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第2章

第13話 再出発 ③

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 あれから1か月立った。
ジャンヌは、キアラがなじむまでの条件で面倒を見ることになった。
 キアラの記憶は、先代に宝石心臓(セラフィム)を入れるまでしか覚えていないようだ。銀の街での出来事は話したが、死ぬためにジャンヌを襲ったことは、伏せておいた。今のキアラには伝えなかった。
教会の教えをまだ抜け切れていないのか、たびたび祈りを捧げている。
 それが原因で周囲の聖女から嫌っている。
 教会に入った聖女や捕まった聖女は見放されているにも関わらずに救出したことに疑問を持つ聖女や教会を嫌う聖女から特に。
 それに教会の考えを抜けきれず、教会のために裏切る原因にもなるからだった。
 キアラは孤立してしまった。
 それに修行の成果もあまりよくない。
 イヴと一緒にキアラの修行を見ている。これもジャンヌを監視するためでもある。
 1ヶ月経っても力を操れない。
 先代の宝石心臓(セラフィム)を奪ったとはいえ、銀の街ほどではないが、力量はある。力の加減ができず、浪費が激しいのか、すぐに体力が切れてしまう。
「ごめんなさい・・・」
 キアラは謝る。
「なんで謝るの?」
 イヴは優しく尋ねる。
「期待に答えられなくてごめんなさい・・・」
「今日はここまでにしましょうか」
「はい・・・」
 キアラは部屋へと戻る。背中や足がとても重く見えた。
「彼女のそばにいてあげて」
 イヴが去ろうとしたが、訊きたいことがあった。
「キアラは力の制御できるんですよね」
「何心配しているのよ。あとは彼女の気持ちの問題ね」
 おそらく力を恐れているのだろう。
以前、キアラから聞いた話では、カリーナを殺してしまった。その時の傷がまだ癒えていない。
「聖女に目覚めても『光』を使えないことはあるんですか」
「あるわ」
 イヴは静かに答える。
「『光』を得るまでが完全なる聖女なの。聖女によってだけど、得られないまま終わってしまった聖女もいたわ。未完成な聖女は、とても微量で私やマリアでも気付かないこともあるの。気付いた時には教会にいたなんていくつもあった」
「イヴ様でも分からないこともあるんですね」
「聖女は万能じゃないの」
 イヴは少しイタズラな笑みで見せる。
「キアラの場合、未完成な聖女で、先代の宝石心臓を入れたことで一気に覚醒したんでしょうね。今は完全に聖女となっている。『光』を操ることを覚えるの。だから修行期間が必要なの」と言ってイヴは去った。
 


 「くっそ・・・」
 アキセは森の中、木に体を預けながら歩いていく。
この1か月はろくなことがなかった。
ラプラスに適当な森の中に落とされた。数か所骨を折り、さらに怪我を増した。
近くに隠家もなく、転送できるコルンの発明品は切れ、魔術で転送しようにも体内に残っている銀の血の『光』の影響か、魔術が発動できなかった。
仕方なく近くの洞窟に隠れることにした。獣ような暮らしが嫌になる。
1か月に立っても回復遅かった。やっと傷が塞いたが、体中は回復しきれず、補助がないと歩けないほどだ。
 こんな状態で戦いに巻き込まれたら。
「見~つけた!」
 その一言に思わず身震いがした。
 そして、鈴の音で声の主が該当した。
 振り返れば、風鳴の魔女ウィム・シルフが宙に浮いていた。
――こんな時に
「聞いたよ。彼女と一緒に銀の街を滅ぼしたって」
「噂好きなくせに誤報が混ざってるぞ」
 わざと話を盛ったに違いない。
「何よ。噂はどこかで誤報になるものよ。それに久しぶりにラプラスが出たってね」
「うん。そうだねーすごいねーじゃあ、俺はここで」
 ウィムは確実に何か企んている。さっさと立ち去らなければ。
「君怪我してるんだよね」
――気付かれた。
「だから、看病してくれる子を呼んでおいたよ」
「は?看病?誰が?」
 その時、ドーンと大きく地面が揺れた。
「ここで仕留めてやる!」
 聞いたことのある声。
 鉄人形を乗った工作の魔女コルン・ゴボルドだった。
――クソアマ!
 こんな体の調子が悪い時に来るとは。
「じゃあ、ゆっくり看病してもらってね」
 ウィムは楽しそうに手を振って去っていった。
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