リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜

ゆずき

文字の大きさ
上 下
108 / 250

107話 お見舞い(2)

しおりを挟む
 皆が言っていた通り、レオンは数日で目を覚ました。起きた直後は記憶が混濁していて、自分の身に何が起こったのかを理解していなかったそうだ。それでも怠そうにしていたのは1日だけで、すぐにいつもの調子を取り戻した。念のため医師による診察も受けたが、異常な所は見つからず、問題無しとの結果が出る。それを聞いて、私はようやく胸のつかえが取れたような気がした。レオン自身も大事無いと主張していて、既に動き回りたくてうずうずしてるんだって。でも医師はそれを受け入れることはなく、3日間の絶対安静を言い渡したのだった。
 無傷の私ですら、外出を控えてしばらく自室で大人しくしているようにと言われたのだ。ましてレオンは世継ぎの王子様。放任主義で普段は比較的レオンの自由にさせているジェラール陛下も、今回は見過ごせなかったようで……

「陛下ったら、もしお医者様の言い付けを破ったらクレハ様との婚約を解消するって殿下を脅したんですよ。そしたら殿下……人が変わったみたいに大人しくなっちゃって。クレハ様効果は絶大ですね。陛下もよく分かっていらっしゃる」

 ミシェルさんは思い出し笑いをしながら、カップにお茶を注いでいた。彼女は私だけでなく、レオンのお世話も兼任しているので、雑談がてら彼の様子を教えてくれるのだった。有難いけれど、またしても反応に困るネタを振られたな。私はこれをどんな顔して聞けば良いんだろうか。
 脅しの内容はともかくとして、陛下の対応は当然。私だって彼に安静にしていて貰いたい。回復がいくら早くても、倒れたことを忘れちゃ駄目だ。

「しばらくはゆっくりしていて欲しいです……」

「そうですね。ご本人は不満そうですけど……心配している周りの気持ちもご理解して頂きたいものです。はい、どうぞ」

「ありがとうございます。わぁ……良い香り」

 ミシェルさんが淹れてくれたのは、レモンバームティー。少しだけハチミツが入っていて、優しい甘さにほっこりする。疲労回復や風邪にも効くんだって。飲みやすくて美味しい。ミシェルさんもお茶を淹れるの上手なんだよね……普段カフェで働いてるんだから当たり前か。レナードさんとルイスさんも淹れられるのかな。あのふたりがお店に出ていた時は、運が悪くて会うことができなかった。私の護衛の方がメインになっちゃったし……店員さんやってるところ見たかったな。

「そういうわけなんで、殿下はとーっても退屈しておられます。お見舞いに行くなら今がベストではないかと!!」

「はい?」

 頂いたお茶を楽しんでいると、ミシェルさんがお見舞いの話を持ち出してきた。頃合いを見て行こうとは思っていたけど……

「すみません。実は殿下に、クレハ様がお見舞いにいらっしゃる事を伝えてしまいまして……。きっと今か今かと楽しみにしておられるはずです」

「えー……私、あれからなんにも準備できてないですよ」

「ですから、クレハ様は身一つで行って問題無いですってば」

 大切なのは相手を思う気持ち……それは確かにその通りなのだけど。でも、レオン退屈してるそうだし……すぐに用意できる物を何か……本でも持っていってあげようかな。机の上には最近私がハマっている小説『ローズ物語』の2巻と3巻があった。私はもう読み終えたし、レオンも私の影響で1巻を読んでいたので、続きが気になっているかもしれない。後はトランプとか? ふたりでやってもあんまり楽しくないかな。一応持って行こう。

「分かりました。このお茶を頂いたら、すぐに向かいますね」

「では、その間私はクレハ様のお衣装を選んで参ります」

 服……お見舞いに行くのにわざわざ着替えるの? 今の自分は部屋着ではあるけど、だらしない格好ではないと思う。逆にめかし込んで行く方が不自然なのでは。疑問がそのまま顔に出ていたのか、ミシェルさんは理由を説明してくれる。

「クレハ様はそのままでも充分素敵ですが、言い付けを守って大人しくしている殿下の為に、少しばかり色をつけてあげようと思いまして」

 彼女はレオン好みに私の服装をコーディネートするつもりらしい。目的はあくまでお見舞いなので、過度に着飾ったりはしないと付け加えた。

「例えば色です。殿下ご本人は黒や濃紺、茶など落ち着いた色合いのお召し物を好まれます。ですがクレハ様……意中の女の子に対しては意外と王道にピンクや白、デザインもシンプルよりは可愛い系。華やかでふわふわした物がお好きみたいですよ」

「そうなんだ……レオンは何を着ても似合うって褒めてくれるから、知らなかったです」

 ふわふわ可愛い系の服っていうと、フィオナ姉様がよく着てるみたいなのかな。あまり私が選ばない系統の服だ。嫌いではないけど、どうしても動きやすい服の方を好ましく思ってしまうので。白は私も好きな色だけど……
 
「もちろんそれも本心でしょうけれど、お好きな系統がちゃんとお有りなんですよ。せっかくですので、殿下の好みに合わせてあげましょう」

 ミシェルさんの熱弁は続いた。私もいつの間にか、お茶を飲む手を止めて聞き入っていた。
 自分はお洒落に疎い。女の子用の服ですら、下手をしたらレオンの方が詳しいくらいなのだ。普段着ているものだって侍女任せ。ミシェルさんの言う通りにした方が良いような気がしてきた……お見舞いする相手が不快になるよりは、好印象を持って貰うのが良い。

「そっ、そうですね。では、ミシェルさん……レオンのお見舞いに着て行く服を選ぶ、お手伝いをお願いしても良いですか?」

「もちろんです!!!! お任せ下さい」

 ミシェルさんは胸に手を当て、やる気満々に返事をしてくれた。とっても楽しそうだ。鼻歌を歌いながらクローゼットを物色するミシェルさん……私にはその姿が、どことなく王妃様と被って見えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

【完結】夫は私に精霊の泉に身を投げろと言った

冬馬亮
恋愛
クロイセフ王国の王ジョーセフは、妻である正妃アリアドネに「精霊の泉に身を投げろ」と言った。 「そこまで頑なに無実を主張するのなら、精霊王の裁きに身を委ね、己の無実を証明してみせよ」と。 ※精霊の泉での罪の判定方法は、魔女狩りで行われていた水審『水に沈めて生きていたら魔女として処刑、死んだら普通の人間とみなす』という逸話をモチーフにしています。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

処理中です...