38 / 234
37話 説明不足
しおりを挟む
そろそろ昼になるな。予定通りリズ・ラサーニュをジェムラート邸から連れ出せただろうか。セドリックの事だから上手くやっているとは思うが……
その後の状況に変化なし。クレハは相変わらず王宮に足止めを食らっている。
父上には少し見栄を張ったけど、本音を言うとクレハと一緒にいられるのは嬉しい。ずっと手紙だけで我慢していたんだ。できることなら数年後の婚儀を待たずとも、このまま王宮に――
「レオン様、ただいま戻りました」
扉を隔てた向こう側からセドリックの声が聞こえた。駄目だ……焦るな。クレハの気持ちを蔑ろにして自分本位な行いをする訳にはいかない。既に色々とやらかした後なので何を今更と……部下から突っ込みが入りそうではあるけど。
クレハは俺の一方的な想いを受け入れ、婚約を承諾してくれた。今はまだそれだけで充分だと何度も言い聞かせたじゃないか。ジェムラート家の問題を片付ける事に集中しなければならない。俺は気持ちを切り替えて、扉の外で待っている部下に入室の許可を与えた。
「どうだった、セドリック。公爵から何か聞けたか?」
「いいえ……以前陛下からお聞きした内容以上のものは特に。フィオナ様の様子がおかしいのはやはり本当のようです。突然クレハ様を王宮に預けてしまい、申し訳ないとおっしゃっておられました。そしてリズさんの件ですが、公爵は快く承諾してくださいましたよ。軽くクレハ様のご様子もお伝えしておきました。レオン様に『娘をどうかよろしくお願いします』だそうですよ」
「言われるまでもないな。後はリズ・ラサーニュ本人に了承を得るだけだな。彼女は今どうしてる?」
「店内で昼食を召し上がって頂いてます。丁度お昼どきでしたからね」
「そうか。ならもう少し待とう」
「……レオン様。リズさんは今回のことについて何か知っておられるのでしょうか。もしそうだとしても、私達にそれをお話しして下さるかどうか……」
「そうだな。見習いとはいえ彼女もジェムラート家の使用人。外部に漏らすなと口止めされているかもしれんな。だが、それならそれで構わない。屋敷に出入りしている彼女から情報を得られるかもという腹づもりはあるが、まずはクレハの為に王宮に来て貰うことが先決だ」
リズ・ラサーニュはクレハをとても慕っていると聞いている。クレハは無理に連れて来なくていいと言ったが、この目的についてはほぼ達成されているような物だな。
「それはそうと、お前なんて言って彼女にここに来て貰ったんだ?」
「私の主が会いたがっておりますので御足労願えないかと……」
「それだけか?」
「はい」
「じゃあ、リズ・ラサーニュは俺の事を一切知らされていないんだな。今から会うのもカフェのオーナーだと思ってるわけだ」
「マズいですね……」
「クレハは俺の正体知って気絶したんだぞ……」
あの時は本当に肝を冷やした。色々な要因が重なったせいもあるが、また昏倒者を出すのはごめんだ。
「クレハ様の時と状況が違うとはいえ、驚かれるのは間違いないですね……」
「食事……話が終わってからの方が良かったんじゃないか?」
「申し訳ありません。配慮が足りませんでした」
「話をする前に俺についても説明しておいた方が良さそうだな……」
食後に出して頂いた紅茶を飲みながら、店内の様子を眺めた。お客さんはやはり女性が多い。男性もいない事もないが、女性を伴っている方がほとんどだ。男性だけだと入りづらいのだろうか。お菓子は勿論だけどランチもこんなに美味しいのに……それは勿体ないなと考えていると、奥からセドリックさんが出てきた。彼が店内に出るやいなや、あちこちから女性の感嘆の声が聞こえた。……女性客が多いのはセドリックさんの存在がかなり影響しているみたいだ。
「リズさん、紅茶のおかわりはいかがですか?」
「もう充分頂きました。ありがとうございます。お料理もとっても美味しかったです」
「それは良かった。ところで、リズさん。私の主にお会いして頂く前に、お話ししておきたい事があるのですがよろしいでしょうか?」
セドリックさんの言葉に頷くと、彼は『失礼します』と断りをいれてから私の向かいの椅子に腰掛けた。
「さて、どこから話しましょう……今日リズさんに来て頂いたのは、私の主の希望というのはお伝えしましたね?」
「はい」
「リズさんも薄々気付いておられるのではと思いますが、私の主はただのカフェのオーナーではありません。特別な……とても身分の高いお方です」
やっぱり……というか納得した。この人達から感じた妙な感覚のズレは、やはり一般人ではなかったからか。セドリックさんの立ち振る舞いひとつにしても、洗練されていて気品があるもの。
「そのような方が、私にどんな御用なのでしょうか?」
ますます私とは縁が無さそうだ。しかもこんな改まって話がしたいなんて……本当にどういう事なんだろうか。セドリックさんは深く息を吐いて一呼吸すると、私の目を見ながら話し始めた。
「実は……クレハ様に関する事なのです」
「クレハ様!?」
思わず椅子から立ち上がりそうになってしまった。その衝撃でテーブルが揺れて、空のティーカップがガチャリと音を立てた。
「す、すみません」
クレハ様の名前に分かりやすく動揺してしまう。若干の気まずさを感じながら、浮かせた腰を落として椅子に座り直す。セドリックさんは『大丈夫ですよ』と話を続ける。ティーカップ割れなくて良かった……
「主がリズさんとお話ししたい事は、今のクレハ様の置かれた状況とその原因について……そして、それに対してリズさんがどう思っていらっしゃるかです」
「どうしてセドリックさんのご主人がそんなにもクレハ様を……」
セドリックさんのご主人は、クレハ様に飼い鳥を助けて貰った事をとても感謝しておられる。それは分かっている。けれど、流石にここまで気にかけているのは不思議だ。それに……今回のクレハ様の事は表沙汰にはなっていないはずなのに。
「それは、これから主にお会いすれば分かりますよ。さぁ、そろそろ参りましょうか……主がお待ちです」
セドリックさんは懐中時計で時間を確認して椅子から立ち上がると、店のバックヤードまで案内してくれた。彼の後に続いて私も中へ入ろうとすると、若い女性店員さんと入れ違いになった。彼女はメニュー表を小脇に抱えている。接客の途中なのだろう。女性店員は私と目が合うとにっこりと笑い、穏やかな声で『こんにちは』と挨拶をしてくれた。私も軽く会釈を返す。
「リズさん、こちらです」
セドリックさんに呼ばれて彼の元へ駆け寄ると、通路の1番奥の突き当たりに扉があるのが見えた。木製の重厚な扉だ。
「主はこの部屋にいらっしゃいます。きっと……リズさんは主を見たらとても驚かれると思います。でもどうか気を確かに持って下さいね。そうだ、会う前に深呼吸をしておきましょう」
ちょっとやり過ぎじゃないでしょうか。緊張はしているけど、私はジェムラート家にお仕えしているし、日頃からクレハ様のような高貴な方のお側にいる。だから……こう言っては何だが慣れているのだ。今更貴族の方とお話しをするというだけで、慌てふためいたりなどしない。
「それでは、準備は良いですか?」
「いつでもどうぞ」
私よりセドリックさんの方が緊張しているように見えるのだけど。彼はゆっくりと扉を数回ノックした。
「セドリックです。リズさんをお連れ致しました」
「入れ」
入室を促す言葉は短いけれど、よく通るしっかりとした声だった。意外だったのはその声がとても若くてまるで……
セドリックさんが部屋の扉を開けた。
この後、私は部屋の中の人物と対面したのだけれど、セドリックさんが心配していた通りの反応をしてしまう事になる。彼の言う通り、深呼吸なりしてもう少し衝撃に備えておくべきだったと後悔した。
その後の状況に変化なし。クレハは相変わらず王宮に足止めを食らっている。
父上には少し見栄を張ったけど、本音を言うとクレハと一緒にいられるのは嬉しい。ずっと手紙だけで我慢していたんだ。できることなら数年後の婚儀を待たずとも、このまま王宮に――
「レオン様、ただいま戻りました」
扉を隔てた向こう側からセドリックの声が聞こえた。駄目だ……焦るな。クレハの気持ちを蔑ろにして自分本位な行いをする訳にはいかない。既に色々とやらかした後なので何を今更と……部下から突っ込みが入りそうではあるけど。
クレハは俺の一方的な想いを受け入れ、婚約を承諾してくれた。今はまだそれだけで充分だと何度も言い聞かせたじゃないか。ジェムラート家の問題を片付ける事に集中しなければならない。俺は気持ちを切り替えて、扉の外で待っている部下に入室の許可を与えた。
「どうだった、セドリック。公爵から何か聞けたか?」
「いいえ……以前陛下からお聞きした内容以上のものは特に。フィオナ様の様子がおかしいのはやはり本当のようです。突然クレハ様を王宮に預けてしまい、申し訳ないとおっしゃっておられました。そしてリズさんの件ですが、公爵は快く承諾してくださいましたよ。軽くクレハ様のご様子もお伝えしておきました。レオン様に『娘をどうかよろしくお願いします』だそうですよ」
「言われるまでもないな。後はリズ・ラサーニュ本人に了承を得るだけだな。彼女は今どうしてる?」
「店内で昼食を召し上がって頂いてます。丁度お昼どきでしたからね」
「そうか。ならもう少し待とう」
「……レオン様。リズさんは今回のことについて何か知っておられるのでしょうか。もしそうだとしても、私達にそれをお話しして下さるかどうか……」
「そうだな。見習いとはいえ彼女もジェムラート家の使用人。外部に漏らすなと口止めされているかもしれんな。だが、それならそれで構わない。屋敷に出入りしている彼女から情報を得られるかもという腹づもりはあるが、まずはクレハの為に王宮に来て貰うことが先決だ」
リズ・ラサーニュはクレハをとても慕っていると聞いている。クレハは無理に連れて来なくていいと言ったが、この目的についてはほぼ達成されているような物だな。
「それはそうと、お前なんて言って彼女にここに来て貰ったんだ?」
「私の主が会いたがっておりますので御足労願えないかと……」
「それだけか?」
「はい」
「じゃあ、リズ・ラサーニュは俺の事を一切知らされていないんだな。今から会うのもカフェのオーナーだと思ってるわけだ」
「マズいですね……」
「クレハは俺の正体知って気絶したんだぞ……」
あの時は本当に肝を冷やした。色々な要因が重なったせいもあるが、また昏倒者を出すのはごめんだ。
「クレハ様の時と状況が違うとはいえ、驚かれるのは間違いないですね……」
「食事……話が終わってからの方が良かったんじゃないか?」
「申し訳ありません。配慮が足りませんでした」
「話をする前に俺についても説明しておいた方が良さそうだな……」
食後に出して頂いた紅茶を飲みながら、店内の様子を眺めた。お客さんはやはり女性が多い。男性もいない事もないが、女性を伴っている方がほとんどだ。男性だけだと入りづらいのだろうか。お菓子は勿論だけどランチもこんなに美味しいのに……それは勿体ないなと考えていると、奥からセドリックさんが出てきた。彼が店内に出るやいなや、あちこちから女性の感嘆の声が聞こえた。……女性客が多いのはセドリックさんの存在がかなり影響しているみたいだ。
「リズさん、紅茶のおかわりはいかがですか?」
「もう充分頂きました。ありがとうございます。お料理もとっても美味しかったです」
「それは良かった。ところで、リズさん。私の主にお会いして頂く前に、お話ししておきたい事があるのですがよろしいでしょうか?」
セドリックさんの言葉に頷くと、彼は『失礼します』と断りをいれてから私の向かいの椅子に腰掛けた。
「さて、どこから話しましょう……今日リズさんに来て頂いたのは、私の主の希望というのはお伝えしましたね?」
「はい」
「リズさんも薄々気付いておられるのではと思いますが、私の主はただのカフェのオーナーではありません。特別な……とても身分の高いお方です」
やっぱり……というか納得した。この人達から感じた妙な感覚のズレは、やはり一般人ではなかったからか。セドリックさんの立ち振る舞いひとつにしても、洗練されていて気品があるもの。
「そのような方が、私にどんな御用なのでしょうか?」
ますます私とは縁が無さそうだ。しかもこんな改まって話がしたいなんて……本当にどういう事なんだろうか。セドリックさんは深く息を吐いて一呼吸すると、私の目を見ながら話し始めた。
「実は……クレハ様に関する事なのです」
「クレハ様!?」
思わず椅子から立ち上がりそうになってしまった。その衝撃でテーブルが揺れて、空のティーカップがガチャリと音を立てた。
「す、すみません」
クレハ様の名前に分かりやすく動揺してしまう。若干の気まずさを感じながら、浮かせた腰を落として椅子に座り直す。セドリックさんは『大丈夫ですよ』と話を続ける。ティーカップ割れなくて良かった……
「主がリズさんとお話ししたい事は、今のクレハ様の置かれた状況とその原因について……そして、それに対してリズさんがどう思っていらっしゃるかです」
「どうしてセドリックさんのご主人がそんなにもクレハ様を……」
セドリックさんのご主人は、クレハ様に飼い鳥を助けて貰った事をとても感謝しておられる。それは分かっている。けれど、流石にここまで気にかけているのは不思議だ。それに……今回のクレハ様の事は表沙汰にはなっていないはずなのに。
「それは、これから主にお会いすれば分かりますよ。さぁ、そろそろ参りましょうか……主がお待ちです」
セドリックさんは懐中時計で時間を確認して椅子から立ち上がると、店のバックヤードまで案内してくれた。彼の後に続いて私も中へ入ろうとすると、若い女性店員さんと入れ違いになった。彼女はメニュー表を小脇に抱えている。接客の途中なのだろう。女性店員は私と目が合うとにっこりと笑い、穏やかな声で『こんにちは』と挨拶をしてくれた。私も軽く会釈を返す。
「リズさん、こちらです」
セドリックさんに呼ばれて彼の元へ駆け寄ると、通路の1番奥の突き当たりに扉があるのが見えた。木製の重厚な扉だ。
「主はこの部屋にいらっしゃいます。きっと……リズさんは主を見たらとても驚かれると思います。でもどうか気を確かに持って下さいね。そうだ、会う前に深呼吸をしておきましょう」
ちょっとやり過ぎじゃないでしょうか。緊張はしているけど、私はジェムラート家にお仕えしているし、日頃からクレハ様のような高貴な方のお側にいる。だから……こう言っては何だが慣れているのだ。今更貴族の方とお話しをするというだけで、慌てふためいたりなどしない。
「それでは、準備は良いですか?」
「いつでもどうぞ」
私よりセドリックさんの方が緊張しているように見えるのだけど。彼はゆっくりと扉を数回ノックした。
「セドリックです。リズさんをお連れ致しました」
「入れ」
入室を促す言葉は短いけれど、よく通るしっかりとした声だった。意外だったのはその声がとても若くてまるで……
セドリックさんが部屋の扉を開けた。
この後、私は部屋の中の人物と対面したのだけれど、セドリックさんが心配していた通りの反応をしてしまう事になる。彼の言う通り、深呼吸なりしてもう少し衝撃に備えておくべきだったと後悔した。
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?
あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」
結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。
それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。
不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました)
※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。
※小説家になろうにも掲載しております
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
完 あの、なんのことでしょうか。
水鳥楓椛
恋愛
私、シェリル・ラ・マルゴットはとっても胃が弱わく、前世共々ストレスに対する耐性が壊滅的。
よって、三大公爵家唯一の息女でありながら、王太子の婚約者から外されていた。
それなのに………、
「シェリル・ラ・マルゴット!卑しく僕に噛み付く悪女め!!今この瞬間を以て、貴様との婚約を破棄しゅるっ!!」
王立学園の卒業パーティー、赤の他人、否、仕えるべき未来の主君、王太子アルゴノート・フォン・メッテルリヒは壁際で従者と共にお花になっていた私を舞台の中央に無理矢理連れてた挙句、誤り満載の言葉遣いかつ最後の最後で舌を噛むというなんとも残念な婚約破棄を叩きつけてきた。
「あの………、なんのことでしょうか?」
あまりにも素っ頓狂なことを叫ぶ幼馴染に素直にびっくりしながら、私は斜め後ろに控える従者に声をかける。
「私、彼と婚約していたの?」
私の疑問に、従者は首を横に振った。
(うぅー、胃がいたい)
前世から胃が弱い私は、精神年齢3歳の幼馴染を必死に諭す。
(だって私、王妃にはゼッタイになりたくないもの)
【完結】番が見つかった恋人に今日も溺愛されてますっ…何故っ!?
ハリエニシダ・レン
恋愛
大好きな恋人に番が見つかった。
当然のごとく別れて、彼は私の事など綺麗さっぱり忘れて番といちゃいちゃ幸せに暮らし始める……
と思っていたのに…!??
狼獣人×ウサギ獣人。
※安心のR15仕様。
-----
主人公サイドは切なくないのですが、番サイドがちょっと切なくなりました。予定外!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる