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番外編
知らなくても良いこと1☆/光志視点
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施設で迎える六日目の早朝。
浅い眠りから覚めた光志が重い瞼を押し上げると、すぐ近くに愛しい恋人の寝顔があった。
「……っ!」
視界を埋め尽くす可愛いと愛しさの暴力に、大きく目を見開いた瞬間息が止まる。
(ああ……そうか)
いつもより腕の中にいる美奈穂の体温を感じやすいと思った光志は、スルスルと昨夜自分が悪ノリして暴走したことを思い出した。
セックスがどういうものか、大雑把な概要くらいしかわかっていない恋人を相手に、随分無茶をしたものだと、後悔の念にかられる。
だがそれ以上に、美奈穂の可愛さと妖艶さ、そして健気に恋人を求める姿をこれでもかと堪能できたので、一時の後悔は瞬く間に消え去っていった。
時間を知りたくなった光志は、ノロノロと身体を起こし、ベッドサイドに置いたはずのスマホへ手を伸ばす。
美奈穂の設定したアラームを聞いた記憶がないため、通常よりは早い時間なのはわかる。
おもむろに掴んだ自分のスマホを確認すれば、思った通り早朝と言うにはまだ早い時刻だ。
顔をあげ窓の方を向くと、遮光カーテンが目に付く。きっと窓の向こうに広がる景色もまだ薄暗いに違いない。
「…………」
再度視線を手元へ戻した光志は、スマホを元あった場所に戻しながら自分の隣で眠り続ける恋人を見つめる。
今からもう一度眠っても構わないが、二度寝には少々時間が足りない。
しかも、起き上がったせいですっかり意識も覚醒してしまい、余計眠るのは難しそうだ。
(まず軽くシャワーでも浴びるか。あと……)
美奈穂が目覚めるまであと数十分。その間に自分がすべきことを頭の中で整理した光志は、グッと両腕を天井へ突き上げるように背伸びをする。
「……ちゅっ」
そして、身体に入った力をゆっくり抜くと、流れる様な動作で幸せそうに眠る恋人の頬へ唇を軽く押しつけた。
二十分後。シャワーを浴びて着替えを済ませた光志は、昨夜使ったゴムを入れ厳重に縛った小さなごみ袋と、さっきまでベッドに敷いていたシーツを持ち、部屋を出て廊下をうろつく。
昨夜の件で汚れたものを片付けようと思って部屋を出たものの、どこへ持って行けばいいのかわからず、彼は困り果てていた。
「別館の洗濯かごの場所は聞いてたけど、こっちの洗濯ものはどうすりゃいいんだよ……」
自分以外人影が見えない廊下で、独り言をぼやきながら、ひとまず階段を降りようと歩き出す。
眠る美奈穂を起こさないようにはぎ取ったシーツをチラリと見つめながら、光志はノロノロと歩いていく。
裸のまま熟睡する恋人が風邪を引かないように、掛け布団はしっかりかけてきたし、空調の温度も気持ち高めに設定してきた。
自分が居なくてもとりあえず安心だが、気持ち的には一刻も早く部屋に戻りたい。
そのためには、手の中にあるゴミと洗濯ものをどうにかしなくてはいけないと、階段を下りる足音がこれまでより少し速くなった。
施設で過ごす間は、清掃担当のスタッフが、日中のうちに各部屋をまわって洗濯ものの回収とヘッドメイキングをする。
その作業対象に、参加者と裏方スタッフという差は無いらしい。
昼間、光志が美奈穂と一緒に使っている部屋で曲作りに励んでいると、掃除担当のスタッフが訪ねてくることはよくある。
毎回部屋をおとずれるスタッフに洗濯ものを渡すと、翌日、別の掃除担当のスタッフが洗いあがったものを届けてくれるのだ。
ホテルに滞在しているかのような対応が続いたため、光志は自分の手で洗濯ものを収集場所へ持って行くのは初めてだった。
洗濯をするにしても、ごみ置き場にしても、とりあえず一階だろうと思い階段を下りた光志。
「ん? どうしたんだ、こんな朝早くにそんなモン抱えて」
そのまま、左右どちらに進むべきか迷ってキョロキョロ辺りを見回していた時、ここ数日でどうにか顔を覚えた裏方スタッフの声が聞こえ、渡りに船だと内心ガッツポーズをしたい気分になった。
浅い眠りから覚めた光志が重い瞼を押し上げると、すぐ近くに愛しい恋人の寝顔があった。
「……っ!」
視界を埋め尽くす可愛いと愛しさの暴力に、大きく目を見開いた瞬間息が止まる。
(ああ……そうか)
いつもより腕の中にいる美奈穂の体温を感じやすいと思った光志は、スルスルと昨夜自分が悪ノリして暴走したことを思い出した。
セックスがどういうものか、大雑把な概要くらいしかわかっていない恋人を相手に、随分無茶をしたものだと、後悔の念にかられる。
だがそれ以上に、美奈穂の可愛さと妖艶さ、そして健気に恋人を求める姿をこれでもかと堪能できたので、一時の後悔は瞬く間に消え去っていった。
時間を知りたくなった光志は、ノロノロと身体を起こし、ベッドサイドに置いたはずのスマホへ手を伸ばす。
美奈穂の設定したアラームを聞いた記憶がないため、通常よりは早い時間なのはわかる。
おもむろに掴んだ自分のスマホを確認すれば、思った通り早朝と言うにはまだ早い時刻だ。
顔をあげ窓の方を向くと、遮光カーテンが目に付く。きっと窓の向こうに広がる景色もまだ薄暗いに違いない。
「…………」
再度視線を手元へ戻した光志は、スマホを元あった場所に戻しながら自分の隣で眠り続ける恋人を見つめる。
今からもう一度眠っても構わないが、二度寝には少々時間が足りない。
しかも、起き上がったせいですっかり意識も覚醒してしまい、余計眠るのは難しそうだ。
(まず軽くシャワーでも浴びるか。あと……)
美奈穂が目覚めるまであと数十分。その間に自分がすべきことを頭の中で整理した光志は、グッと両腕を天井へ突き上げるように背伸びをする。
「……ちゅっ」
そして、身体に入った力をゆっくり抜くと、流れる様な動作で幸せそうに眠る恋人の頬へ唇を軽く押しつけた。
二十分後。シャワーを浴びて着替えを済ませた光志は、昨夜使ったゴムを入れ厳重に縛った小さなごみ袋と、さっきまでベッドに敷いていたシーツを持ち、部屋を出て廊下をうろつく。
昨夜の件で汚れたものを片付けようと思って部屋を出たものの、どこへ持って行けばいいのかわからず、彼は困り果てていた。
「別館の洗濯かごの場所は聞いてたけど、こっちの洗濯ものはどうすりゃいいんだよ……」
自分以外人影が見えない廊下で、独り言をぼやきながら、ひとまず階段を降りようと歩き出す。
眠る美奈穂を起こさないようにはぎ取ったシーツをチラリと見つめながら、光志はノロノロと歩いていく。
裸のまま熟睡する恋人が風邪を引かないように、掛け布団はしっかりかけてきたし、空調の温度も気持ち高めに設定してきた。
自分が居なくてもとりあえず安心だが、気持ち的には一刻も早く部屋に戻りたい。
そのためには、手の中にあるゴミと洗濯ものをどうにかしなくてはいけないと、階段を下りる足音がこれまでより少し速くなった。
施設で過ごす間は、清掃担当のスタッフが、日中のうちに各部屋をまわって洗濯ものの回収とヘッドメイキングをする。
その作業対象に、参加者と裏方スタッフという差は無いらしい。
昼間、光志が美奈穂と一緒に使っている部屋で曲作りに励んでいると、掃除担当のスタッフが訪ねてくることはよくある。
毎回部屋をおとずれるスタッフに洗濯ものを渡すと、翌日、別の掃除担当のスタッフが洗いあがったものを届けてくれるのだ。
ホテルに滞在しているかのような対応が続いたため、光志は自分の手で洗濯ものを収集場所へ持って行くのは初めてだった。
洗濯をするにしても、ごみ置き場にしても、とりあえず一階だろうと思い階段を下りた光志。
「ん? どうしたんだ、こんな朝早くにそんなモン抱えて」
そのまま、左右どちらに進むべきか迷ってキョロキョロ辺りを見回していた時、ここ数日でどうにか顔を覚えた裏方スタッフの声が聞こえ、渡りに船だと内心ガッツポーズをしたい気分になった。
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