リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜

ゆずき

文字の大きさ
上 下
33 / 246

32話 疑問

しおりを挟む
「とっても可愛いわ! クレハちゃん。お茶会の時に着ていた水色のドレスも似合ってたけど、黄色もいいわねぇ。あっ、次はこっちのピンクのを着てみてちょうだい。デザインはシンプルだけど裾の刺繍が素敵なのよ」

 現在私は王妃様のお部屋に招かれ、1人ファッションショー状態になっている。今着せて頂いているのは淡いピンク色のドレスだ。生地は軽くて柔らかい……そして着心地がとても良い。王妃様がおっしゃっている通り、裾に施された刺繍がとても綺麗。フリルいっぱいのひらひらしたドレスも華やかで素敵だと思うけれど、自分はこういう落ち着いたドレスの方が好みだ。
 それにしても、次から次へと出てくる色とりどりの豪華なお衣装と装飾品に目がチカチカする。そして気になる事に、着せられる服のサイズが全て私の体にピッタリなのだ。王宮で採寸などした覚えはない。うん……これについてはあまり深く考えてはいけないような気がした。

「こんなにたくさんのお洋服を私の為に用意してくださったのですか?」

「そうよ、私こういうの憧れてたの。うち男の子ばっかりでしょ? こんな風に可愛いドレス着せたり、選んだりできないからつまんなくて。愛らしいお嬢様が2人もいるジェムラート夫人が羨ましかったのよ」

 そ、そういうものなのかな……言われてみれば、お母様も私や姉様に色んなお洋服を着せたがるしなぁ。自分はお洒落とか流行には疎いからよく分からないけれど、王妃様が楽しいなら……まぁいっか。

「王妃様、ありがとうございます! でもこんなにたくさん申し訳なくて……」

 ざっと見る限りでも10着はある。しかもどれもお値段が張るようなものばかりだ。

「遠慮なんてしなくていいの。私が好きでやってるんだから。それに、クレハちゃんはしばらくこっちにいるんだし着替えは必要でしょ」

「えっ?」

「あら、もうこんな時間ね。一息入れてお茶にしましょうか? そろそろレオンも戻ってくるだろうし」

「はい……」

 時刻は午前10時を回ろうとしている所だった。王妃様は侍女にお茶の用意をするよう指示を出す。レオンは午前中はお勉強の時間なので、その間ひとりになった私は王宮の庭園を散歩していた。そこで王妃様が声をかけて下さり今に至る。

「今日のお茶請けは『シャルール』のチョコチップクッキーです。クレハちゃんクッキーは好き?」

 シャルールのクッキー!?

「はい! 大好きです。シャルールのお菓子は前にレーズンバターサンドを頂いた事があるんですけど、とっても美味しくて……わぁ、クッキーも楽しみです!!」

「フフッ、良かった。それじゃこっちのテーブルに来て席についてちょうだい。飲み物は紅茶でいいかしら?」

「はい!」

 私が王宮に来てから今日で5日目。初日に体調を崩して倒れてしまったから泊まることになったのだけど、いつの間にかズルズルと滞在が延びてしまっている。その理由は家からの迎えが来ないからだ。次の日も、その次の日も……何の連絡も無いまま私は王宮に留まる事になってしまった。さすがにこのままではいけないと思い、セドリックさんに家までの馬車を手配して頂けないかとお願いしたのだが『そのうち来ますよ。のんびりお待ち下さい』とはぐらかされてしまった。
 王宮にいるのが嫌なわけじゃない……でも、どうして誰も理由を教えてくれないのだろう。もしかして、家で何かあったんじゃ……

「やっぱり心配だよ……」

「何が?」

「わっ! レオン?」

「ただいま。クレハ」

 びっくりした……。私の独り言に相槌を打って来たのはレオンだった。お勉強はもう終わったみたいだ。どうして王妃様の所にいるのが分かったのかな。

「おかえりなさい……」
 
「それ、よく似合ってる。可愛い」

 最初は何について言っているのか分からなかったけど、今着ているドレスの事だと遅れて理解した。

「でしょう!」

 レオンの言葉を聞いた王妃様が、得意気に胸を張っている。

「さすが母上、良い見立てですね。でも……」

 レオンがそっと私の頬に触れる。

「着てる子が可愛いから、どんな服を着てても可愛いんだけどね」

「へっ……えっ!?」

「あらあら……クレハちゃんたら」

「クレハ、顔真っ赤だよ? ほんと可愛いね」

 これ、わざとやってるんじゃないだろうか……絶対私の反応を見て楽しんでるよね。レオンにいいように翻弄されている自分が悔しいやら恥ずかしいやらで、ますます顔が赤くなる。 

「もう! レオンは私をからかって……」

「ほら、レオン。お茶が入ったからあなたも座りなさい。あんまりクレハちゃんをいじめちゃダメよ」

「いじめてるつもりは毛頭ないのですが……俺はただ思った事をそのまま口に出してるだけですよ」

 王妃様は額に手を添えて大きな溜息をついた。レオンは本当に10歳なんだろうか……。私に対する言動や振る舞いがとても同年代のそれとは思えない。

「クレハ。はい、あーん」

「ふあ?」

 振り向きざまに半開きだった口の中に、何かを入れられた。おそるおそる歯を立ててみると、サクッとした食感と共にチョコレートの良い香りが広がっていく。これはチョコクッキー?

「美味しい?」

「……はい」

 さすがシャルール……。口溶けの良い上品なチョコレートにバターの風味豊かなクッキー生地……文句無しに最高です。紅茶にも合いそう……って。

「じっ、自分で食べられます!!」  

 私の口元に次のクッキーを差し出してきたレオンを慌てて制止した。

「そう? 残念」

 レオンはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべている。私は恥ずかしさを誤魔化すように、王妃様の淹れて下さった紅茶を勢いよくあおった。そして咽せた。

「ちょっとクレハちゃん、大丈夫?」
 
「ゴホッ……だ、だいじょぶ……です」

「クレハったらしょうがないなぁ……」

 私の背中をさすりながら、レオンはわざとらしく呆れて見せる。一体誰のせいだと思ってるんだ。私は抗議するように彼を見つめるが、レオンは機嫌良さそうに笑ってるだけで全く効果は無かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから

よどら文鳥
恋愛
 私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。  五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。  私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。  だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。 「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」  この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。  あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。  婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。  両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。  だが、それでも私の心の中には……。 ※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。 ※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

処理中です...