リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜

ゆずき

文字の大きさ
上 下
227 / 252

226話 知りたい気持ち

しおりを挟む
 王宮に滞在している間に季節はすっかり秋になり、中庭の花たちの顔ぶれも変わってしまったようだ。私がジェフェリーさんと一緒に植えたサルビアとひまわりがあった場所には別の花が植えられていた。ちょっとだけ物悲しい気持ちになったけれど、花壇を美しく保つには季節ごとの入れ替えが大切なのだとジェフェリーさんは言っていた。仕方のないことだ。
 ふた月なんて短いと思っていたのに、こうして植物の移り変わりを目にすると明確に時の流れを感じるのだった。

「王宮の庭園も凄いけど、姫さんちの庭も気合い入ってるよな」

「ありがとうございます。私もお気に入りなんですよ。祖母が庭にかなり拘りを持った人だったそうで、昔大掛かりな改装を行ったんです。綺麗に保たれているのは管理をしてくれている庭師のおかげですけどね」

 お婆様も庭いじりがお好きだったらしい。あまり体が強くなかったから頻繁にはできなかったけど、自分で苗を植えて育てたりなどして楽しんでいたんだって。

「姫さんの祖母っていうとアルティナ様だね。肖像画見たことあるけど、姫さんそっくりなんだよな。髪も目の色もおんなじでさ」

「姉と弟は両親に似ているのに私だけ不思議ですよね。でもルーイ様がこういうのは隔世遺伝といっておかしなことではないと教えてくれました」

 フィオナ姉様ははっきりとお母様似だし、エミールは顔立ちはお父様に似ていて、髪や瞳の色はお母様と一緒だ。金色と茶色の中に混ざる銀色……昔は自分の髪と目があまり好きではなかった。みんなで並ぶと私のいるところだけぽっかりと浮いているように見えたから……
 お婆様は私が物心付く前に亡くなっている。直接的な交流がなかったせいか、似ていると言われてもあまりピンとこなかった。髪だって……周囲がいくら美しいと誉めてくれても、両親と同じ色が良かったと何度も思ったものだ。
 今では多少成長したので、親と違うからといって拗ねたりはしない。むしろ、私とそっくりだったというお婆様のことがもっと知りたくなった。私が持っているお婆様ゆかりのものは形見のブローチのみ。既に亡くなられているので、思い出話を聞くことしかできないのが残念でならない。

「親よりも祖父母に似るっていうのは割とあることだからね。姫さんの場合はそれがアルティナ様だからインパクト強いってだけで」

「本当に……おふたりとも奇跡のようにお綺麗で惚れ惚れしてしまいます。御髪の色も珍しいですが、やはり高貴な青紫の瞳にひときわ惹きつけられてしまいますね」

「瞳の色は王族の証みたいなもんだからな。あっ……ということは、アルティナ様も魔法の力を持ってたんだな。あの方が魔法を使っていたって話は聞いたことないけど、姫さんその辺詳しく知ってる?」

「いいえ。私が魔法について学んだのはルーイ様にお会いしてからなんです。それまでは自分自身に力があることすらも知りませんでした」

 魔力の有無が瞳に現れることもルーイ様から教わった。魔法使いのルーツだってこの時初めて知ったのだ。魔法は極限られた人間にしか扱えない特殊な能力ゆえ、その成り立ちを正確に把握している人は少ない。レオンですら知らないことが多々あると言っていた。私は運良くルーイ様から手ほどきを受けることができたので、力を引き出すことにも成功したのだった。

「お婆様も私と同じだったのかもしれません。力はあってもそれを使うことができなかったのではないでしょうか」

「つくづく魔法ってのは難儀な能力だなって思うよ。外国の連中は身を削りながら使ってるっていうしね。それほどの価値があるって主張されたら反論できないけど、ぽんぽん使ってるボスの異端ぶりが際立つな」

『ごめんなさい、ルイスさん』心の中で彼に謝罪した。私は嘘を吐いている。魔法を使うことができないと。レオンと比べたら私の魔法なんて子供の遊びのようなものだけれど、それでも私にとっては自分の身を守る切り札……とっておきなのだった。

「私、魔法のことをただ漠然と神秘的で凄い力って感じで憧れていたんです。でも王宮であんなことがあって……凄いだけじゃなく、使う人によってはとても恐ろしいものになってしまうのだと認識を改めさせられました」

「リズ……」

「そして、同時にもっと理解を深めようとも思いました。ジェフェリーさんの件にしても、あの時私にもう少し魔法についての知識があれば、彼を巻き込まずにすんだかもしれません」

 リズはジェフェリーさんを告発したことをまだ引きずっているようだ。ジェフェリーさんには直接謝罪をして許してもらったのだと聞いたけど、罪悪感を完全に消すのは難しいのだろう。

「あのタイミングでリズが言ってくれなかったら、ジェフェリーさんの扱いはもっと悪いものになっていたかもしれないよ。たらればを語り出したらキリが無い。大事なのは後悔しない選択をすることだ。リズは申し訳ないと思ってはいても、間違ったことをしたとは思っていないだろう?」

 不意を突かれたようにリズは目を丸くした。ジェフェリーさんのことは彼女が散々悩んで出した決断だった。それに、私にもしっかりと相談してくれた。ひとりで勝手な行動を取ったわけではないのだ。

「はい。クレハ様を守るために必要なことだと判断致しました」

「だったらもう気持ちを切り替えなきゃ。姫さんを守ること……それがリズの揺るぎない信念でしょ。それに反していないのなら俯く必要はない」

「……はいっ!! ありがとうございます、ルイスさん。なんだか目の前が明るく開けたような気がします」

 リズの顔から憂いが消えてすっきりとした表情になっている。ルイスさんの言葉が彼女の心に響いたようだ。最初は庭の話をしていたはずだったんだけど、すっかり内容が変わってしまったな。
 いつの間にか歩みを止めて会話に没頭していた。リズが元気になったからいいけど、本来の目的も忘れてはいけない。ジェフェリーさんを探さなくては……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

訳ありな家庭教師と公爵の執着

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝名門ブライアン公爵家の美貌の当主ギルバートに雇われることになった一人の家庭教師(ガヴァネス)リディア。きっちりと衣装を着こなし、隙のない身形の家庭教師リディアは素顔を隠し、秘密にしたい過去をも隠す。おまけに美貌の公爵ギルバートには目もくれず、五歳になる公爵令嬢エヴリンの家庭教師としての態度を崩さない。過去に悲惨なめに遭った今の家庭教師リディアは、愛など求めない。そんなリディアに公爵ギルバートの方が興味を抱き……。 ※設定などは独自の世界観でご都合主義。ハピエン🩷  ※稚拙ながらも投稿初日(2025.1.26)からHOTランキングに入れて頂き、ありがとうございます🙂 最高で26位(2025.2.4)。 ※断罪回に残酷な描写がある為、苦手な方はご注意下さい。 ※只今、不定期更新中📝

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、142話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(11/21更新)

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

悪妃の愛娘

りーさん
恋愛
 私の名前はリリー。五歳のかわいい盛りの王女である。私は、前世の記憶を持っていて、父子家庭で育ったからか、母親には特別な思いがあった。  その心残りからか、転生を果たした私は、母親の王妃にそれはもう可愛がられている。  そんなある日、そんな母が父である国王に怒鳴られていて、泣いているのを見たときに、私は誓った。私がお母さまを幸せにして見せると!  いろいろ調べてみると、母親が悪妃と呼ばれていたり、腹違いの弟妹がひどい扱いを受けていたりと、お城は問題だらけ!  こうなったら、私が全部解決してみせるといろいろやっていたら、なんでか父親に構われだした。  あんたなんてどうでもいいからほっといてくれ!

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか⁉~

景華
恋愛
「シリウス・カルバン……むにゃむにゃ……私と結婚、してぇ……むにゃむにゃ」 「……は?」 そんな寝言のせいで、すれ違っていた二人が結婚することに!? 精霊が作りし国ローザニア王国。 セレンシア・ピエラ伯爵令嬢には、国家機密扱いとなるほどの秘密があった。 【寝言の強制実行】。 彼女の寝言で発せられた言葉は絶対だ。 精霊の加護を持つ王太子ですらパシリに使ってしまうほどの強制力。 そしてそんな【寝言の強制実行】のせいで結婚してしまった相手は、彼女の幼馴染で公爵令息にして副騎士団長のシリウス・カルバン。 セレンシアを元々愛してしまったがゆえに彼女の前でだけクールに装ってしまうようになっていたシリウスは、この結婚を機に自分の本当の思いを素直に出していくことを決意し自分の思うがままに溺愛しはじめるが、セレンシアはそれを寝言のせいでおかしくなっているのだと勘違いをしたまま。 それどころか、自分の寝言のせいで結婚してしまっては申し訳ないからと、3年間白い結婚をして離縁しようとまで言い出す始末。 自分の思いを信じてもらえないシリウスは、彼女の【寝言の強制実行】の力を消し去るため、どこかにいるであろう魔法使いを探し出す──!! 大人になるにつれて離れてしまった心と身体の距離が少しずつ縮まって、絡まった糸が解けていく。 すれ違っていた二人の両片思い勘違い恋愛ファンタジー!!

処理中です...