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第二章
15:綺麗なお空と二頭の愛馬
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「わあ……ガヴェイン様、とても綺麗なお空です!」
快晴に恵まれた週末。朝早くから起き出したメリッサは、主寝室の窓から見る空に興奮していた。
――週末は、みんなで湖へ行こう。
先日、ガヴェインから提案された計画に、メリッサは最初戸惑ってばかりだった。
しかし、週末が近づくにつれ、日に日に彼女の中で困惑は小さくなっていき、代わりに違う感情が膨らんだ。
故郷の屋敷で何度も読んだ小説。その一ページに描かれた小さな絵でしか見たことのない湖というものを、実際に自分の目で見られるという期待と興奮だった。
「今日は絶好のピクニック日和になりそうだ。良かったな、メリッサ」
空に輝く太陽。それに劣らない眩しさを見せる妻の満面の笑みに、ガヴェインは無意識に目を細める。
彼は知っていた。申し訳ないと遠慮がちな反応を見せながら、こっそり妻が指折り数えて今日という日を待ち望んでいたことを。
メリッサは、昂る気持ちを抑えきれず、少し離れた場所に立つ夫の元へ駆け寄る。
小走りで近づく勢いに任せて、彼の胸元へ飛び込めば、力強い両腕と厚い胸板に身体を受け止められた。
勢い余って、その胸元に押しつけてしまった顔を離し、恐る恐る目線を上げる。
目を細めて笑う愛する人を間近で見たメリッサは、途端に恥ずかしさが募りガヴェインから目を背ける。
もう二十二歳だと言うのに、昨夜から子供の様にはしゃいでいる。その自覚は多少あったものの、興奮する気持ちが先走るから困りものだ。
まるで幼子を見守るような夫の表情を見て、改めて自分の痴態を突き付けられた気がした。
いくら身内だけの外出と言え、屋敷から一歩出れば、自分はダラットリ侯爵の者。
その意識を常に持っていなくてはいけない。
なんて、冷静になれと自分に言い聞かせるメリッサ。
「……あっ」
だが、妻の心の機微を知らないとばかりに、彼女の華奢な腰に回っていた手の片方が、スッと頬を撫でた。
そのまま指はメリッサの顎へかかり、彼女の意思と関係なくクイっと顎を掴まれる。
「それと……俺のことは呼び捨てにしろと言っただろう? 少しずつでいいから、慣れてくれ」
そして、メリッサが言葉を発するより先に、命令にも似た懇願と共に小さく柔らかな唇は奪われる。
スルリと口内へ侵入してきた熱い舌によって、喉元まで出かかった言葉と平常心は、あっという間に絡めとられていった。
別々に食べていたら時間が勿体ないと、全員一緒に食卓に着いて朝食を食べる。
その後、メリッサはエルバの手を借りて外出の準備に勤しんだ。
とは言うものの、基本的にすべてエルバ任せなので、メリッサは人形のごとく姿勢や表情を崩さないよう努力するだけ。
下手に自分でやろうものなら、余計な手間が増えかねないからだ。
メリッサの支度が整った頃。見計らったかのようなタイミングで、エルバと交代すると言うガヴェインがメリッサの私室へやってきた。
ガヴェインの言葉を聞いたエルバは、主二人に一礼すると、自分の支度をするために部屋を出ていく。
そんな彼女を見送ったメリッサは、ガヴェインに手を引かれ、一足先に屋敷の玄関へ向かった。
「……っ!」
二階にある私室を出て階段を下り、玄関ホールへ向かう。
そして、両開きになっている玄関の扉開けて外へ出ると、屋敷の前に見慣れない馬車が横付けされていた。
いつもは、玄関から真っ直ぐ門まで続く道が見える。
遮るものなど無いささやかな空間を、今日は二頭の馬と大きな馬車が塞いでいた。
「そう言えば……メリッサは、この馬車に乗るのは初めてか?」
「は、はい。ここへ来た日は、国王様が用意してくださった馬車に皆で乗って来ましたから」
隣から聞こえる問いに、メリッサは慌てて振り向き、ついコクコクと頷いてしまう。
アザット国へ入国した日の移動は、国王が手配してくれた乗り合い用の馬車だった。
そこにダナン国からやってきた女性全員が乗り込み、それぞれ嫁ぎ先の屋敷前で下ろされたのだ。
「っと。ガヴェイン様、こっちは準備オーケーですぜ」
数か月前のことを、ほんの少し懐かしく思っていれば、馬車の向こうから、庭師のエドガーがひょっこり顔を出す。
ガヴェインはその声に頷き「近くで見てみるか?」と、メリッサに声をかけてくれた。
「……綺麗」
夫に手を引かれ馬車のそばへ近づいたメリッサの視線は、エドガーの手によって馬車に繋がれた二頭の馬に釘付けになる。
初めて見る馬の迫力と美しさに感激し、好奇心に身を任せ、ついあちこちに視線が向く。
艶やかな黒い毛並みを持つ馬と、同じく艶のある赤茶色の毛並みを持つ馬は、どちらもとても大人しい。
自分たちを興味深そうに見つめる女性の出現にも、暴れたりせず、行儀よくその場で待機してくれていた。
「ああ、そうか。メリッサ様は、近くで馬を見るの初めてなんですね」
「……ええ。お屋敷の裏手に馬小屋があるのは、知っていたの。遠目で何度も見ていたから」
「……? 近くには、行かなかったのか?」
感激するメリッサの様子を見たエドガーが、すぐにその意味を悟ったらしく声をかけてくる。
彼の言葉に頷くメリッサの言葉に、隣にたたずむガヴェインが首を傾げる。
「危ないから、近づかない方がいいと……カインが」
「なーにが危ねえだよ。自分と旦那様の愛馬だろうに」
馬たちへ向けていた視線を夫に戻し、メリッサは苦笑交じりに返答する。
その声を聞けば、すぐ近くで呆れかえったエドガーのため息が零れた。
庭師の口から飛び出した言葉に驚いたメリッサは、数回瞬きをしながら改めてガヴェインを見上げる。
「こっちの黒い毛並みの馬が、俺の馬だ。名前はレイナウト。隣の赤茶色のは、カインの馬で、名前はジョット。どちらも雄で、二頭とも騎士団の厩舎から引き取った馬なんだ」
「引き取った、ですか?」
メリッサのそばを離れたガヴェインが、二頭の鼻筋を優しく撫でながら説明を始める。
その言葉に耳を傾けようとしたものの、気になる言葉が聞こえ、メリッサはつい説明を遮ってしまう。
「ああ。元は騎士団で、それぞれ新人たちが乗る馬として連れて来られたんだ。だけど……こいつらもミカエルと同じように、騎士団での任務が肌に合わないらしい。俺たちがそれぞれ引き取った時は、相当な暴れ馬でな」
そう言葉を続けるガヴェインは、どこか昔を懐かしむように目を細めた。
「そんな暴れん坊共も、俺とカインの調教のお陰ですっかり大人しくなったんだ。どうだ? 少し触ってみるか?」
「えっ!?」
途中で話を遮ったことは咎められず、ガヴェインの説明は続く。
そんな夫の横顔を見つめていれば、名案とばかりにガヴェインがこちらを向いた。
その口から聞こえた言葉はあまりにも唐突で、驚くあまり、思わず少々大きな声が口から飛び出した。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だ。怖がっていると、逆に気持ちが伝わって、馬たちの機嫌を損ねるぞ」
ガヴェインの提案から数分。
メリッサは、背後に回った夫に肩を優しく掴まれ、二頭の前へ近づくよう促される。
わずかに震える彼女の両手のひらには、半分に割られたニンジンが乗っていた。
エルバは自分の身支度中、ロベルトはピクニック用に作った料理の最終確認、そしてカインは数時間無人になる屋敷の見回りと忙しいらしい。
この場に全員が揃うまで、まだ時間があるからと、ガヴェインはメリッサに馬の餌付け体験をさせようとしていた。
「……っ」
ドクドクと高鳴る鼓動を感じながら、緊張のあまりゴクリと喉が鳴る。
エドガーが庭仕事で鍛えた怪力で半分に折ったニンジンの片方を、まずはどちらかの馬へ食べさせるのが、メリッサに与えられた任務である。
(ま、まずは……レイナウト様に)
「レイナウト、様。ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません。私、ガヴェイン様の妻になりました、メリッサと申します。こ……今後共、よろしくお願いいたします」
メリッサは、人間を相手にした時と同じ挨拶をしながら、小さくお辞儀をし、震える両手をレイナウトの前へ差し出した。
「いや、メリッサ様……そいつ、ただの馬っすから。懇切丁寧な挨拶なんてしなくても……」
「エドガー、静かにしろ! メリッサの勇姿に集中させてくれ!」
「は、はあ……」
小さな身体で、自分より大きな馬を前に震える妻の姿を、ガヴェインは固唾をのんで見守りだす。
そしてエドガーはその後ろに控え、半分呆れ顔で自分が仕える主二人の様子を見守る。
目の前にたたずむ馬たちに集中しきったメリッサの耳には、少々やかましい背後のやり取りなど届かず、彼女はジッと、眼前にたたずむ黒馬を見つめていた。
――パクッ。
それからしばし、メリッサとレイナウトはお互いを見つめ合う。
その場にいる全員に緊張が走る中、レイナウトは承知したと言いたげに色白い手のひらに乗ったニンジンを口で掴み食べ始めた。
「……っ!」
ニンジンが手のひらから消える瞬間、レイナウトの口先が肌に当たる。
そのぬくもりに、メリッサは言葉では言い表せない感動を覚え、思わず全身が震えた。
「ブルルッ」
その様子を、これまで大人しく見守っていたジョットが、不意に声をあげる。
まるで「俺にも寄こせ」と言わんばかりの鳴き声に、メリッサは慌てて後ろを振り向き、ガヴェインから残りのニンジンを受け取った。
快晴に恵まれた週末。朝早くから起き出したメリッサは、主寝室の窓から見る空に興奮していた。
――週末は、みんなで湖へ行こう。
先日、ガヴェインから提案された計画に、メリッサは最初戸惑ってばかりだった。
しかし、週末が近づくにつれ、日に日に彼女の中で困惑は小さくなっていき、代わりに違う感情が膨らんだ。
故郷の屋敷で何度も読んだ小説。その一ページに描かれた小さな絵でしか見たことのない湖というものを、実際に自分の目で見られるという期待と興奮だった。
「今日は絶好のピクニック日和になりそうだ。良かったな、メリッサ」
空に輝く太陽。それに劣らない眩しさを見せる妻の満面の笑みに、ガヴェインは無意識に目を細める。
彼は知っていた。申し訳ないと遠慮がちな反応を見せながら、こっそり妻が指折り数えて今日という日を待ち望んでいたことを。
メリッサは、昂る気持ちを抑えきれず、少し離れた場所に立つ夫の元へ駆け寄る。
小走りで近づく勢いに任せて、彼の胸元へ飛び込めば、力強い両腕と厚い胸板に身体を受け止められた。
勢い余って、その胸元に押しつけてしまった顔を離し、恐る恐る目線を上げる。
目を細めて笑う愛する人を間近で見たメリッサは、途端に恥ずかしさが募りガヴェインから目を背ける。
もう二十二歳だと言うのに、昨夜から子供の様にはしゃいでいる。その自覚は多少あったものの、興奮する気持ちが先走るから困りものだ。
まるで幼子を見守るような夫の表情を見て、改めて自分の痴態を突き付けられた気がした。
いくら身内だけの外出と言え、屋敷から一歩出れば、自分はダラットリ侯爵の者。
その意識を常に持っていなくてはいけない。
なんて、冷静になれと自分に言い聞かせるメリッサ。
「……あっ」
だが、妻の心の機微を知らないとばかりに、彼女の華奢な腰に回っていた手の片方が、スッと頬を撫でた。
そのまま指はメリッサの顎へかかり、彼女の意思と関係なくクイっと顎を掴まれる。
「それと……俺のことは呼び捨てにしろと言っただろう? 少しずつでいいから、慣れてくれ」
そして、メリッサが言葉を発するより先に、命令にも似た懇願と共に小さく柔らかな唇は奪われる。
スルリと口内へ侵入してきた熱い舌によって、喉元まで出かかった言葉と平常心は、あっという間に絡めとられていった。
別々に食べていたら時間が勿体ないと、全員一緒に食卓に着いて朝食を食べる。
その後、メリッサはエルバの手を借りて外出の準備に勤しんだ。
とは言うものの、基本的にすべてエルバ任せなので、メリッサは人形のごとく姿勢や表情を崩さないよう努力するだけ。
下手に自分でやろうものなら、余計な手間が増えかねないからだ。
メリッサの支度が整った頃。見計らったかのようなタイミングで、エルバと交代すると言うガヴェインがメリッサの私室へやってきた。
ガヴェインの言葉を聞いたエルバは、主二人に一礼すると、自分の支度をするために部屋を出ていく。
そんな彼女を見送ったメリッサは、ガヴェインに手を引かれ、一足先に屋敷の玄関へ向かった。
「……っ!」
二階にある私室を出て階段を下り、玄関ホールへ向かう。
そして、両開きになっている玄関の扉開けて外へ出ると、屋敷の前に見慣れない馬車が横付けされていた。
いつもは、玄関から真っ直ぐ門まで続く道が見える。
遮るものなど無いささやかな空間を、今日は二頭の馬と大きな馬車が塞いでいた。
「そう言えば……メリッサは、この馬車に乗るのは初めてか?」
「は、はい。ここへ来た日は、国王様が用意してくださった馬車に皆で乗って来ましたから」
隣から聞こえる問いに、メリッサは慌てて振り向き、ついコクコクと頷いてしまう。
アザット国へ入国した日の移動は、国王が手配してくれた乗り合い用の馬車だった。
そこにダナン国からやってきた女性全員が乗り込み、それぞれ嫁ぎ先の屋敷前で下ろされたのだ。
「っと。ガヴェイン様、こっちは準備オーケーですぜ」
数か月前のことを、ほんの少し懐かしく思っていれば、馬車の向こうから、庭師のエドガーがひょっこり顔を出す。
ガヴェインはその声に頷き「近くで見てみるか?」と、メリッサに声をかけてくれた。
「……綺麗」
夫に手を引かれ馬車のそばへ近づいたメリッサの視線は、エドガーの手によって馬車に繋がれた二頭の馬に釘付けになる。
初めて見る馬の迫力と美しさに感激し、好奇心に身を任せ、ついあちこちに視線が向く。
艶やかな黒い毛並みを持つ馬と、同じく艶のある赤茶色の毛並みを持つ馬は、どちらもとても大人しい。
自分たちを興味深そうに見つめる女性の出現にも、暴れたりせず、行儀よくその場で待機してくれていた。
「ああ、そうか。メリッサ様は、近くで馬を見るの初めてなんですね」
「……ええ。お屋敷の裏手に馬小屋があるのは、知っていたの。遠目で何度も見ていたから」
「……? 近くには、行かなかったのか?」
感激するメリッサの様子を見たエドガーが、すぐにその意味を悟ったらしく声をかけてくる。
彼の言葉に頷くメリッサの言葉に、隣にたたずむガヴェインが首を傾げる。
「危ないから、近づかない方がいいと……カインが」
「なーにが危ねえだよ。自分と旦那様の愛馬だろうに」
馬たちへ向けていた視線を夫に戻し、メリッサは苦笑交じりに返答する。
その声を聞けば、すぐ近くで呆れかえったエドガーのため息が零れた。
庭師の口から飛び出した言葉に驚いたメリッサは、数回瞬きをしながら改めてガヴェインを見上げる。
「こっちの黒い毛並みの馬が、俺の馬だ。名前はレイナウト。隣の赤茶色のは、カインの馬で、名前はジョット。どちらも雄で、二頭とも騎士団の厩舎から引き取った馬なんだ」
「引き取った、ですか?」
メリッサのそばを離れたガヴェインが、二頭の鼻筋を優しく撫でながら説明を始める。
その言葉に耳を傾けようとしたものの、気になる言葉が聞こえ、メリッサはつい説明を遮ってしまう。
「ああ。元は騎士団で、それぞれ新人たちが乗る馬として連れて来られたんだ。だけど……こいつらもミカエルと同じように、騎士団での任務が肌に合わないらしい。俺たちがそれぞれ引き取った時は、相当な暴れ馬でな」
そう言葉を続けるガヴェインは、どこか昔を懐かしむように目を細めた。
「そんな暴れん坊共も、俺とカインの調教のお陰ですっかり大人しくなったんだ。どうだ? 少し触ってみるか?」
「えっ!?」
途中で話を遮ったことは咎められず、ガヴェインの説明は続く。
そんな夫の横顔を見つめていれば、名案とばかりにガヴェインがこちらを向いた。
その口から聞こえた言葉はあまりにも唐突で、驚くあまり、思わず少々大きな声が口から飛び出した。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だ。怖がっていると、逆に気持ちが伝わって、馬たちの機嫌を損ねるぞ」
ガヴェインの提案から数分。
メリッサは、背後に回った夫に肩を優しく掴まれ、二頭の前へ近づくよう促される。
わずかに震える彼女の両手のひらには、半分に割られたニンジンが乗っていた。
エルバは自分の身支度中、ロベルトはピクニック用に作った料理の最終確認、そしてカインは数時間無人になる屋敷の見回りと忙しいらしい。
この場に全員が揃うまで、まだ時間があるからと、ガヴェインはメリッサに馬の餌付け体験をさせようとしていた。
「……っ」
ドクドクと高鳴る鼓動を感じながら、緊張のあまりゴクリと喉が鳴る。
エドガーが庭仕事で鍛えた怪力で半分に折ったニンジンの片方を、まずはどちらかの馬へ食べさせるのが、メリッサに与えられた任務である。
(ま、まずは……レイナウト様に)
「レイナウト、様。ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ございません。私、ガヴェイン様の妻になりました、メリッサと申します。こ……今後共、よろしくお願いいたします」
メリッサは、人間を相手にした時と同じ挨拶をしながら、小さくお辞儀をし、震える両手をレイナウトの前へ差し出した。
「いや、メリッサ様……そいつ、ただの馬っすから。懇切丁寧な挨拶なんてしなくても……」
「エドガー、静かにしろ! メリッサの勇姿に集中させてくれ!」
「は、はあ……」
小さな身体で、自分より大きな馬を前に震える妻の姿を、ガヴェインは固唾をのんで見守りだす。
そしてエドガーはその後ろに控え、半分呆れ顔で自分が仕える主二人の様子を見守る。
目の前にたたずむ馬たちに集中しきったメリッサの耳には、少々やかましい背後のやり取りなど届かず、彼女はジッと、眼前にたたずむ黒馬を見つめていた。
――パクッ。
それからしばし、メリッサとレイナウトはお互いを見つめ合う。
その場にいる全員に緊張が走る中、レイナウトは承知したと言いたげに色白い手のひらに乗ったニンジンを口で掴み食べ始めた。
「……っ!」
ニンジンが手のひらから消える瞬間、レイナウトの口先が肌に当たる。
そのぬくもりに、メリッサは言葉では言い表せない感動を覚え、思わず全身が震えた。
「ブルルッ」
その様子を、これまで大人しく見守っていたジョットが、不意に声をあげる。
まるで「俺にも寄こせ」と言わんばかりの鳴き声に、メリッサは慌てて後ろを振り向き、ガヴェインから残りのニンジンを受け取った。
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