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174話 もしもの話
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ジェムラート家の使用人は程度の差はあれど、全員が胸の内に動揺や不安といった感情を抱え込んでいるだろう。フィオナ様の側使えで、彼女に傾倒していたというニコラ・イーストンのそれは計り知れない。しかし、そういったものを考慮した上でも、彼女の様子には違和感があったのだとミシェルは改めて語った。
「此度の訪問でも、私を見てニコラさんのようになった使用人はひとりもいませんでした。やはり彼女の私に対する怯えようは異常だったと思っています。こんな感じです」
ミシェルは当時のニコラ・イーストンをジェスチャーを交え、リアルに再現してくれた。いや、何もそこまでしなくてもいいのだが……。瞳を大きく見開いてカタカタと小刻みに体を振るわせるその様は、まるで化け物にでも遭遇したみたいだな。ミシェルが過剰演出をしているのでないのなら、確かにおかしい。
「ミシェル、お前がニコラ・イーストンに何かしたという事はないのか? 無意識に威嚇したとか……」
「セドリックさん!? 私そんなことしませんよ」
「ミシェルちゃんの隠しきれない兵の気迫がニコラさんを怯えさせちゃったのかぁ」
「ルーイ先生まで……酷いです」
「あはは! まぁ、冗談はさて置き……。ニコラさんがクレハの姉さんのことで、精神的に不安定になっていたのではってことだけど、それは他の使用人達にも当て嵌まることだよね。ミシェルちゃんの再現が誇張無しだとしたら、俺もニコラさん変だなって思っちゃう」
「ですよねー。なので、もう少し詳しく探りを入れてみます。まだ2日ありますし、こういう時ほど焦ってはダメなのです」
「ニコラさん……もう何かした後だったりしてね」
俺とミシェルは揃って息を呑んだ。頭の片隅で先生と同じ可能性を考えていたからだ。恐らくミシェルも。でも先生のように口にはしなかった。否定したい気持ちがそうさせていたのかもしれない。
「だって、いくらなんでもビビり過ぎでしょ。もしかしたらの話だよ。セディ達はニコラさんがクレハに悪さする計画を企てているかもって、調査しに来たわけだけど……それはとっくに終了してたんだとしたらどうよ」
ミシェルが悄然とした面持ちでこちらを見ている。やはり彼女も内心ではそれを想定していたようだ。
「王太子殿下が溺愛する婚約者の付き人として派遣された侍女……それだけでミシェルちゃんの王宮での立ち位置がある程度想像できる。ミシェル・バスラーは優秀であり、王太子に信頼されている人間だってね。ニコラさんは君の背後にレオンの影を感じ取って怖くなったんじゃないのかな」
先生は淡々と自論を展開していく。俺とミシェルの顔色を伺いながら……お前達も同じ想像をしたんじゃないのかと、紫色の瞳が圧をかけてくるようだった。
「ミシェルちゃんが最初に屋敷を訪問したのは、釣り堀の事件が起こる前日だったよね。クレハの帰宅の準備をするためと……偵察も兼ねて」
「はい……」
「そして事件が起きて、君は急いで王宮に帰ることになった。クレハの帰宅も中止になっちゃったね」
釣り堀に現れたサークス……クレハ様達が襲われたのは偶然だと思われていた。たまたまそこに居合わせてしまったからだと。でも、間違いだったら? 最初から目的は彼女だったのだとしたら……
思えば、あの光る蝶が発見されたのもクレハ様がいた中庭だった。
「ニュアージュの魔法使い、そして釣り堀で起きた事件……これらに関与しているのはジェフェリーさんではなく、ニコラさんの方かもしれないね。あの事件はクレハを害するためのニコラさんの謀だったりして……」
不審過ぎるニコラ・イーストンの態度。もし彼女が、クレハ様に対して既に何か事を起こした後だったと考えると、直近で起きた釣り堀襲撃事件が最も怪しくなる。ジェムラート家にはニュアージュの魔法使いが出入りしていたという疑いだってあるのだ。
クレハ様が巻き込まれたのは偶然ではなく必然。レオン様が……我々が恐れていたことが現実になってしまったということになる。未然に防ぐどころか、事件は発生してしまっていたのかもしれないのか。
「……とまぁ、そういう考えもできるってことで、ひとつの考察として気に留めて貰えると嬉しいかな。ご清聴ありがとうございました」
先生はそう言うと、中断していた朝食を再開した。
「セドリックさん、ニコラさんがニュアージュの魔法使いと共謀し、クレハ様を手にかけようとしただなんて。いち侍女がそんな大それたことを本当に……」
「もしかしたらの話だ。そうでしょう、先生?」
「そうそう」
「貴重なご意見をありがとうございます。先生のお考えもレオン様にしっかりとお伝え致します」
「うん。よろしく」
釣り堀の事件……不特定多数を狙ったものに偶然クレハ様が巻き込まれたのではなく、明確にターゲットにされていたとあっては、我々の今後の対応が大幅に変わってくる。
物証は何もない。ニコラ・イーストンにしてもジェフェリーさんにしても、現時点では怪しい止まりだ。しかし、俺の素性を知ってもジェフェリーさんは臆する事なく、クレハ様の様子を聞いてきた。彼は一番に彼女の心配をしたのだ。そんなジェフェリーさんとは対照的に、怯えながらミシェルを避けたニコラ・イーストン。
良心の呵責……そして、犯した罪が明るみになり裁かれることへの恐怖心が、彼女に不自然な態度を取らせたのだろうか。
「……ミシェル、あのバングルのことも調べてみよう。後から付けていた物はリアン大聖堂で購入した可能性が高いだろう。だとしたら商人が覚えているかもしれない。近辺でニコラ・イーストンの姿を目撃した者がいないか聞き込みも行う」
「はい」
「俺と先生はこの後ジェフェリーさんに話を聞いてみようと思っている。ミシェルはこのまま使用人の中に紛れて情報を集めろ。リズさんにも無理のない範囲で協力を仰いでくれ」
「あっ! そうだ。話の途中に割り込んでごめん。俺から最後にひとつだけいい?」
先生が思い出したかのように声を上げた。今度は何だろうか……俺たちは会話を一旦止めて先生の方を注視した。
「ニコラさんは体調不良で自室で休養中なんだよね。だからセディもミシェルちゃんもまだ彼女に会えてない。それ、多少強引にでもちゃんと調べた方がいい」
「えっ?」
「だってさぁ……もし俺が言った通り、ニコラさんがなんか悪いことしちゃって周囲の目に怯えていたんだとしたらさ。いつまでもこの屋敷に留まっているかな」
『俺ならさっさと逃げちゃうけどね』
先生の言葉を受け、俺は反射的に座っていた椅子から立ち上がる。そしてそれは隣にいた部下も同様だった。
「ミシェル!!」
「すっ、すぐに確認します!」
ミシェルは慌ただしく部屋を後にした。行動に移すのは決定的な証拠が出てからだと、俺とミシェルは慎重になり過ぎたのかもしれない。いや、それは言い訳にしかならないな。屋敷に来た時点で調査対象の姿をこの目で直に確認しなければならなかったのに……不調で臥せっているというを話を鵜呑みにして、それを怠ってしまったのだから。
「そんなに慌てなくても……ニコラさんが部屋に篭ったのって、俺達が来る何日も前でしょ。ガチでとんずらかましたなら、もう手遅れだよ。部屋はとっくにもぬけの殻だ」
先生はミシェルが残したまま出て行った配膳ワゴンの上から、紅茶の入ったポットを手に取った。焦る俺を尻目に呑気にカップに紅茶を注いでいる。
「さぁーて、ご褒美何して貰おうかな」
それは独り言のようでいて、しっかりと俺に向かって投げかけられた言葉だった。
「此度の訪問でも、私を見てニコラさんのようになった使用人はひとりもいませんでした。やはり彼女の私に対する怯えようは異常だったと思っています。こんな感じです」
ミシェルは当時のニコラ・イーストンをジェスチャーを交え、リアルに再現してくれた。いや、何もそこまでしなくてもいいのだが……。瞳を大きく見開いてカタカタと小刻みに体を振るわせるその様は、まるで化け物にでも遭遇したみたいだな。ミシェルが過剰演出をしているのでないのなら、確かにおかしい。
「ミシェル、お前がニコラ・イーストンに何かしたという事はないのか? 無意識に威嚇したとか……」
「セドリックさん!? 私そんなことしませんよ」
「ミシェルちゃんの隠しきれない兵の気迫がニコラさんを怯えさせちゃったのかぁ」
「ルーイ先生まで……酷いです」
「あはは! まぁ、冗談はさて置き……。ニコラさんがクレハの姉さんのことで、精神的に不安定になっていたのではってことだけど、それは他の使用人達にも当て嵌まることだよね。ミシェルちゃんの再現が誇張無しだとしたら、俺もニコラさん変だなって思っちゃう」
「ですよねー。なので、もう少し詳しく探りを入れてみます。まだ2日ありますし、こういう時ほど焦ってはダメなのです」
「ニコラさん……もう何かした後だったりしてね」
俺とミシェルは揃って息を呑んだ。頭の片隅で先生と同じ可能性を考えていたからだ。恐らくミシェルも。でも先生のように口にはしなかった。否定したい気持ちがそうさせていたのかもしれない。
「だって、いくらなんでもビビり過ぎでしょ。もしかしたらの話だよ。セディ達はニコラさんがクレハに悪さする計画を企てているかもって、調査しに来たわけだけど……それはとっくに終了してたんだとしたらどうよ」
ミシェルが悄然とした面持ちでこちらを見ている。やはり彼女も内心ではそれを想定していたようだ。
「王太子殿下が溺愛する婚約者の付き人として派遣された侍女……それだけでミシェルちゃんの王宮での立ち位置がある程度想像できる。ミシェル・バスラーは優秀であり、王太子に信頼されている人間だってね。ニコラさんは君の背後にレオンの影を感じ取って怖くなったんじゃないのかな」
先生は淡々と自論を展開していく。俺とミシェルの顔色を伺いながら……お前達も同じ想像をしたんじゃないのかと、紫色の瞳が圧をかけてくるようだった。
「ミシェルちゃんが最初に屋敷を訪問したのは、釣り堀の事件が起こる前日だったよね。クレハの帰宅の準備をするためと……偵察も兼ねて」
「はい……」
「そして事件が起きて、君は急いで王宮に帰ることになった。クレハの帰宅も中止になっちゃったね」
釣り堀に現れたサークス……クレハ様達が襲われたのは偶然だと思われていた。たまたまそこに居合わせてしまったからだと。でも、間違いだったら? 最初から目的は彼女だったのだとしたら……
思えば、あの光る蝶が発見されたのもクレハ様がいた中庭だった。
「ニュアージュの魔法使い、そして釣り堀で起きた事件……これらに関与しているのはジェフェリーさんではなく、ニコラさんの方かもしれないね。あの事件はクレハを害するためのニコラさんの謀だったりして……」
不審過ぎるニコラ・イーストンの態度。もし彼女が、クレハ様に対して既に何か事を起こした後だったと考えると、直近で起きた釣り堀襲撃事件が最も怪しくなる。ジェムラート家にはニュアージュの魔法使いが出入りしていたという疑いだってあるのだ。
クレハ様が巻き込まれたのは偶然ではなく必然。レオン様が……我々が恐れていたことが現実になってしまったということになる。未然に防ぐどころか、事件は発生してしまっていたのかもしれないのか。
「……とまぁ、そういう考えもできるってことで、ひとつの考察として気に留めて貰えると嬉しいかな。ご清聴ありがとうございました」
先生はそう言うと、中断していた朝食を再開した。
「セドリックさん、ニコラさんがニュアージュの魔法使いと共謀し、クレハ様を手にかけようとしただなんて。いち侍女がそんな大それたことを本当に……」
「もしかしたらの話だ。そうでしょう、先生?」
「そうそう」
「貴重なご意見をありがとうございます。先生のお考えもレオン様にしっかりとお伝え致します」
「うん。よろしく」
釣り堀の事件……不特定多数を狙ったものに偶然クレハ様が巻き込まれたのではなく、明確にターゲットにされていたとあっては、我々の今後の対応が大幅に変わってくる。
物証は何もない。ニコラ・イーストンにしてもジェフェリーさんにしても、現時点では怪しい止まりだ。しかし、俺の素性を知ってもジェフェリーさんは臆する事なく、クレハ様の様子を聞いてきた。彼は一番に彼女の心配をしたのだ。そんなジェフェリーさんとは対照的に、怯えながらミシェルを避けたニコラ・イーストン。
良心の呵責……そして、犯した罪が明るみになり裁かれることへの恐怖心が、彼女に不自然な態度を取らせたのだろうか。
「……ミシェル、あのバングルのことも調べてみよう。後から付けていた物はリアン大聖堂で購入した可能性が高いだろう。だとしたら商人が覚えているかもしれない。近辺でニコラ・イーストンの姿を目撃した者がいないか聞き込みも行う」
「はい」
「俺と先生はこの後ジェフェリーさんに話を聞いてみようと思っている。ミシェルはこのまま使用人の中に紛れて情報を集めろ。リズさんにも無理のない範囲で協力を仰いでくれ」
「あっ! そうだ。話の途中に割り込んでごめん。俺から最後にひとつだけいい?」
先生が思い出したかのように声を上げた。今度は何だろうか……俺たちは会話を一旦止めて先生の方を注視した。
「ニコラさんは体調不良で自室で休養中なんだよね。だからセディもミシェルちゃんもまだ彼女に会えてない。それ、多少強引にでもちゃんと調べた方がいい」
「えっ?」
「だってさぁ……もし俺が言った通り、ニコラさんがなんか悪いことしちゃって周囲の目に怯えていたんだとしたらさ。いつまでもこの屋敷に留まっているかな」
『俺ならさっさと逃げちゃうけどね』
先生の言葉を受け、俺は反射的に座っていた椅子から立ち上がる。そしてそれは隣にいた部下も同様だった。
「ミシェル!!」
「すっ、すぐに確認します!」
ミシェルは慌ただしく部屋を後にした。行動に移すのは決定的な証拠が出てからだと、俺とミシェルは慎重になり過ぎたのかもしれない。いや、それは言い訳にしかならないな。屋敷に来た時点で調査対象の姿をこの目で直に確認しなければならなかったのに……不調で臥せっているというを話を鵜呑みにして、それを怠ってしまったのだから。
「そんなに慌てなくても……ニコラさんが部屋に篭ったのって、俺達が来る何日も前でしょ。ガチでとんずらかましたなら、もう手遅れだよ。部屋はとっくにもぬけの殻だ」
先生はミシェルが残したまま出て行った配膳ワゴンの上から、紅茶の入ったポットを手に取った。焦る俺を尻目に呑気にカップに紅茶を注いでいる。
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