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第2章

第12話 銀の街 後半 ②

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「本当にこれしかなかったの」
 不満たっぷりにいう。
 今は、アキセが着ている『なんでも遮断マント』に一緒にくるみ、逃げているところだった。
 転送する道具がなく、姿を消し、さらに通り抜けができる『通り抜けライト』で近道しながら、町の外まで向かっている。
 『通り抜けライト』は、ライトに当てれば、30秒ほどだけ通り抜けできる。ライトの大きさも可能。
 もう夜は遅く、人通りが少ない。何も起こらなければ、朝には抜ける計画になっている。
 右は教会、左は中庭へと繋がる長い廊下を歩いているところだった。
「だから言ったろ。これしかないって」
 どさくさに紛れて体を触りそうで。
「道も分かっているんでしょうね」と強めに言う
「分かってるって」
 『光』の濃度が高いので、空を飛んで逃げるのもあるが、目立って狙い撃ちかねない。しかもジルコニアを使うとしたら、逃げられない。
 それにヴァルキリーがいては難しいか。
 その時背後から気配がした。
 アキセを押し飛ばす。
 アキセのいた場所には、ヴァルキリーが聖剣ヴァルホルで突いていた。
 アキセが突き刺されるところだった。
 ヴァルホルはそのまま横に払う。瞬時にロザリオに光の刃を作り、ヴァルホルを受け止める。
 やっぱりヴァルキリーが捕獲にやってきた。
 予想はしていたが、早すぎる。
 あの部屋から出る時も少しの時間稼ぎに部屋の扉に爆発を仕掛けたが、発動もしていないはどういうことだ。なぜ、脱出したことを分かったのか。
 今はその原因を考えるよりも、ヴァルキリーに対応しなければ。
 ヴァルキリーの襲撃は予想していた。対策にアキセは考えてあると言っていたが、コルンの発明品しかない。何をするのやら。
「離れろ!」
 アキセの言う通りにヴァルキリーから離れる。
 その時、ヴァルキリーの頭上から巨大な箱が落ちていく。
――対策ってこれ?
 あの箱に閉じ込めることだけだろうか。
 走ってくるアキセに腕を掴まれたまま空へと飛ぶ。
 え?空に飛ぶ。
アキセの背中に装着するひし形の箱から翼が生えている。
 コルンの発明品だろう。
「やっぱりあるじゃないの!」
「今思い出した!」
「あんたの道具管理どうなっているのよ」
 少し呆れて言う。
もう建物の上にまで飛んでいる。
 いや、空に飛んでも。
「このまま町の外まで・・・」
 アキセが青ざめた。
 まさかとは思うが。
下を向けば、ヴァルキリーが空中を走っている。正確にはヴァルキリーの足に『光』を結晶化し、足場として走っている。
 ヴァルキリーが光の刃を飛ばす。
 アキセは避けた瞬間にヴァルキリーと距離が縮み、ヴァルキリーがヴァルホルを振り下ろす。
 アキセを狙うつもりだ。
 足を伸ばし、ヴァルキリーに向けて白い炎を噴射する。アキセを引っ張りながら、ヴァルキリーから距離を取る。
 白い炎の壁から光の衝撃波が迫ってくる。対抗して白い炎を向ける。
 光の衝撃波と白い炎がぶつかり、その衝撃波でアキセと離れてしまう。
このままでは落下する。足に『光』を集中し、白い炎を噴射する。落下の勢いを抑えながら、地上に足がつく。
 安堵の溜息を吐き、周囲を確認する。
 銀の水しぶきを上げている池がある中庭にいるようだった。
 銀の水には触れてはいけない。白い炎が触れた時に銀の水にノエルまで連れてかれた。
 気を付けなければ。
「あ~死ぬかと思った・・・」
 アキセの声がした。生きていたようだ。
まあ、死んではこっちも困るが。
アキセは少し離れた中庭の花壇に落ちていた。
「やべ、道具こわれた」
 よく見れば、翼がいつの間にかなくなっていた。
 もう空へ逃げる退路がなくなった。
 その時、上空から『なんでも遮断マント』に光の刃が刺さる。
「え?!」 
 アキセの動きが封じた。
 あのマントは『光』を遮断している。マントを破かれれば、効果はなくなる。下手に動けないのだろう。
 上を見れば、ヴァルキリーが上空から一直線に狙う。
「ちょ!」
 アキセでは対応できない。
 アキセに攻撃する前に、ジャンヌはヴァルキリーの腰に飛び蹴りし、一回転して着地する。
 ヴァルキリーは飛ばされながらも体勢を戻し、地面に足をついた途端に距離が縮む。
 ロザリオで迎え撃つが、ヴァルキリーに銀の塊が当たり、奥へと飛ばされる。
「銀の血・・・」
 まさか。
「み~つけ~た~」
 銀の水の池からノエルが立っていた。
 ノエルが目から銀の水を垂らし、不気味に笑う。

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