら困るんです」
うう、文香。心の友よ……。
私は手を合わせて文香を拝む。
彼女は私に対して「まぁまぁ」というジェスチャーを取り、会話を続ける。
「優美は途中で怖くなって店を出たって言っていましたけど、それについて怒ってはいませんよね? あそこは女性優位の場所ですし、途中で帰られて怒る権利はないはずです」
『それについてはご心配なく。というか、折原さんを傷付けていないか心配だったんです』
思っていたのとまったく逆の返事があり、私は息を呑む。
『それに、思っていたよりずっと折原さんが可愛くて……。今まで仕事のできる、尊敬する先輩と思っていました。憧れてはいたのですが、そういう目では見てもらえなくて……。だから昨日の事は運命だと思っていたんです。あわよくば個人的にお付き合いできないかと思って……』
……嘘でしょ……?
まさかハプバーから始まる恋があるなんて、と思い、私はどう反応したらいいのか分からなくなる。
文香は私の様子を見てニヤリと笑う。
「それって、優美とエッチして具合が良かったから、付き合いたいって事?」
『そう見えて仕方ありませんが、まったく違います。いま言ったように、折原さんの事はずっと前から気になっていました。そして昨日彼女を抱いて、思っていた……というか、本当はこういう人なんじゃないかっていう予想が当たりました。強がっている仮面が外れて、中身はとても可愛い人で……。この人と付き合って、もっと素の顔を見てみたいって思ったんです』
文香はそれまでの面白がっていた顔とは打って変わって、「見てなさい」という表情で私を見る。
「優美は途中で帰ったから、君を傷付けて怒らせたんじゃないかって心配してたけど。男ってエッチに関する事について、プライドへし折られたら態度が酷くなる事もあるでしょ? あの子の元彼もそうだったし」
文香の口調が、遠慮のないものになっていく。
『浜崎さんの事でしたら、彼がクズだっただけです。自分が勃たなかった恥ずかしさを女性のせいにして、不名誉な噂を流すって相当タチが悪いですよ。折原さんは被害者で、何も悪くありません。それに、俺はこんな事で怒ったりしません。最初にも言いましたが、慣れてなさそうな彼女を傷付けなかったか心配だったんです』
スピーカーから聞こえる岬くんの言葉を聞き、私はテーブルに頬杖をついて溜め息をつく。
ハプバーに来るぐらいだから、遊び慣れている人だと思っていた。
どうしてあの店に来たかは置いておいて、彼が思っていたよりずっとまともな人だっていう事は、理解しなきゃ。
王子様的に扱われているからって、軽いパリピと思うのは偏見だ。
私が自棄になってハプバーに行ったように、岬くんだって事情があって店に来たかもしれない。
……というか、文香だって面白がって行った訳だしね。
SMプレイに興味がない人が、社会勉強の一つとしてSMバーに行く事もあるし、ゲイバーで面白いママと話をしたいっていうのも、そう。
興味関心が、行動原理になる事だってある。
私は勇気を出して口を開いた。
「……岬くん、折原です。ずっと電話を無視していてごめんなさい。怒っていると思っていたの。明日から、会社でまた新しい悪口が広まるんじゃないかって思って、とても怖かった」
『折原さん、やっぱりいたんですね。話してくれて良かった』
岬くんはいつも通りの素直な部下という様子で返事をする。
『会社で悪口を言うなんて、浜崎さんみたいな事は決してしないので安心してください。明日からもいつものようにお願いします』
「分かった。ありがとう」
『あと、さっき言っていたのも本当で、俺、折原さんと付き合いたいです。今フリーなら考えてくれませんか?』
「えっ……」
ハプバーでのお楽しみからいきなりお付き合いときて、私はたじろぐ。
受け答えをしたあと、文香はスマホをタップして電話をスピーカーにする。
『折原さん、どうしていますか?』
岬くんの声が聞こえ、私はドキッとする。
文香は私の方を見て「しー」と指を唇の前に立て、黙っているよう指示する。
「いま、お手洗いに行っているんです。昨日の事は彼女から聞いていて、気まずいと言っていたので勝手に電話に出ました。ごめんなさい」
『いえ、電話が通じて安心しました』
「ていうか、あの子にハプバーを教えたの私なんです。だからあの子が日常的にああいう所に行く訳じゃないっていう事は、承知してくださいね? 見た目に似合わずまじめで繊細なところもある子なので、勘違いをされたら困るんです」
うう、文香。心の友よ……。
私は手を合わせて文香を拝む。
彼女は私に対して「まぁまぁ」というジェスチャーを取り、会話を続ける。
「優美は途中で怖くなって店を出たって言っていましたけど、それについて怒ってはいませんよね? あそこは女性優位の場所ですし、途中で帰られて怒る権利はないはずです」
『それについてはご心配なく。というか、折原さんを傷付けていないか心配だったんです』
思っていたのとまったく逆の返事があり、私は息を呑む。
『それに、思っていたよりずっと折原さんが可愛くて……。今まで仕事のできる、尊敬する先輩と思っていました。憧れてはいたのですが、そういう目では見てもらえなくて……。だから昨日の事は運命だと思っていたんです。あわよくば個人的にお付き合いできないかと思って……』
……嘘でしょ……?
まさかハプバーから始まる恋があるなんて、と思い、私はどう反応したらいいのか分からなくなる。
文香は私の様子を見てニヤリと笑う。
「それって、優美とエッチして具合が良かったから、付き合いたいって事?」
『そう見えて仕方ありませんが、まったく違います。いま言ったように、折原さんの事はずっと前から気になっていました。そして昨日彼女を抱いて、思っていた……というか、本当はこういう人なんじゃないかっていう予想が当たりました。強がっている仮面が外れて、中身はとても可愛い人で……。この人と付き合って、もっと素の顔を見てみたいって思ったんです』
文香はそれまでの面白がっていた顔とは打って変わって、「見てなさい」という表情で私を見る。
「優美は途中で帰ったから、君を傷付けて怒らせたんじゃないかって心配してたけど。男ってエッチに関する事について、プライドへし折られたら態度が酷くなる事もあるでしょ? あの子の元彼もそうだったし」
文香の口調が、遠慮のないものになっていく。
『浜崎さんの事でしたら、彼がクズだっただけです。自分が勃たなかった恥ずかしさを女性のせいにして、不名誉な噂を流すって相当タチが悪いですよ。折原さんは被害者で、何も悪くありません。それに、俺はこんな事で怒ったりしません。最初にも言いましたが、慣れてなさそうな彼女を傷付けなかったか心配だったんです』
スピーカーから聞こえる岬くんの言葉を聞き、私はテーブルに頬杖をついて溜め息をつく。
ハプバーに来るぐらいだから、遊び慣れている人だと思っていた。
どうしてあの店に来たかは置いておいて、彼が思っていたよりずっとまともな人だっていう事は、理解しなきゃ。
王子様的に扱われているからって、軽いパリピと思うのは偏見だ。
私が自棄になってハプバーに行ったように、岬くんだって事情があって店に来たかもしれない。
……というか、文香だって面白がって行った訳だしね。
SMプレイに興味がない人が、社会勉強の一つとしてSMバーに行く事もあるし、ゲイバーで面白いママと話をしたいっていうのも、そう。
興味関心が、行動原理になる事だってある。
私は勇気を出して口を開いた。
「……岬くん、折原です。ずっと電話を無視していてごめんなさい。怒っていると思っていたの。明日から、会社でまた新しい悪口が広まるんじゃないかって思って、とても怖かった」
『折原さん、やっぱりいたんですね。話してくれて良かった』
岬くんはいつも通りの素直な部下という様子で返事をする。
『会社で悪口を言うなんて、浜崎さんみたいな事は決してしないので安心してください。明日からもいつものようにお願いします』
「分かった。ありがとう」
『あと、さっき言っていたのも本当で、俺、折原さんと付き合いたいです。今フリーなら考えてくれませんか?』
「えっ……」
ハプバーでのお楽しみからいきなりお付き合いときて、私はたじろぐ。
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