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第2章

第9話 手探の魔女⑥

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「どこにいった・・・」
 アキセはパウロを探しに裏方を歩いていた。
 舞台上で『手』が投げてきた椅子や死体をジャンヌと一緒に避けた時に巨人の『手』に捕まった。しかし、ジャンヌが虚空に注がれた白い炎に焼かれ、自由になった。ジャンヌに尋問する前に去った。
 迷路のような狭い道。
――あいつだけはこの手で殺してやる
 狭い廊下の角を曲がれば、頭がない死体があった。服装からみてパウロに間違いがなかった。
 殺された。
 魔女に殺されたにしても、サヴァンナは手を欲していた。手で千切ったような後もない。血が破裂したように壁や床に散らばっている。
銃に撃たれた。誰に。
頭が残っていれば、魔術で記憶を辿れるができない。考えても答えが出ない。
誰がやった。


 翌日。
ジャンヌは橋の上で考えていた。
オークション会場は、魔女の出現により死者が多数。あとの片づけは警察に任せた。
今回はスッキリしない。
 『魔女の手』はアキセにより破壊したようだ。
ただあの手は魔女の物ではないが、魔力は本物らしい。
 アキセと似た力。
 アキセが狙っていたのはなぜだろうか。アキセの性格を考えれば、同じ力を持っていることに気にいらないから狙ったのだろうか。
 考えても答えが出ず、イラつきついた時だった。
「おい」と唐突に肩に掴まれた。
「ぎゃ!」と思わず川に投げた。アキセだと思ったが、よく見ればリカルドだった。
「あ・・・」
 川には轟音がした。



 泳げないので、岸に上がるまで待っていた。
濡れていながらもリカルドは無言で岸に上がる。
 やはり怒っている。
 泳げないからにしても助けに来ないのは薄情だと思っている。リカルドが泳げてよかった。
いつの間にか魔術の杖の一つである指飾りをいつの間にかつけ、記号を描き、簡単に服を乾かす。
「あの・・・本当にごめん・・・」
――これは素直に謝るしかない
「話聞いてくれるよな」
「うん・・・そうね・・・」
 

「一応、目的の物は破壊したわよ」
 取引の結果を話した。
「そうか」
 反応が薄かった。怒っているのもあるだろう。
「質問の前に。あなた、客席のどこかにいたでしょ」
「気付いたか」
「魔女が銃を撃った時に弾の逆行をしたでしょ」
「そうだな」
「じゃあ、取引通りね。何もしてくれなかったら、取引は無効にしようと思ったのよ」
「俺を川に落としておきながらか」
「う・・・」
根に持ってる
「ちなみにどうやったの?」
 話題を変える。
「魔術をしただけだ」
 魔術師だからそうだけど。
「詳細を聞きたいか。あと1時間ほどの説明になるが、それでも聞くか?」
「分かりました。もういいです。質問してあげます」
 面倒くさくなったので、質問を終わらせて終わりにしよう。さて、どんな質問をするのか。
「第5次世界大戦の終結を知っているのか」
 その質問はあまりにも世間に知られている内容だったので、気が抜けてしまった。
「ラプラスが知恵を奪ったからじゃないの」
 第五次世界大戦。聖女、魔女・魔族、人間で世界中戦乱が続いた戦い。イヴやマリアでも歴史の中で一番悲惨だったと聞く。だか、その戦いを治まったのは、しょかんの魔女ラプラス・ライブラーが全人類から知識を奪ったからとも聞いている。
 それしか知らない。なぜ最も知られている歴史を訊くのだろうか。
「そうか」
 ジャンヌの回答に対してもあまりにも反応が薄かった。
「聖女も大したことないな」
「何よ。質問してそのセリフは」
 不機嫌に返す。
「質問はそれだけ?」
「ああ。参考になった」
 リカルドは歩いていった。
「失礼な奴」と言って、ジャンヌも歩き出す。
 

 リカルドは歩き出すジャンヌを眺めていた。
「結局あれを使わないとダメか」と呟く。
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