リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜

ゆずき

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193話 報告書(5)

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「コンティレクト神。あなたと一度お会いしている俺ですら、この状況を受け入れるのは容易ではありません。ましてここにいる部下達は神という存在に対面するのは初めての事。感情が追い付くまで今しばらくお待ち頂けますか?」

「この姿をしていても我々の存在は、人間達を萎縮させてしまうものなのですな。私はメーア殿やシエル殿と比べてあまり人と接する機会がないので、その辺りの機微に疎くて……」

 神様に会うのは初めてか……ルーイ様は数に含めないんだな。みんなあの方が神だということは知らないものね。コンティレクト様だって黙っていれば人間にしかみえない。第一印象は物腰の柔らかい老紳士といった感じだ。でも、強い力を宿しているという証……紫色の瞳が彼にもしっかりと確認できたのだった。
 私達は突然現れた神様にどう対処するべきか迷っている。目的が分からないから警戒を解くことも出来ないし、会話に口を挟むのを躊躇われた。ここはコンティレクト様と面識があり、神様の応対に慣れているレオンに任せて様子を見るのが良いだろう。
 初っ端にレナードさんによって行われた荒々しい歓迎。それに関しては、刃を向けられた当人が面白がるという意外な反応をしたことで救われた。こちらのどんな行動が神の機嫌を損ねるか分からない。私と『とまり木』の面々は、緊張しながらふたりのやり取りを見守るのだった。

「不慣れでいらっしゃるのに、遠いローシュから我々の元へ足を運んで下さったのですね。余程の事情があったのだとお見受け致しますが……本日はコスタビューテにどのような用向きで? お約束した会合までにはまだ時間がありますよね」

 レオンがコンティレクト様に来訪の理由を尋ねている。そういえば、レオンとルーイ様は後日再び神様達の話し合いに赴くと言っていた。更にその幹事役を務めるのはコンティレクト神だとも……。ならば今日レオンの元を訪ねたのは、その会合に関連する話をするためなのかもしれない。

「本日はルーイ様とレオン王子にお詫びと謝罪をしにきたのですよ」

「お詫びと謝罪……?」

「ええ、まずひとつ目。王子の口からも出ました9日後の会合ですが、日程を延期させて頂きたいのです」

 会合の日時を決めたのはコンティレクト様であるが、想定よりも準備に手間取ってしまい、このままでは予定通りに会を開くのが困難なのだという。

「それは構いませんが……ルーイ先生には俺からお伝えします。あの方は今王宮ではなく市内に滞在中ですので、人目を考えるとその方がよろしいでしょう」

「こちらから言い出した事ですのに、迷惑をかけてしまいすみません。お言葉に甘えさせて頂きます。他のふたりには既に伝えたのですが、当然のことお叱りを受けました。お詫びの品を渡してなんとか納得して頂けましたけどね」

 コンティレクト様がレオンを訪ねたのは、やはり例の会合についてのお知らせだった。手紙や代理人を寄越すのではなく、ご本人が直接訪問なさるなんて律儀なことだ。でもきっと、そうしなければ他の神様達が許してくれないのだろうな。怒られたって言ってるし……

「変更後の日時は、準備が完了しましたら直ちにお知らせしますので……」

「分かりました」

 ローシュの神様がいきなり現れてびっくりしたけれど会合の延期を伝えるためという、それほど大きな問題ではなくて良かった。私達はやっと体の力が少し抜けた。これ以上事件が起きるのは勘弁して欲しい。

「そして、もうひとつ。私から王子個人へ謝りたいことがあるのです。前回の会合で、私がサンプルを採取したせいで王子の体に多大な負担をかけさてしまったことです。聞くところによると、王子は数日寝込んだそうで……申し訳ありませんでした」

「それはもう過ぎたことですので、お気になさらないで下さい。むしろあの程度で倒れた己の軟弱ぶりを恥じていたくらいです」
 
 レオンは最初、コンティレクト様からの謝罪を畏れ多いと遠慮していた。それでもけじめだと言い張られてしまい、最終的に受け入れることになった。
 ルーイ様を見慣れているせいか、コンティレクト様の始終低頭な姿勢には恐縮してしまう。神様も色々なんだな……

「しかし、あの時何故あなたは俺の持つ力を吸い取っていかれたのですか? ずっと気になっていたのですよ。その答えはいつか教えて頂けるのでしょうか」

 魔力を奪われた影響で倒れてしまったけれど、レオンは数日で目を覚ました。体におかしな所はないとのことで安心していたが……そもそも、コンティレクト様はどうしてあんな事をなさったのだろうか。レオンと同じく私も気になっている。会合ではルーイ様が同席して目を光らせていたらしいから、変なことに利用はされないと思うけど。

「本当は次回の会合時にお披露目したかったのですが、私が至らないせいで延期になってしまいましたし……仕方ありませんね」

 コンティレクト様は懐に手を差し入れた。彼のその動作にレオン達は一瞬警戒したようだけれど、懐から取り出されたのは小ぶりな布袋だった。コンティレクト様は布袋をテーブルの上に置いた。袋からはカチャリと固い物が擦れ合うような音がする。

「レオン王子、これはあなたを寝込ませてしまった件……そして会合延期に対してのお詫びの品です。どうぞ受け取って下さい」
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