リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜

ゆずき

文字の大きさ
上 下
201 / 250

200話 共犯(3)

しおりを挟む
「カミルは心配性だねー」

「お前が呑気過ぎるだけだ」

 エルドレッドから衝撃の告白を聞いた僕は、これから先もこいつと付き合いを続けて良いのか悩み始めていた。そういえば、短期間で二度も財布を紛失するような粗忽者であったのだ。悪い奴ではないが、どこか抜けているという印象は拭えない。

「友達になるっていうの一旦保留にしてもいい?」

「はっ!? なんで!! カミルとオレはとっくにマブダチでしょ。今更保留とか受け付けません!!」

 親友の次はマブダチか。似たようなもんだろ……統一しろ。今後の交流を考え直したいと告げると、エルドレッドは大げさなほどに狼狽えた。両手を顔の前で交差させて、バツマークを作っている。なんで僕にそこまで拘るんだ。こいつひょっとして友達いないのか。

「だってさ、お前は僕を知らないうちに共犯にしたんだよ。また同じようなことがあったらたまったもんじゃない。そんな奴と付き合っていくなんて不安しかないだろ」

「ごめんって。もうカミルの許可を取らずに勝手なことしないって約束する。だから友達やめるなんて言わないでくれよ」

 エルドレッドは必死に縋ってくる。しまいには、千里眼による盗み見がバレても、僕が関わったことは伏せてくれるとまで言い出した。こんなになるなら最初から巻き込むなよ。すっかりヘタれてしまったエルドレッドを見ていると、こちらの昂っていた感情も徐々に収まってくる。頭が冷えて落ち着きを取り戻すと、今度はこいつに仕返しをしたいという気持ちが湧いてきた。

「僕は自分が疑われたら、迷う事なくお前を売るけどね」

「えっ……そんなヒドい」

「ひどくない。当然だ」

 仕返しのつもりで言ってやったが、やはりエルドレッドにあまり効果は無いようだ。結局のところ、こいつの中にある魔法に対しての強い自信がある限り、僕が何を言っても危機感を持って貰うのは難しい。

「お前さ、コスタビューテから離れた方がいいんじゃない? バレるわけないって……そんな絶対は無いんだから」

「素っ気ない風に振る舞ってても、カミル君はオレのこと心配してくれるんだね。気持ちは嬉しいけど、今すぐは無理だ。紹介して貰った仕事の契約期間だって残ってるし、金銭的な意味でも辞めれないよ」

 旅を続けるには金が必要か。それは十分に分かっている……かと言って僕が援助するわけにもいかない。しかもこいつのことだから、そのせっかく貯めた旅費ですらまた紛失するのではという懸念もある。

「だったらさ……ルクトに腰を落ち着けている間に実家に手紙でも書きなよ。それで、誰か一緒に同行してくれる人を寄越して貰え。はっきり言うけど、お前一人旅向いてないよ」

「一応この旅は修行という名目だから、そういうのはやりたくないんだよ。護衛や付き人同伴なんて諸国漫遊になっちゃわない?」

 知らないところで野垂れ死にされても寝覚めが悪い。こいつの実家自体はそれなりに裕福そうなので、事情を話せば従者くらい付けて貰えるだろう。エルドレッドは己を高めるための旅だと主張するが、それに拘り過ぎて死んだら元も子もないじゃないか。
 最初こそ僕の提案を渋っていたエルドレッドだが、おっちょこちょいである自覚はそれなりにあった。旅費を二度も無くしたという分かりやすい失態は見て見ぬフリできなかったようだ。エルドレッドは低く唸りながら思考を巡らせていたが、突如弾かれたように声を張り上げる。

「良いこと思いついた!! カミル、お前オレと一緒に来ないか?」

「はぁ?」

 突拍子もないエルドレッドの発言に僕は唖然としてしまう。悩んだ末に出した案がそれなのか……

「お前がいてくれたら心強い。財布を落とすなんて失敗も起こらないだろう。うん、我ながらナイスアイデアだ」

 僕の都合は無視してエルドレッドは大はしゃぎだ。もう少し現実的な話をして欲しい。こいつの旅に同行するなんて無理に決まってるだろ。

「盛り上がってるとこ悪いけど、その案は却下だよ」

「何で? 絶対楽しいよ」

「楽しい楽しくないの問題じゃないよ。知り合ったばかりの……それも子供だけで旅に出るなんて、家の許可が下りるわけない。お前のとことは違うんだよ」

 当たり前の返答をしたはずなのに、エルドレッドは大きな溜め息をついた。彼の呆れたような反応が悔しかった。決して興味が無いわけじゃない。でも常識的に考えてみろ。僕の言ってることは間違ってないはずだ。

「家の話は聞いてない。オレが知りたいのはカミルがどう思ったかだよ。一緒に行こうって言われて少しも迷わなかった? お前にとっても悪い話じゃないはずだよ」

 僕が王都から逃げ帰ってこっちに入り浸ってる現状を暗に指摘している。ルクトで幼馴染の愚痴を言うだけの日々を送るより、よっぽど建設的だとエルドレッドは言いたいのだろう。
 痛いところを突いてくる。腹立だしいが、エルドレッドの言う通りだった。このままいじけていても何も変わらない。それに……コイツと話をしていると嫌なことを一瞬でも忘れることが出来た。家のこと、自分の中にあるちっぽけなプライド……それらをまるっきり無視して、もう一度エルドレッドの提案を考えてみた。

「行ってみたい……かも」

「そうだろ!!」

 口から溢れ落ちたのは、建前を捨てた自分の中にある紛れもない本音だった。か細くて聞き逃してしまいそうなそれを、エルドレッドはしっかりと拾ってくれていた。僕の言葉を理解した彼は、今日一番の良い笑顔を見せたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

【完】瓶底メガネの聖女様

らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。 傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。 実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。 そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。

愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

処理中です...