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203話 予想外
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ローシュの神であるコンティレクト様が、突然コスタビューテの王宮に現れた。理由は先に予定されていた会合の日程を変更したいという旨を伝えるため、そしてレオンが昏睡状態になってしまったことに対する謝罪をするためであった。
コンティレクト様はお詫びとして、レオンに石を授けた。それは、ローシュの国宝『コンティドロップス』だ。コンティドロップスは、ローシュの魔法使いたちが魔力を得るために用いている。しかし、レオンに与えられた石は、神が自ら手を加えた特別な物で通常のコンティドロップスとは異なっていた。
「残念だけど、ローシュの神様からのプレゼントは当分使えないんだね」
「殿下が危惧なさっている事はもっともだからね。石を使用できる人間を限定したりなどの対策は必要だ」
「盛り上がっていた所に水を差したようですまないな。コンティレクト神にも申し訳ないが、実用するにあたってのルール作りを早急に行うことにしよう」
レナードさんとルイスさんはちょっぴり残念そうに石の入った袋を眺めている。レオンはそんなおふたりに対して苦笑を漏らしながら宥めていた。
コンティドロップスは魔力に反応して色を変化させる。この性質を利用して捜査に役立てよと、コンティレクト様は石をプレゼントしてくれたのだ。この石があれば『魔力感知』を使うことなく、疑惑のかかった人物を魔法使いか否か判別できる。レオンに頼り切りであった現状を打開し、彼の負担を減らせるのだ。でも、それが実現するのはもう少し後になりそう。便利過ぎる道具ゆえ、しっかりとルールを決めて管理しなくてはならない。悪用しようと企む人間に石が渡ってしまったら大変だもの。
外国の魔法使いもディセンシア家の人間たちのように、魔力を持っているという証が瞳に現れているなら分かりやすかったのにな。
「さて……石の事はこれくらいにして、ジェムラート家で起きた事件について話を戻そうか。セドリックがいるから現場はそこまで混乱してはいないだろう。要請を受けたからといって、いきなり大人数で押しかけるわけにもいかない」
レオンは淡々と皆に指示を出していく。クライヴさんには釣り堀の……スコットさんの死について引き続き調べるようにと命じた。私の家で起きた事件との関連性も含めて並行して調査を進めていくとの事だ。
「レナード、お前はこの後俺の使いとしてジェムラート邸へ向かえ。ニュアージュの魔法使いの関与が疑われている一連の事件において、正式に俺が捜査指揮を執ることになったと伝えてくれ。公爵にも協力を申し出るつもりだと……」
「分かりました」
クライヴさんとレナードさんはレオンから指示を受けると、足早に部屋から退室してしまった。残ったのは私とルイスさんだ。私はいつも通り王宮でお留守番だろうけど、ルイスさんはどうするのかな。
「ルイスはクレハに付いていてくれ。レナードが戻ってくるまでクレハは自室で待機。でも、すぐに出かけられるよう準備はしておいて」
「えっ……出かけるって」
「君も俺と一緒に行くんだよ。ジェムラート邸……君の実家に」
あまりにも予想外だった。今までの傾向的に私はお留守番一択だったはず。王宮にいるのが一番安全だという正論を掲げられ、帰宅したいという願いを何度もレオンに却下され続けてきたというのに。ここにきてどうして考えを変えたのだろうか。
「あの、私が行っても大丈夫なんですか? だってレオンはいつも王宮が安全だからここから動いちゃだめだって……」
「違うよ、姫さん。確かに王宮は兵士が大勢いるし、警備も厳しいけど……姫さんにとっての安全は王宮という場所にいることじゃないの」
レオンの発言といい、ルイスさんの説明もいまいち理解できなかった。困惑している私にルイスさんは更に続ける。
「あのね。王宮が安全なんじゃなくて、ボスのいる所が安全なんだ。特に今回のような魔法絡みの事件が起きてる真っ最中なんかはね。ボスが王宮を離れるなら、おのずと姫さんもそうなるってわけ」
「平時であればレナードとルイスのふたりを付けておけば問題無いけれど、魔法となると兄弟でも対処できない場合があるからね。コンティレクト神が主導で行っている魔法への対策とやらも、まだ実施されていない状態だ。よって、君を王宮に留まらせておくよりは俺と行動を共にするのが最も有効な警護体制となった」
「当然、俺とレナードもこれまで通り姫さんの護衛に当たるからね。はっきり言って俺たち3人の側より安全な所は他にないと思うよ」
レオンが事件の捜査で王宮を離れるから、私もそれに同行しろということだったのか。
ルイスさんは得意げに胸を張っている。彼らの強さは折り紙付きだ。決して王宮の警備が悪いわけではないけれど、軍内トップクラスの実力を誇るクラヴェル兄弟と、神と同等とまで言われるほどの力を持った魔法使いであるレオン。彼らに常に側にいてもらえるのなら怖い物無しだ。
「それに、クレハも帰宅が延期になってばかりで可哀想だったからね。お父上に会いたいだろ?」
「はい!」
お父様、ジェフェリーさん、モニカ……みんなに会えるんだ。
事件の捜査に行くというのにはしゃいでしまうのは不謹慎だ。でも、久々に家に帰れることが決まったのだ。気持ちが高揚するのを抑えるのは難しかった。
コンティレクト様はお詫びとして、レオンに石を授けた。それは、ローシュの国宝『コンティドロップス』だ。コンティドロップスは、ローシュの魔法使いたちが魔力を得るために用いている。しかし、レオンに与えられた石は、神が自ら手を加えた特別な物で通常のコンティドロップスとは異なっていた。
「残念だけど、ローシュの神様からのプレゼントは当分使えないんだね」
「殿下が危惧なさっている事はもっともだからね。石を使用できる人間を限定したりなどの対策は必要だ」
「盛り上がっていた所に水を差したようですまないな。コンティレクト神にも申し訳ないが、実用するにあたってのルール作りを早急に行うことにしよう」
レナードさんとルイスさんはちょっぴり残念そうに石の入った袋を眺めている。レオンはそんなおふたりに対して苦笑を漏らしながら宥めていた。
コンティドロップスは魔力に反応して色を変化させる。この性質を利用して捜査に役立てよと、コンティレクト様は石をプレゼントしてくれたのだ。この石があれば『魔力感知』を使うことなく、疑惑のかかった人物を魔法使いか否か判別できる。レオンに頼り切りであった現状を打開し、彼の負担を減らせるのだ。でも、それが実現するのはもう少し後になりそう。便利過ぎる道具ゆえ、しっかりとルールを決めて管理しなくてはならない。悪用しようと企む人間に石が渡ってしまったら大変だもの。
外国の魔法使いもディセンシア家の人間たちのように、魔力を持っているという証が瞳に現れているなら分かりやすかったのにな。
「さて……石の事はこれくらいにして、ジェムラート家で起きた事件について話を戻そうか。セドリックがいるから現場はそこまで混乱してはいないだろう。要請を受けたからといって、いきなり大人数で押しかけるわけにもいかない」
レオンは淡々と皆に指示を出していく。クライヴさんには釣り堀の……スコットさんの死について引き続き調べるようにと命じた。私の家で起きた事件との関連性も含めて並行して調査を進めていくとの事だ。
「レナード、お前はこの後俺の使いとしてジェムラート邸へ向かえ。ニュアージュの魔法使いの関与が疑われている一連の事件において、正式に俺が捜査指揮を執ることになったと伝えてくれ。公爵にも協力を申し出るつもりだと……」
「分かりました」
クライヴさんとレナードさんはレオンから指示を受けると、足早に部屋から退室してしまった。残ったのは私とルイスさんだ。私はいつも通り王宮でお留守番だろうけど、ルイスさんはどうするのかな。
「ルイスはクレハに付いていてくれ。レナードが戻ってくるまでクレハは自室で待機。でも、すぐに出かけられるよう準備はしておいて」
「えっ……出かけるって」
「君も俺と一緒に行くんだよ。ジェムラート邸……君の実家に」
あまりにも予想外だった。今までの傾向的に私はお留守番一択だったはず。王宮にいるのが一番安全だという正論を掲げられ、帰宅したいという願いを何度もレオンに却下され続けてきたというのに。ここにきてどうして考えを変えたのだろうか。
「あの、私が行っても大丈夫なんですか? だってレオンはいつも王宮が安全だからここから動いちゃだめだって……」
「違うよ、姫さん。確かに王宮は兵士が大勢いるし、警備も厳しいけど……姫さんにとっての安全は王宮という場所にいることじゃないの」
レオンの発言といい、ルイスさんの説明もいまいち理解できなかった。困惑している私にルイスさんは更に続ける。
「あのね。王宮が安全なんじゃなくて、ボスのいる所が安全なんだ。特に今回のような魔法絡みの事件が起きてる真っ最中なんかはね。ボスが王宮を離れるなら、おのずと姫さんもそうなるってわけ」
「平時であればレナードとルイスのふたりを付けておけば問題無いけれど、魔法となると兄弟でも対処できない場合があるからね。コンティレクト神が主導で行っている魔法への対策とやらも、まだ実施されていない状態だ。よって、君を王宮に留まらせておくよりは俺と行動を共にするのが最も有効な警護体制となった」
「当然、俺とレナードもこれまで通り姫さんの護衛に当たるからね。はっきり言って俺たち3人の側より安全な所は他にないと思うよ」
レオンが事件の捜査で王宮を離れるから、私もそれに同行しろということだったのか。
ルイスさんは得意げに胸を張っている。彼らの強さは折り紙付きだ。決して王宮の警備が悪いわけではないけれど、軍内トップクラスの実力を誇るクラヴェル兄弟と、神と同等とまで言われるほどの力を持った魔法使いであるレオン。彼らに常に側にいてもらえるのなら怖い物無しだ。
「それに、クレハも帰宅が延期になってばかりで可哀想だったからね。お父上に会いたいだろ?」
「はい!」
お父様、ジェフェリーさん、モニカ……みんなに会えるんだ。
事件の捜査に行くというのにはしゃいでしまうのは不謹慎だ。でも、久々に家に帰れることが決まったのだ。気持ちが高揚するのを抑えるのは難しかった。
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