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馴れ初め編/序章 ミステイク・オブ・ゴッド
01.こんな人など知らない(R-18)
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とある会社内にある人気の無い資料室。その最奥で響くのは、仕事場には不釣り合いな淫靡な水音。
室内にいるのは、男と女がそれぞれ一人。
「ちょ、ちょっと! 何やってるんですか、早く離れ……っ、ぁ」
「ん……ふふ。口では嫌がってるのに、ここはどんどん濡れてくるわよ。んんっ……舐めても……ちゅ……舐めても、追いつかない」
スーツのスカートが捲れ、露わになる太もも。そして膝下まで下げられたストッキングと下着が、嫌でも視界に入った。
こんな状態で座り込むまいと、千優は壁に背を預け両足を震わせる。その頬は赤く染まり、わずかに開いた口からは乱れた吐息が幾度となく吐き出される。
その足元にうずくまるのは、彼女の同僚の男性社員、國枝。
何故。どうして。頭の中を駆け巡る大きな戸惑いは、千優のなかにある正常な判断力を奪っていく。
そんな状況でも、彼女は目の前にある男の頭を掴み、どうにか自分から引き離そうと必死になった。
しかし、不規則にやってくる強い快感の波に力が抜けてしまう。確固たる意思を抱いたにもかかわらず、彼女の四肢は思い通りに動かない。
中途半端に脱がされた下着が枷となり、余計に身体の動きを鈍らせる。
スカートから覗く太ももを撫でる自分より大きな手。自分のものとは明らかに違う熱が触れた箇所から、どんどん力が抜けていく。
それはまるで、ただでさえ生まれたての小鹿のように震える脚から、根こそぎ何かを吸い取っているようだった。
今、自分ができる精一杯の抵抗をしなければいけない。その一心で、眼下にある頭をポカポカ叩いてみるが、効果はほぼゼロ。
「ほんと、やめ……ふぁ、あ……ひゃっ」
自分でもあまり見たことが無い場所を舐め、時に溢れ出す愛液に吸いつく男の行動に目眩を起こす。
――頭がおかしくなりそうで、ほんの少し恐怖を感じた。
どうして國枝は、自分の足元に跪き、止めどなく流れる蜜をすするのだろう。
何故自分の体は、これまで感じたことのない熱を発し、この場から動こうとしないのだろう。
逃げたい、逃げなければと、この状況からの逃亡を望んでいるはずなのに、身体が動かない。
壁や床から目には見えない蔦が出現し、千優の全身に絡まり拘束するかのように。
「はぁ、あ、あ……ひっ、あぁ!」
脳内に浮遊するたくさんの疑問符に結びつく答えを求め、彷徨い続けた思考が白く染まっていく。
力尽きズルズルと壁伝いに座りこめば、剥き出しになった尻がひんやりとした床に触れる。
普段幾人もの靴が踏みつけるそこに、容赦なく素肌が押しつけられた。
自分は今、なんてはしたない恰好をしているのだろう。
真っ白になった頭の片隅に浮かぶのは、どこか客観的に己を分析する小さな思考。
今なら逃げられるかもしれない。わずかに残った思考空間に小さく希望の扉が開く。
しかし、千優はそれに気づきながらも、すぐに立ち上がり、身だしなみを整えようとはしない。いや、出来なかった。
頬から発せられる熱と、激しく脈打つ心音を感じながら、小さく短い呼吸をくり返す。それが、今彼女のできる精一杯だ。
「……そんな誘うような顔するなって、我慢出来なくなる」
気怠さを感じながら顔をあげると、こちらを見下ろす男の姿が見えた。
その口元に付着した蜜を、彼は驚くほど厭らしく舐め取っていく。
一際赤く色づいた舌が生き物のように蠢く様子に、不思議と目が離せず、加速する呼吸と心音を感じながら見つめる。
(この人……誰?)
乱れた呼吸を整えようと無意識に上下する両肩。
千優は、無意識に小首を傾げたまま、こちらを見下ろす男の姿を観察する。
ただでさえ混乱する脳内をかき乱す存在に、ドクドクと鼓動が彼女に警鐘を鳴らした。
室内にいるのは、男と女がそれぞれ一人。
「ちょ、ちょっと! 何やってるんですか、早く離れ……っ、ぁ」
「ん……ふふ。口では嫌がってるのに、ここはどんどん濡れてくるわよ。んんっ……舐めても……ちゅ……舐めても、追いつかない」
スーツのスカートが捲れ、露わになる太もも。そして膝下まで下げられたストッキングと下着が、嫌でも視界に入った。
こんな状態で座り込むまいと、千優は壁に背を預け両足を震わせる。その頬は赤く染まり、わずかに開いた口からは乱れた吐息が幾度となく吐き出される。
その足元にうずくまるのは、彼女の同僚の男性社員、國枝。
何故。どうして。頭の中を駆け巡る大きな戸惑いは、千優のなかにある正常な判断力を奪っていく。
そんな状況でも、彼女は目の前にある男の頭を掴み、どうにか自分から引き離そうと必死になった。
しかし、不規則にやってくる強い快感の波に力が抜けてしまう。確固たる意思を抱いたにもかかわらず、彼女の四肢は思い通りに動かない。
中途半端に脱がされた下着が枷となり、余計に身体の動きを鈍らせる。
スカートから覗く太ももを撫でる自分より大きな手。自分のものとは明らかに違う熱が触れた箇所から、どんどん力が抜けていく。
それはまるで、ただでさえ生まれたての小鹿のように震える脚から、根こそぎ何かを吸い取っているようだった。
今、自分ができる精一杯の抵抗をしなければいけない。その一心で、眼下にある頭をポカポカ叩いてみるが、効果はほぼゼロ。
「ほんと、やめ……ふぁ、あ……ひゃっ」
自分でもあまり見たことが無い場所を舐め、時に溢れ出す愛液に吸いつく男の行動に目眩を起こす。
――頭がおかしくなりそうで、ほんの少し恐怖を感じた。
どうして國枝は、自分の足元に跪き、止めどなく流れる蜜をすするのだろう。
何故自分の体は、これまで感じたことのない熱を発し、この場から動こうとしないのだろう。
逃げたい、逃げなければと、この状況からの逃亡を望んでいるはずなのに、身体が動かない。
壁や床から目には見えない蔦が出現し、千優の全身に絡まり拘束するかのように。
「はぁ、あ、あ……ひっ、あぁ!」
脳内に浮遊するたくさんの疑問符に結びつく答えを求め、彷徨い続けた思考が白く染まっていく。
力尽きズルズルと壁伝いに座りこめば、剥き出しになった尻がひんやりとした床に触れる。
普段幾人もの靴が踏みつけるそこに、容赦なく素肌が押しつけられた。
自分は今、なんてはしたない恰好をしているのだろう。
真っ白になった頭の片隅に浮かぶのは、どこか客観的に己を分析する小さな思考。
今なら逃げられるかもしれない。わずかに残った思考空間に小さく希望の扉が開く。
しかし、千優はそれに気づきながらも、すぐに立ち上がり、身だしなみを整えようとはしない。いや、出来なかった。
頬から発せられる熱と、激しく脈打つ心音を感じながら、小さく短い呼吸をくり返す。それが、今彼女のできる精一杯だ。
「……そんな誘うような顔するなって、我慢出来なくなる」
気怠さを感じながら顔をあげると、こちらを見下ろす男の姿が見えた。
その口元に付着した蜜を、彼は驚くほど厭らしく舐め取っていく。
一際赤く色づいた舌が生き物のように蠢く様子に、不思議と目が離せず、加速する呼吸と心音を感じながら見つめる。
(この人……誰?)
乱れた呼吸を整えようと無意識に上下する両肩。
千優は、無意識に小首を傾げたまま、こちらを見下ろす男の姿を観察する。
ただでさえ混乱する脳内をかき乱す存在に、ドクドクと鼓動が彼女に警鐘を鳴らした。
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