リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜

ゆずき

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103話 カミサマ会議(5)

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「上手くいく確証はありません……でも試してみる価値はあるかと。ただ、それにはいくつか準備が必要でして。20日後の同時刻、皆には再びリオラドに集まって頂きたい。その時に詳細をお話し致します。メーア殿、また場所をお借りすることになりますがよろしいですかな?」

「ええ、構わないわ」

「20日か……随分時間がかかるな。確証も無いものにそこまで待ってやるほど自分は暇じゃないんだが」

「20日というのは、主に必要な材料を得るのにかかる時間です。確証が無いとは言いましたが、9割方成功すると踏んでおります。そして、レオン王子……あなたにも同席して貰いたいのですが」

「俺に?」

「はい。むしろ、あなたにいて貰わねば困ります」

 またこの場違い空間に混ざるのか……あまり気が進まない。俺がいなくてはならないというコンティレクト神の言葉にも、不安を掻き立てられる。簡単に承諾して良いものか……

「コンティ、そのお前が考えた策は人体に悪影響を与えるようなものではないな? 危険が伴う可能性があるのなら……」

「大丈夫ですよ、ルーイ様。彼に危害を加えるつもりは一切無い。危険なことなどありはしません。何でしたらルーイ様も、王子と一緒にいらしたら宜しいかと」

 勿体付けた言い方をする。コンティレクト神は、柔和な笑顔を浮かべながら俺の回答を待っている。いかにも好々爺然とした彼の振る舞いは、シエルレクト神とは違った怖さを感じてしまう。始終落ち着いた態度を崩さず、どこか飄々としていて掴みどころがない。得体が知れないというか不気味だ。

「どうする? コンティは嘘は吐かないと思うが、無理はしなくていいぞ」

 ルーイ先生が俺の顔を覗き込む。コンティレクト神の要望を受けるか否か……。参加した所で意見具申などできるはずもないが、自分のいない所で自分と深く関わりのある事柄を決定されるのも嫌だな。先生は俺が行くなら、今回同様付き添うと言って下さっている……それならば――

「……行きます。20日後の話し合い、俺も参加させて下さい」

「そうこなくては。ありがとうございます、レオン王子」

 コンティレクト神は笑みを深めた。彼の目尻の皺が強調される。満足そうなコンティレクト神とは逆に、先生は渋い顔をしていた。

「レオンには力が使えない俺をサポートして貰っている場面も多い。衣食住においても世話になっている。だからというわけではないが、皆にもその辺りの事情をいくらか斟酌しんしゃくして欲しい」

 各々が力を与えた人間の管理をしろ……先生が三神に命じられた事だ。当然、その対象には俺も含まれる。先生も俺の持つ力が槍玉に挙がるのを見越していたようだ。腹は立つけれど、シエルレクト神の言い分はもっともなのだ。俺だって自分の力が一族の中で突出しているのは自覚しているのだから……
 先生の発言は、暗に俺を特別扱いしろ、手を出すなと言っているようなものだ。あくまで自分の為、俺の力を上手く利用しているのだというていではあったけれど……やはりというか案の定、先生の言葉を受けたシエルレクト神は深く溜息を吐いた。

「ルーイ様、また妙な肩入れをして……よろしいのですか? リフィニティ様に更にお叱りを受けますよ」

「うっ……お上の名前を出されると辛いな。でも、事実レオンは丸腰弱々の俺の後見人的ポジションになってるとこもあるのよ? こいつがいなかったら路頭に迷ってたかもだしね」

「ルーイ様はレオン王子をとても心配しておられるようですね。大丈夫です。王子はもちろん、その他の人間に対しても身体に害を与えるようなことは致しませんから」

 危険は無いと再三主張するコンティレクト神。多少なり概要を教えてくれれば良いのに、どうやら皆を驚かせたいという欲があるのか、20日後のお楽しみとそれ以上語る事はなかった。

「それじゃあ、とりあえずこの件は一旦コンティに任せるとしようか。続きは20日後……場所はリオラド神殿。時は日没後ということで」

 先生の言葉に皆は頷き、話し合いはここでお開きになった。さっさと帰ろうとするシエルレクト神へ、ぶち撒けた羽根を片付けてから帰れとメーアレクト様が怒鳴り付けている。
 物凄く疲れた……主に精神的にだが。でもまだ休むわけにはいかない。酒場にいる男が本当に死んだのか確認しなければならないし、やることは沢山ある。しかし、神に食い殺されたなんて……どう説明したものか。この後のことを考えながら、先生と一緒に広間を後にしようと歩き出した所で、コンティレクト神に呼び止められる。

「レオン王子」

 コンティレクト神が俺に近付いてくる。歩きながら、背中側で組んでいた腕を解いた。その動作に一瞬身構えたが、彼の手には何も持たれてはいなかった。

「引き止めてしまってすみませんね。忘れる所でしたよ。少しサンプルを頂戴します」

「な、に……?」

 彼は俺の顔面に右手をかざした。人差し指が額に触れる。警戒していたはずだったのに、体が全く反応出来なかった。彼の指先が触れた箇所が熱を帯び、それは瞬く間に全身に広がっていった。手足の力が抜けていく。その場に立っている事すらままならなくなり、両膝を床についてしまった。視界が歪む……先生がコンティレクト神に向けて大声で何か言っているのが聞こえるが、頭が朦朧としていて内容までは分からない。俺の意識はそこで途絶えてしまった。
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