上 下
70 / 155
第2章

第7話 墨鯉の魔女②

しおりを挟む
「ん~」
 アキセは魔術に必要な杖専門の店で悩んでいた。
 指揮棒型。爪飾り型。銃型と溢れていた。
「じいさん。ここで一番性能が高いヤツってある?」
 店長である年寄りの男に訊く。
「ならこれ」
 店長が取り出したのは、記号が刻み、魔法石をはめてある銃だか、見たことのない形態だった。長いバレルだかところところ穴が空き、全体的に長方形な銃だった。
「へ~」
 他には見たことのない銃だったため、思わず関心する。
「これは銃に術と魔法石を仕込んであるから、魔弾だけでも威力があるが、実弾を入れば、さらに倍増する。しかも一発で屋敷一つ破壊できるほどだ。人もまともに受ければ、爆発するおっそろしい~武器だ。欠点と言えば、実弾を撃った反動がかなりあるってことくらいだ。他にはない代物だ!」
 店長が自慢げに言うが、それはほしい。
「へ~ちなみにいくら」
「金貨50枚」
「それは高くねえか」
「これが妥当だね」
「もうちっと安くしてくれないか」
「どのくらい」
「金貨1枚で」
「出で行け!」
 店から追い出された。
――ち!くそじじめ
 あの銃は他にはない。あとで盗んでやると決めた時だった。
 体中に虫が走っているような不快感。妙な鳥肌に寒気。
 リリムは、近くにいれば、リリスの血で互いに分かる。しかし、そんなものではない。
 何かが共鳴した感覚だった。
「なんだ?今のは?」



リカルドが急に振り返った。
「何?急に?」
「いや、なんでもない」とリカルドは前に歩き出す。
 やはり、怪しすぎるが、取引で町の外まで案内してくれるから、少しは目をつぶる。
素性を隠すため、顔までフードをかぶるジャンヌは、町の中を歩いていた。
「なんか、騒がしくなってない?」
 警備隊と思われる人たちが慌てて走っている。
「そういえば、結界を何枚か破壊されたらしいからな」
「結界?」
「魔術師がくれば、知識や技術も集まっている。ノレッジの餌場になってるんだ」
 ノレッジは、しょかんの魔女ラプラス・ライブラーの使い魔で人間の知識を奪う。
「ノレッジの進入を防ぐために結界を何重に張っているんだ」
「それって・・・」
「君が不本意に壊したんだろう」
 川に流れている時、結界に触れたんだろう。
「結界修正と原因に探っているんだろう。これが君だって分かれば、殺しにかかるだろうよ。魔女宗教の管理の元だからな」
「これ以上面倒ごとに絡みたくないんだけど」
「そうはならない。もう着いた」
 大きい門に繋がる橋だった。
「取り締まりが起こっていないようだ。今の内に出た方がいいだろう」
「そうね。今すぐに出たい」
「その前に質問いいか」
――そうだった取引していたんだった。
「本当にそれだけでいいの?」
「ああ」
 質問一つで終われるなら安いものか。
「私が答えられるなら」
 重要情報はさすがに流さないが。多少は教えてやる。
「おまえは・・・」
 その時だった。
「あ!ジャンヌさ~ん!」
 鳥肌が立つジャンヌ。
 とても聞いたことのある声だった。
 入門から魔女辞典を作っているというおかしなナタル・イーブラーが近づいていく。
 しかも笑顔で手を振りながら走っていく。
 目立つ。目立つ。
「久しぶりです~!」
 ジャンヌは逆方向に全力で逃げる。


 ジャンヌは諦め、ナタルに追いつかれた。
ナタルを引っ張り、一通りのない道に連行すし、壁に抑える。
「久しぶりですね!ジャンヌさん!」
 呑気に言う。
「ちょっと!再会の喜びを後にしてくれる」
「そうですよね。ここ魔女宗教の領地ですしね」
「だったら、あんな人のいる前で大声を出さないでよ。面倒になるでしょうが」
 一瞬、冷や汗をかきそうになった。
「いや~聖女様が任務とかで来ているモノかと・・・魔女ですか!」
 ナタルの目がキラキラ輝く。
「魔女ですね!一緒に行っていいですか!」
「違う!」
「ダメですか!」
「ダメ!てかそもそもなんでここにいるわけ?」
 ナタルに訊く。
「実は、ここにウィーン辞典があるんですよ」
「ウィーン辞典って魔女文字(ウィーンもじ)を全部収めたっていう本のこと」
「はい、そうなんですよ。魔女文字(ウィーンもじ)は、じていの魔女マリカラ・ウィーンが作ったと言われています。彼女のおかげで、すべての魔女名に使われているんですよ・・・」
 ナタルの解説がとても長かったので、もう聞いていない。
「すべて5冊あると言われ、ここに1冊。後2冊はどこかの魔女宗教、学術の町にあると言われ、あと一つは不明で、最後の本は誰かが個人で持っているとも言われているんですよ。
でもよく考えたら、あのしょかんの魔女ラプラス・ライブラーがなぜ奪っていないのかも不思議なところなんですけどね」
 口が止まらない。
「はいはい。今あなたの解説を聞く気ないから」
「ジャンヌさんも一緒にウィーン辞典見にいきませんか?」
 何を言っているんだ。
「あのね!今の状況分からないの。私は今すぐこの町から出たいの!」
 ジャンヌは怒鳴り上げる。
「いつまで話が続くんだ」
 別の声をした思えば、リガルトが不機嫌そうな顔で見ていた。探しに来てくれたようだ
「リカルド・・・」
「知り合いなのか」
「まあ・・・」
 別の意味で知り合いにしたくない。
「あれ?アキセさんと一緒じゃないんですね」
「アキセ?」
 リカルドが首をかしげる。
「あ~ジャンヌさんと交尾したい方です」
 壁に殴る。
「あんた。そんな目で見ていたのか・・・」
「そんなことないですよ。じゃあ、行きましょう」
 急に話をそらし、ジャンヌを無理やり引っ張る。
「ちょっと!」
 リカルドは溜息を吐く。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

処理中です...