リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜

ゆずき

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105話 廊下

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「レオン様は眠っておられるだけだ。気持ちは分かるが、俺に殺気をぶつけるのはよしてくれ」

 ルーイ先生と別れたのち、熟睡している主を抱えながら橋の近くの廊下を歩いていると、ふたりの兵士と鉢合わせた。それは俺の部下であるクラヴェル兄弟だった。彼らも俺と考えることは同じで、レオン様が気がかりでここまで来たのだろう。意識の無い主を目にして冷静さを欠いているのか、今にも切りかかってくるのではという物騒な空気を纏わせている。

「たまには俺の命令も聞いたらどうだ? 休めって言っただろう。それに、クレハ様はどうしたんだ」

 兄弟は俺の言葉が聞こえているのかいないのか、無言で俺たちに近寄ってくると、レオン様の顔を覗き込んだ。そして検分するかのように体を見回す。ここも俺と同じだな。衣服の状態、出血の有無……呼吸に異常がないかなどを確認している。
 立て続けにじろじろと見られているが、レオン様はやはり微動だにしない。穏やかな寝息をたてながら眠りについていた。ひと通り調べ終わると、最後にふたりはもう一度レオン様の顔を見る。本当に寝ているだけだと分かり、険悪な態度を軟化させた。そしてようやく口を開く。この兄弟……普段やかましい反動か、怒ると静かになるんだよなぁ。

「俺たちは平気。姫さんも少し前に寝たよ。丁度ミシェルが戻って来たから、あいつに任せてる」

「殿下が所構わず眠りこけるなんてあり得ませんよね……私達にも詳しく事情を説明して貰えませんか? セドリックさん」

 ミシェルが帰って来たのか。彼女はクレハ様の帰宅準備の為、先にジェムラート邸へ行っていたのだが……帰宅が延期になったという連絡が、彼女にも届いたのだろうな。
 事情を話せと言われても、俺だってまだほとんど何も聞いていない。先生は夜が明けてから報告すると仰ったしな。ピリピリしている兄弟を刺激したくはないし……ここは下手に誤魔化さない方がいいか。

「ボスの先生はどうしたの? 一緒に行ったんじゃなかったっけ」

「ルーイ先生はまだ神殿だ。もしかしたら、事態はより深刻になったのかもしれないぞ」

 さっきの先生の雰囲気的に違うと思いたいが……なんせ三神の集結だ。楽観視など出来るわけがない。

「レオン様をこんな風にしたのは、ローシュの神コンティレクトだ。経緯は分からんが、魔力を大量に吸収されたらしい。疲れた体はそれに耐えられず、レオン様は昏睡してしまわれた。神殿で何があったのか……悪いが俺も詳細を知らされていない。それは明日、ルーイ先生がお話ししてくれるそうだ」

 コンティレクトの名前を聞いて、兄弟は目を見開いた。まさか他国の神の仕業だとは予想できなかっただろうな。更にニュアージュのシエルレクトも同席していたことも教えてやる。3人の神がリオラド神殿につどっていた。ルーイ先生を含めると、正解には4人だが……
 とにかく、レオン様は数日後には目を覚ますだろうから心配いらないと伝える。






「神様達が顔突き合わせて話し合いね……なんか凄いことになってたんだね。ボスはそれに混ざってたの? そりゃ神経擦り減らすわなぁ」

「殿下が無事なら良かったです。しかし、メーアレクト神がお怒りだとは思っていましたけれど、神達はリオラドでどんなやり取りをなさったのでしょうね」

「さあな。我々にとって悪い話でないのを祈るが……先生に聞いてみないことには何ともな。レオン様をお部屋にお連れしたら、俺は一旦仮眠を取る。何度も言うが、お前達も体を休ませろ。いざという時使い物にならん方が困る。休むのも仕事のうちだ」

 疲労を引きずらない為にも、休める時に休んでおけと忠告する。昼間の事もあるから気を使ったつもりだったが、問題無いとルイスに一蹴されしまう。こいつのことだから強がりでもなんでもなく、本心なんだろうな。そんなルイスを見てレナードは笑っていた。

「そうですね……私達も素直にセドリックさんの言う通りにしたいのですが、休むのはもうしばらく後になりそうですよ。ルイス、私達がここに来た理由」

「あっ、そうだった。ボスに気を取られて忘れるとこだったな」

「お前達、レオン様が心配で来たんじゃなかったのか?」

 神殿に行ったきり、なかなか戻らない主を案じての行動だと思っていたが、彼らは他に用があってここに来たらしい。

「そりゃ、ボスのことは常に気にかけてるけど……」

「神殿内で殿下の御身が危険に晒されるなど、思いもしませんでしたよ。だからこそ意識の無い殿下を見て、私達は本来の目的が頭から抜け落ちてしまうくらい衝撃を受けたわけで……」

 そりゃそうか……リオラド神殿はメーアレクト様の力で守られた聖域だ。このふたりは先生の手紙を見ていないからな。あれが無ければ俺だって、ここまで不安を掻き立てられることもなかったかもしれない。

「じゃあ、何しに来たんだよ」

「セドリックさんに報告することがあったんだよ」

「酒場を張っていた兵士から急ぎの伝達が入ったのです。例の男……死んだそうですよ」

「はぁ?」

「しかも信じられる? デカい鳥に襲われたんだってさ。町は騒ぎになってるよ。建物の一部が崩壊したりしたそうだけど、その男の他に被害者は無し。まるでそいつだけを狙ってたみたいだったって」

「……何でそれ早く言わないんだ」

「だから、ボスのことで頭がいっぱいになっちゃったんだってば……ごめん」

「申し訳ありません」

 レナードの言う通り、寝るのはもう少し後になりそうだった。
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