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215話 7人目(2)
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シルヴィアの登場で殿下との会話が中断されてしまった。俺の疑問に殿下は何と答えて下さるつもりだったのだろう。またしてもため息がこぼれそうになる。いまだに終わる気配のない雑談をシルヴィアは続けているのだ。こんな廊下でどれだけ殿下を足止めする気なんだ。空気扱い継続中である俺もいい加減見過ごせなくなってきたので、シルヴィアを諭そうとしたのだが……
「おすすめの本なら俺よりもクレハに紹介してやってくれないか? あの子も最近本を読むようになったそうだから」
殿下はシルヴィアと読書について語り合っていた。最近読んだ本や、おすすめはどれだとか……。側から聞いてると他愛もない話だったのだが、まさかここでクレハ様の名前が飛び出すとは想像していなかった。それはシルヴィアも同じだったようで、にこやかだった表情がみるみる変化していく。
「えっと……ジェムラート家のご令嬢に?」
「そう、あの子と会っていないのはもうシルヴィアだけだ。最後で気まずいなら付き添ってやるから、顔だけでも見せてやってくれ。俺の婚約者なんだぞ」
殿下に言われて思い出した。『とまり木』のヤツらでクレハ様に挨拶をしていないのはシルヴィアだけなんだ。ユリウスには雑貨屋で遭遇したとレナードから聞いた。あいつがちゃんと挨拶と呼べるようなものをしたのかは疑わしいが……それでもクレハ様との顔合わせは終了したことになる。
容姿や行動の派手さで兄弟の方が悪目立ちしてるけど、ユリウスとシルヴィアも大概問題児だ。でも殿下が側近に求めているのは自身に対する忠誠心と人並み優れた能力。素行の良さなど二の次だった。
「うーん……まだちょっと無理かもです。レオンさま、ヴィーが恥ずかしがり屋なの知ってるでしょ?」
「クレハも人見知りで社交の場を苦手としてる。最初はお互いぎこちなくても読書好きという共通点もあるし、すぐに仲良くなれるさ」
「でも、ヴィーの心の準備が……」
殿下の頼みなら即断即決なシルヴィアが愚図ついていた。彼女は恥ずかしがり屋というより殿下以外の人間に興味が無いから、その他の交流に気が乗らないだけではないだろうか。レナードとルイスもクレハ様と会う前はどうでもよさそうに好き勝手言ってたっけ。それが今はどうだ。殿下がやきもきするくらい甲斐甲斐しく世話を焼いている。あれは本当に驚いた。
兄弟の前例があるから、シルヴィアもクレハ様と親しくなれると殿下はお考えなのだろうか。共通の趣味を持ち出して場を和ませるという提案には賛成だが、そんなに上手くいくのか。
挨拶だけでも早くしろと思っていたけど、いざその時になるとクレハ様に失礼なことをしないか不安になる。殿下が付き添うと言って下さっているのに、シルヴィアは煮え切らない返事を繰り返すばかりなのだ。
「仕方ないなぁ……じゃあ、また今度にするか。クレハは明日には王宮を離れるし、お前も気まぐれでいつこっちに来るか分からないのに。次の機会はいつになることやらだ」
「公爵家のご令嬢、王宮から出ていくのですか?」
こいつ……嬉しそうにしやがって。クレハ様が王宮を離れると殿下が口にした途端、曇った空が晴れていくかのように表情が明るくなる。変わり身の速さに呆れてしまう。この顔で確信した。やはりシルヴィアは恥ずかしがっているのではない。クレハ様に会いたくなくて避けているのだ。
「俺と一緒にジェムラート邸に行くんだよ。事件の調査のためにね。シルヴィアにもいつ協力を頼むか分からないから、連絡だけはつくようにしておいてくれ」
「……分かりました」
殿下も同行するのだと分かると、またシルヴィアの表情が陰る。一喜一憂……如実に顔に現れているな。殿下の言葉で感情が乱高下している。
これまで殿下に一番近しい同世代の異性はシルヴィアだった。信頼のおける部下としてはもちろんのこと、時には軽口を言い合う友人のような存在。けれど今、殿下が最も大切にしておられるのはクレハ様だ。まさかシルヴィアは、それが気に入らなくてこのような態度を取っているのではないだろうな。そうだとしたら的外れもいいところ。シルヴィアとクレハ様では立場が全く違うじゃないか。比べる由もない。対抗意識を持つことさえ烏滸がましいのに。
「どうやらシルヴィアはクレハにあまり会いたくないようだね」
ようやくシルヴィアから解放され、俺と殿下は再び廊下を歩いていた。先ほどのシルヴィアの態度に殿下は苦笑いを浮かべている。分かりやす過ぎたから誰だって気付くよな。シルヴィアは殿下がクレハ様の名前を出すたびに話題を逸らそうとしていた。表面上は穏やかに会話は続いていたが、自分の婚約者に対してこのような扱いをする部下のことを殿下はどう思われただろう。
「レナードとルイスが良い感じだったから、この流れを維持できるかもと期待したけど現実は厳しいな」
「殿下、差し出がましいかもしれませんが、シルヴィアにはもう少しきつく注意をすべきではないでしょうか? あのような振る舞いは殿下とクレハ様に対して不敬です」
殿下の足が止まった。それに合わせて俺も歩みを止める。どうしたのだろう……俺の進言が気に障ったのだろうか。沈黙が続く。この状況にいくらか焦りを感じ始めたころ、殿下はようやく口を開いて下さった。
「クライヴも知っているだろう。シルヴィアは……いや、俺の隊の者たちは皆俺個人に忠義立てをしている。いくらクレハが婚約者という立場であっても関係ないんだよ。その他大勢と同じなんだ」
知っている。だから兄弟の変わりように驚いたのだ。それでも、その仕えている主が大切にしているお方なんだぞ。最低限の敬意を払うのが当然ではないのか。
「このくらいの反応は想定内だ。隊員間の交流すらろくにしないシルヴィアだからな。命令違反をしたわけでもないし、残念だとは思うが叱りつけるほどではないよ。これから変わっていく可能性もあるから長い目で見てやってくれ」
「……はい」
殿下は残念だと口にしつつも、あまり気に留めていないようだ。クレハ様と直接関わる機会が多いのは護衛を勤めているクラヴェル兄弟だから、シルヴィアについてはそこまで深刻に捉える必要はないということか。腹の中がモヤモヤする。シルヴィアのクレハ様に対する反応には明確に悪意を感じたというのに……
せめて殿下が俺のように怒ってくれていれば良かった。そうすればいくらか溜飲は下がっただろう。期待が外れてしまったせいで、俺はこの消化不良を起こしているような不快感を抱えたまま仕事に戻るハメになってしまったのだった。
「おすすめの本なら俺よりもクレハに紹介してやってくれないか? あの子も最近本を読むようになったそうだから」
殿下はシルヴィアと読書について語り合っていた。最近読んだ本や、おすすめはどれだとか……。側から聞いてると他愛もない話だったのだが、まさかここでクレハ様の名前が飛び出すとは想像していなかった。それはシルヴィアも同じだったようで、にこやかだった表情がみるみる変化していく。
「えっと……ジェムラート家のご令嬢に?」
「そう、あの子と会っていないのはもうシルヴィアだけだ。最後で気まずいなら付き添ってやるから、顔だけでも見せてやってくれ。俺の婚約者なんだぞ」
殿下に言われて思い出した。『とまり木』のヤツらでクレハ様に挨拶をしていないのはシルヴィアだけなんだ。ユリウスには雑貨屋で遭遇したとレナードから聞いた。あいつがちゃんと挨拶と呼べるようなものをしたのかは疑わしいが……それでもクレハ様との顔合わせは終了したことになる。
容姿や行動の派手さで兄弟の方が悪目立ちしてるけど、ユリウスとシルヴィアも大概問題児だ。でも殿下が側近に求めているのは自身に対する忠誠心と人並み優れた能力。素行の良さなど二の次だった。
「うーん……まだちょっと無理かもです。レオンさま、ヴィーが恥ずかしがり屋なの知ってるでしょ?」
「クレハも人見知りで社交の場を苦手としてる。最初はお互いぎこちなくても読書好きという共通点もあるし、すぐに仲良くなれるさ」
「でも、ヴィーの心の準備が……」
殿下の頼みなら即断即決なシルヴィアが愚図ついていた。彼女は恥ずかしがり屋というより殿下以外の人間に興味が無いから、その他の交流に気が乗らないだけではないだろうか。レナードとルイスもクレハ様と会う前はどうでもよさそうに好き勝手言ってたっけ。それが今はどうだ。殿下がやきもきするくらい甲斐甲斐しく世話を焼いている。あれは本当に驚いた。
兄弟の前例があるから、シルヴィアもクレハ様と親しくなれると殿下はお考えなのだろうか。共通の趣味を持ち出して場を和ませるという提案には賛成だが、そんなに上手くいくのか。
挨拶だけでも早くしろと思っていたけど、いざその時になるとクレハ様に失礼なことをしないか不安になる。殿下が付き添うと言って下さっているのに、シルヴィアは煮え切らない返事を繰り返すばかりなのだ。
「仕方ないなぁ……じゃあ、また今度にするか。クレハは明日には王宮を離れるし、お前も気まぐれでいつこっちに来るか分からないのに。次の機会はいつになることやらだ」
「公爵家のご令嬢、王宮から出ていくのですか?」
こいつ……嬉しそうにしやがって。クレハ様が王宮を離れると殿下が口にした途端、曇った空が晴れていくかのように表情が明るくなる。変わり身の速さに呆れてしまう。この顔で確信した。やはりシルヴィアは恥ずかしがっているのではない。クレハ様に会いたくなくて避けているのだ。
「俺と一緒にジェムラート邸に行くんだよ。事件の調査のためにね。シルヴィアにもいつ協力を頼むか分からないから、連絡だけはつくようにしておいてくれ」
「……分かりました」
殿下も同行するのだと分かると、またシルヴィアの表情が陰る。一喜一憂……如実に顔に現れているな。殿下の言葉で感情が乱高下している。
これまで殿下に一番近しい同世代の異性はシルヴィアだった。信頼のおける部下としてはもちろんのこと、時には軽口を言い合う友人のような存在。けれど今、殿下が最も大切にしておられるのはクレハ様だ。まさかシルヴィアは、それが気に入らなくてこのような態度を取っているのではないだろうな。そうだとしたら的外れもいいところ。シルヴィアとクレハ様では立場が全く違うじゃないか。比べる由もない。対抗意識を持つことさえ烏滸がましいのに。
「どうやらシルヴィアはクレハにあまり会いたくないようだね」
ようやくシルヴィアから解放され、俺と殿下は再び廊下を歩いていた。先ほどのシルヴィアの態度に殿下は苦笑いを浮かべている。分かりやす過ぎたから誰だって気付くよな。シルヴィアは殿下がクレハ様の名前を出すたびに話題を逸らそうとしていた。表面上は穏やかに会話は続いていたが、自分の婚約者に対してこのような扱いをする部下のことを殿下はどう思われただろう。
「レナードとルイスが良い感じだったから、この流れを維持できるかもと期待したけど現実は厳しいな」
「殿下、差し出がましいかもしれませんが、シルヴィアにはもう少しきつく注意をすべきではないでしょうか? あのような振る舞いは殿下とクレハ様に対して不敬です」
殿下の足が止まった。それに合わせて俺も歩みを止める。どうしたのだろう……俺の進言が気に障ったのだろうか。沈黙が続く。この状況にいくらか焦りを感じ始めたころ、殿下はようやく口を開いて下さった。
「クライヴも知っているだろう。シルヴィアは……いや、俺の隊の者たちは皆俺個人に忠義立てをしている。いくらクレハが婚約者という立場であっても関係ないんだよ。その他大勢と同じなんだ」
知っている。だから兄弟の変わりように驚いたのだ。それでも、その仕えている主が大切にしているお方なんだぞ。最低限の敬意を払うのが当然ではないのか。
「このくらいの反応は想定内だ。隊員間の交流すらろくにしないシルヴィアだからな。命令違反をしたわけでもないし、残念だとは思うが叱りつけるほどではないよ。これから変わっていく可能性もあるから長い目で見てやってくれ」
「……はい」
殿下は残念だと口にしつつも、あまり気に留めていないようだ。クレハ様と直接関わる機会が多いのは護衛を勤めているクラヴェル兄弟だから、シルヴィアについてはそこまで深刻に捉える必要はないということか。腹の中がモヤモヤする。シルヴィアのクレハ様に対する反応には明確に悪意を感じたというのに……
せめて殿下が俺のように怒ってくれていれば良かった。そうすればいくらか溜飲は下がっただろう。期待が外れてしまったせいで、俺はこの消化不良を起こしているような不快感を抱えたまま仕事に戻るハメになってしまったのだった。
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