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160話 棚の裏側(1)
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「レオン殿下の婚約者様とは知らず、失礼な事を言ってしまい申し訳ありませんでした」
「すぐに名乗らなかった私も悪いのです。どうかもう、謝らないで下さい」
ギルさんは頭を深々と下げて謝罪をする。これで3度目だ。別に気にしてないのに。
「それはこちらも……って俺、まだ挨拶もちゃんとしていませんでしたね!! 重ね重ねすみません。俺はギル・ファーカーと申します。この雑貨屋の店主をしておりまして、レナードとは昔馴染みなんです」
「殿下の婚約者……クレハ様が王宮に滞在しているというのは、君たちの耳にも届いていただろう。こんな可憐で愛らしい令嬢は他にいない。何で分からなかったのかな」
「王宮にいるのは知ってたけど、容姿についての情報はあんまり……。大体こんな使用人御用達の店に、そんなお嬢様が来るとか思わないだろ」
やはり引きこもりに片足突っ込んでいた私の知名度は低いです。レナードさん……あまりギルさんに無茶振りしないであげて下さい。
「そもそも、どうして殿下の婚約者がこんなとこにいるんだ?」
「クレハ様は諸事情があって行動を制限されていらっしゃる。ご実家への帰宅もままならない状態なんだよ。それなのに文句のひとつも言わず、健気に従っておられるんだ。何かしてあげたいと思うのは当たり前でしょ」
商店巡りはその一環だと、レナードさんはギルさんに説明した。皆に気を使わせて申し訳ないと思う反面、その心遣いがとても嬉しかった。
「レナードさん、ありがとうございます。でも、少し家に帰れないくらい大丈夫ですよ。今だってレナードさんが側にいて下さっていますし……レオンやルーイ様、それにリズ、もちろん他の『とまり木』の方達も……みんながいてくれるので寂しくありません」
「クレハ様……」
家族に会いたいし、フィオナ姉様の体調も気掛かりだけれど寂しくはないのだ。でもレナードさんには強がっているように思われてしまったのだろうか。彼は私との間にあった僅かな距離を一気に詰める。あっという間に、私は彼の腕の中に閉じ込められてしまった。
「……可愛い過ぎるでしょ。こんなの何でもしてあげたくなっちゃうよね」
「レナードさんっ……!! ちょっと、苦しいです」
「おい……俺には変な妄想するなみたいに言っといて、しっかりお触りしてんじゃねーかよ。殿下に首刎ねられるんじゃなかったのか」
「この程度なら水かけられるくらいのお仕置きで済むから……平気」
「すでに制裁食らってるのかよ。呆れたわ。何が護衛だよ。どう考えてもお前が1番の危険人物だろ」
「純粋に可愛いから愛でてるだけですー。いやらしい想像しないで下さい」
「お嬢様、本当に気を付けて下さいね。間違い起こす前に距離を置いた方がいいですよ」
「は、はぁ……」
「ギル! 変なことクレハ様に吹き込まないでよね」
会話の断片から察するに、レナードさんは昔女性関係で相当やんちゃをしていたようだ。そりゃ、この見た目だもん。モテないわけがないんだよなぁ。何もしなくても女性の方からお誘いかけられてそう。
おふたりはあーでもない、こーでもないと楽しそうにお喋りなさっているけれど、そろそろお店の商品を見て回りたいな。いまだレナードさんの腕の中に収まりながら、私は呑気に考えていた。
「事情は分かった。けど、うちの店にお嬢様が欲しがるような物は無いと思うけどなぁ」
「そんなことないです。ほらっ、これ……」
レナードさんの腕から抜け出ると、私はさきほど店内を見渡した時に見つけた便箋を手に取った。ギルさんは謙遜なさっているけれど、お店の中には面白そうな物がたくさんある。近くで見たくて、うずうずしていたのだ。
「この小鳥柄の便箋、とっても可愛いです。それにこの棚にあるグラスも……お店の中、見て回っても良いですか?」
「えっ? は、はいどうぞ。ごゆっくり……」
とりあえずこの便箋は買って帰ろう。グラスとかの食器類は……今は王宮でお世話になっている身だから保留だな。私物として側に置けるような……他に何かないかな。
「あっ、そうだ。ギルさん、お店の中とても良い匂いがしますよね。この香りは何なんですか」
「これはお香の匂いですよ」
「お香?」
「今お嬢様が見ている棚の裏側に置いてありますよ。直接火を付けるタイプはもちろん、常温で使用できる香り袋なども揃えています。リラックスタイムにおすすめですよ」
何だかんだ言って、しっかりと営業トークをしているギルさん。この良い匂いはお香だったのか。おすすめされたからには見に行かないとね。私はギルさんの言葉に従い、棚の後ろ側に向かった。
「うわっ!!?」
「えっ? クレハ様!?」
棚の後ろに回った直後、私は何かに足を引っ掛けてバランスを大きく崩してしまう。どすんと音をたてて、床に体を打ち付けた。お店の商品を巻き込まずにすんだのは幸いだった。
「クレハ様!! 大丈夫ですかっ……!?」
「大丈夫です、ちょっと転んだだけ。ごめんなさい……足元をよく見ていなかったです」
倒れた私の元へレナードさんがすぐに駆け寄って、体を起こしてくれた。擦りむいたり捻ったりした所はないかと、念入りに確認している。
「怪我が無くて良かったです」
「足に何か引っ掛けてしまって……」
商品は無事だったけれど、お店の備品を壊していたらどうしよう……。私がつまづいてしまった物の正体を確かめようと、恐る恐る後ろへ振り返ったその時――
「いてて……何なんだよ」
「えっ?」
レナードさんでもギルさんでもない、知らない男性の声。予想だにしていなかった事態に酷く困惑する。私が足を引っ掛けてしまったのは物ではなく、ヒトだったのだ。
「せっかく気持ちよく寝てたのに」
その男性は、頭をぼりぼりと掻きむしりながらあくびをしていた。もしかしてこの人……店の床で寝ていたの!? 私達がいた場所からは丁度陳列棚に隠れて死角になっていたので気が付かなかった。
「あなた……なんでこんなとこに」
レナードさんが男性に声をかけた。また彼のお友達だろうか。レナードさんやギルさんよりも年長に見えるけれど。
「こちらの方もレナードさんのお知り合いですか? お店の従業員さんとか……」
「いや、彼は……」
「んー……レナード?」
男性はその場で立ち上がった。シワの寄ったシャツとズボン……それに無造作に白衣を羽織っている。癖のある亜麻色の髪に、体格は細身で猫背気味。寝起きだからだろうか、気怠げでアンニュイな雰囲気を纏っていた。
「レナード・クラヴェル……と、僕の体を思いっきり蹴飛ばしてくれた子供」
「えっ? あっ、すみませんでした!!」
「クレハ様が謝る必要はありませんよ。こんなとこで寝ているのが悪い。私は彼の方を叱責してやりたいです。危うく貴女が怪我をするところだった」
「クレハ、あー……そうだ、クレハ・ジェムラート。殿下の婚約相手か」
彼は私達が喋る内容を聞いてはいるけれど、相槌を打ったりするわけでもなく、淡々としていて……独り言を言っているようだった。
「この店の従業員などではありません。彼は軍の人間です。我々と同じ……レオン殿下の元に仕えている」
「レオンの……それじゃ、もしかしてこの方は」
「はい。王太子殿下専属近衛部隊のひとり……名をユリウス・アーネット」
ユリウス・アーネットさん……私が足蹴にしてしまった男性は、なんと『とまり木』の隊員だった。隊員は全部で7人いると聞いてはいたけれど、その6人目にこんな状況でお会いすることになるなんて……
「すぐに名乗らなかった私も悪いのです。どうかもう、謝らないで下さい」
ギルさんは頭を深々と下げて謝罪をする。これで3度目だ。別に気にしてないのに。
「それはこちらも……って俺、まだ挨拶もちゃんとしていませんでしたね!! 重ね重ねすみません。俺はギル・ファーカーと申します。この雑貨屋の店主をしておりまして、レナードとは昔馴染みなんです」
「殿下の婚約者……クレハ様が王宮に滞在しているというのは、君たちの耳にも届いていただろう。こんな可憐で愛らしい令嬢は他にいない。何で分からなかったのかな」
「王宮にいるのは知ってたけど、容姿についての情報はあんまり……。大体こんな使用人御用達の店に、そんなお嬢様が来るとか思わないだろ」
やはり引きこもりに片足突っ込んでいた私の知名度は低いです。レナードさん……あまりギルさんに無茶振りしないであげて下さい。
「そもそも、どうして殿下の婚約者がこんなとこにいるんだ?」
「クレハ様は諸事情があって行動を制限されていらっしゃる。ご実家への帰宅もままならない状態なんだよ。それなのに文句のひとつも言わず、健気に従っておられるんだ。何かしてあげたいと思うのは当たり前でしょ」
商店巡りはその一環だと、レナードさんはギルさんに説明した。皆に気を使わせて申し訳ないと思う反面、その心遣いがとても嬉しかった。
「レナードさん、ありがとうございます。でも、少し家に帰れないくらい大丈夫ですよ。今だってレナードさんが側にいて下さっていますし……レオンやルーイ様、それにリズ、もちろん他の『とまり木』の方達も……みんながいてくれるので寂しくありません」
「クレハ様……」
家族に会いたいし、フィオナ姉様の体調も気掛かりだけれど寂しくはないのだ。でもレナードさんには強がっているように思われてしまったのだろうか。彼は私との間にあった僅かな距離を一気に詰める。あっという間に、私は彼の腕の中に閉じ込められてしまった。
「……可愛い過ぎるでしょ。こんなの何でもしてあげたくなっちゃうよね」
「レナードさんっ……!! ちょっと、苦しいです」
「おい……俺には変な妄想するなみたいに言っといて、しっかりお触りしてんじゃねーかよ。殿下に首刎ねられるんじゃなかったのか」
「この程度なら水かけられるくらいのお仕置きで済むから……平気」
「すでに制裁食らってるのかよ。呆れたわ。何が護衛だよ。どう考えてもお前が1番の危険人物だろ」
「純粋に可愛いから愛でてるだけですー。いやらしい想像しないで下さい」
「お嬢様、本当に気を付けて下さいね。間違い起こす前に距離を置いた方がいいですよ」
「は、はぁ……」
「ギル! 変なことクレハ様に吹き込まないでよね」
会話の断片から察するに、レナードさんは昔女性関係で相当やんちゃをしていたようだ。そりゃ、この見た目だもん。モテないわけがないんだよなぁ。何もしなくても女性の方からお誘いかけられてそう。
おふたりはあーでもない、こーでもないと楽しそうにお喋りなさっているけれど、そろそろお店の商品を見て回りたいな。いまだレナードさんの腕の中に収まりながら、私は呑気に考えていた。
「事情は分かった。けど、うちの店にお嬢様が欲しがるような物は無いと思うけどなぁ」
「そんなことないです。ほらっ、これ……」
レナードさんの腕から抜け出ると、私はさきほど店内を見渡した時に見つけた便箋を手に取った。ギルさんは謙遜なさっているけれど、お店の中には面白そうな物がたくさんある。近くで見たくて、うずうずしていたのだ。
「この小鳥柄の便箋、とっても可愛いです。それにこの棚にあるグラスも……お店の中、見て回っても良いですか?」
「えっ? は、はいどうぞ。ごゆっくり……」
とりあえずこの便箋は買って帰ろう。グラスとかの食器類は……今は王宮でお世話になっている身だから保留だな。私物として側に置けるような……他に何かないかな。
「あっ、そうだ。ギルさん、お店の中とても良い匂いがしますよね。この香りは何なんですか」
「これはお香の匂いですよ」
「お香?」
「今お嬢様が見ている棚の裏側に置いてありますよ。直接火を付けるタイプはもちろん、常温で使用できる香り袋なども揃えています。リラックスタイムにおすすめですよ」
何だかんだ言って、しっかりと営業トークをしているギルさん。この良い匂いはお香だったのか。おすすめされたからには見に行かないとね。私はギルさんの言葉に従い、棚の後ろ側に向かった。
「うわっ!!?」
「えっ? クレハ様!?」
棚の後ろに回った直後、私は何かに足を引っ掛けてバランスを大きく崩してしまう。どすんと音をたてて、床に体を打ち付けた。お店の商品を巻き込まずにすんだのは幸いだった。
「クレハ様!! 大丈夫ですかっ……!?」
「大丈夫です、ちょっと転んだだけ。ごめんなさい……足元をよく見ていなかったです」
倒れた私の元へレナードさんがすぐに駆け寄って、体を起こしてくれた。擦りむいたり捻ったりした所はないかと、念入りに確認している。
「怪我が無くて良かったです」
「足に何か引っ掛けてしまって……」
商品は無事だったけれど、お店の備品を壊していたらどうしよう……。私がつまづいてしまった物の正体を確かめようと、恐る恐る後ろへ振り返ったその時――
「いてて……何なんだよ」
「えっ?」
レナードさんでもギルさんでもない、知らない男性の声。予想だにしていなかった事態に酷く困惑する。私が足を引っ掛けてしまったのは物ではなく、ヒトだったのだ。
「せっかく気持ちよく寝てたのに」
その男性は、頭をぼりぼりと掻きむしりながらあくびをしていた。もしかしてこの人……店の床で寝ていたの!? 私達がいた場所からは丁度陳列棚に隠れて死角になっていたので気が付かなかった。
「あなた……なんでこんなとこに」
レナードさんが男性に声をかけた。また彼のお友達だろうか。レナードさんやギルさんよりも年長に見えるけれど。
「こちらの方もレナードさんのお知り合いですか? お店の従業員さんとか……」
「いや、彼は……」
「んー……レナード?」
男性はその場で立ち上がった。シワの寄ったシャツとズボン……それに無造作に白衣を羽織っている。癖のある亜麻色の髪に、体格は細身で猫背気味。寝起きだからだろうか、気怠げでアンニュイな雰囲気を纏っていた。
「レナード・クラヴェル……と、僕の体を思いっきり蹴飛ばしてくれた子供」
「えっ? あっ、すみませんでした!!」
「クレハ様が謝る必要はありませんよ。こんなとこで寝ているのが悪い。私は彼の方を叱責してやりたいです。危うく貴女が怪我をするところだった」
「クレハ、あー……そうだ、クレハ・ジェムラート。殿下の婚約相手か」
彼は私達が喋る内容を聞いてはいるけれど、相槌を打ったりするわけでもなく、淡々としていて……独り言を言っているようだった。
「この店の従業員などではありません。彼は軍の人間です。我々と同じ……レオン殿下の元に仕えている」
「レオンの……それじゃ、もしかしてこの方は」
「はい。王太子殿下専属近衛部隊のひとり……名をユリウス・アーネット」
ユリウス・アーネットさん……私が足蹴にしてしまった男性は、なんと『とまり木』の隊員だった。隊員は全部で7人いると聞いてはいたけれど、その6人目にこんな状況でお会いすることになるなんて……
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