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第1章
第5話 ナリカケ 後半②
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さっきから逃げてばかりだ。
ナリカケ、サイクロプス、リリムに魔女から逃げている。
今日は厄日だと悔やみながら、木の陰でアキセに刺された腹の手当てをする。
ただ一番腹が立つのは、半日に2回もアキセに騙されたことだ。魔女よりもアキセに踊らされるのが嫌になってきた。
「お~い、いつまでかかっているんだ」
アキセの声がした。何もなかったように声をかける。さらに怒りが燃え上がり、木の陰から出る。
「お、やっと出できた」
すたすたとアキセに近づき、ゴツとアキセの顔に一発殴り、すかさず胸蔵を掴む。
「これで気が済んだ?」
こんな状態でもヘラヘラとしている。ムカつく。
「済んでたまるが!」
怒声を上げる。怒りは治まらない。
「いつからだ!」
「もう最初から」
「最初からって・・・」
サイクロプスと戦った時にはすでに正気にいたことになる。
「村に立ち寄った時、あの魔女に会ってさ。魔女は、錯乱の魔女セイラム・ハバ―ト。どうやら人を操る魔女で、あの村はもう魔女が支配していたんだ。危うく操らそうだったんで、俺の自慢の魔力で、自分にかかった『タタリ』をバレないように奪ったわけ。あとは隙を狙って逃げようとしたけど…どうやらあの魔女、記憶も見られるみたいで、ジャンヌの関係を知って、襲撃命令下ってさ。今に至るわけよ」
「だからって!わざわざ腹をナイフで刺すことになるわけ!」
「ちょっととりあえず落ち着け」とレオンの声がするが、今怒りで頭がいっぱいで耳に入らない。
「しゃ~ないだろう。そう言われていたし。それに操られたフリするのも大変だったんだぜ。バレないように『タタリ』を調整しながら苦労した俺に敬えよ」
あ~ちくしょー殴りたい。殴り殺したい。今すぐ殺したい。
ジャンヌの頭の中はナリカケよりもアキセに対する殺意でいっぱいだった。
「まあ今回は、さすがに俺だって悪いと思っているからさ」
「あんたに罪悪感を持っていることに驚く!」
「こんな時にもめるなんて余裕あるんだな。今人手いるだろう」
その一言で悩ませる。アキセに言っていることが正論で腹の虫が収まらない。
ナリカケを倒さなければならない。本来ならアキセを半殺しするよりも優先するべきことだ。
「なあ、聖女。落ち着け」
レオンが横に入る。
「確かにこいつのやったことは許せないのは分かるけど、いつまでも口喧嘩する気か」
あと早く解放されたいしとレオンは小さく付け加える。
レオンの言っていることも正論だ。
悔しながらも悪態をつけ、アキセを突き放す。
確かに今は内輪揉めしている場合ではなかった。腹に怪我を負わせ、『光』も消耗している。今の状態では一人でナリカケを倒せるか半々だった。しかし、ここで見逃せば、後々、
厄介なことになるのは確実だった。猫の手も借りたいほどだか、レオンはまだしも、先ほど怪我を負わせられたアキセと協力することになる。本当は本当は本当は組みたくない。でも現状的に考えたらと頭を悩ませる。
「うわああああああああああああ」
ジャンヌは髪が乱れるほど頭をかきながら叫び、怒りが収まらず、近くにあった木に思いっきり殴りつける。木は軋みながら倒れていく。
ジャンヌの怒りに怖気づいたのか、アキセとレオンは言葉が出なかった。
ジャンヌは息を上がりながら、「本当に手伝うんだな!」とアキセに怒鳴る。
もう私情よりも仕事を優先する。もう仕方なく協力するしかこの事件は終わらない。そして、溜まった鬱憤を後でアキセにぶん殴ればいい。
ジャンヌはアキセににらみつける。
「しますって!もうあっちは俺を敵認識しているし。裏切ろうが逃げようが殺されるだろうし。期待にお答えしますよ。聖女様」
「逃げたら、ぶっ殺すからな!」
釘をさす。
「はいはい」
アキセがいう。
いろいろと言いたいことはあるが、今は落ち着こう。あの魔女の計画を阻止しなければ。大きく深呼吸して吐いて、落ち着かせる。空を見上げれば、曇っている。
「レオン。あの雲を払える?」
「できるけど、さっきも言ったが、時間がかかるぞ」
「どのくらい?」
「最短で10分くらい」
「10分か・・・」
10分とは短いようで長い。この周辺は、魔女の『呪い』で侵されているのか、エルフが操る精霊が少ないとはいえ、10分は長い。使えないよりはマシか。
「分かった。私が時間を稼ぐから、あの雲を払って」
「時間を稼ぐ?」
「私があのナリカケを相手している間にやれってことよ。雲を払って月を出すの」
精霊は魔術と違って月の『光』で浄化される心配はない。この作戦はレオンの精霊術が必要不可欠である。
「その月明かりで回復してナリカケを倒すってことだろ」
横からアキセが入る。
「ええ。あんたから『光』を奪った分を回復するためにね」
嫌味をいう。
「いつまで引きずるんだ。協力してやるんだから、そんなに怒るなよ。で、俺は?」とアキセが言った瞬間だった。
茂みから人間が現れた。魔女が操っている人間たちが農具や刃物を持っていた。
「いつの間に」
「ジャンヌが騒ぐから」
嫌味にいうアキセに対してジャンヌはムッとする。ジャンヌが倒した木で気付かれてしまった。
――テンパリすぎた
「しゃ~ない。名誉挽回するか・・・」
アキセは銃を懐から取り出し、前に出る。
「こっちはやっとくから、さっさと行きな」
仲間なら頼もしいセリフだか、アキセのセリフに妙に気持ち悪さを感じる。今は裏切らないことを祈ってこの場を去るしかなかった。
「行くよ!」
ジャンヌはレオンに声をかけ、走り出す。
森の中を走っていた。
「作戦通りで」
「ああ」
ジャンヌはレオンと別れ、黒いモヤが漂っている森の奥へ入り込む。
「もうこんなに『呪い』か…」
ジャンヌが着いた先で、二人の魔女が共食いを始めている。
ムカデの魔女がナメクジの魔女を食べていた。
どうやらムカデの魔女がナリカケになるようだ。体がさらに大きくなっていく。
ムカデの魔女の視線がジャンヌに向いた。
「セイ…ジョ…コロス!」
ムカデの魔女の目が鋭くなり、ジャンヌを襲ってくる。
「それはこっちのセリフよ!」
ナリカケ、サイクロプス、リリムに魔女から逃げている。
今日は厄日だと悔やみながら、木の陰でアキセに刺された腹の手当てをする。
ただ一番腹が立つのは、半日に2回もアキセに騙されたことだ。魔女よりもアキセに踊らされるのが嫌になってきた。
「お~い、いつまでかかっているんだ」
アキセの声がした。何もなかったように声をかける。さらに怒りが燃え上がり、木の陰から出る。
「お、やっと出できた」
すたすたとアキセに近づき、ゴツとアキセの顔に一発殴り、すかさず胸蔵を掴む。
「これで気が済んだ?」
こんな状態でもヘラヘラとしている。ムカつく。
「済んでたまるが!」
怒声を上げる。怒りは治まらない。
「いつからだ!」
「もう最初から」
「最初からって・・・」
サイクロプスと戦った時にはすでに正気にいたことになる。
「村に立ち寄った時、あの魔女に会ってさ。魔女は、錯乱の魔女セイラム・ハバ―ト。どうやら人を操る魔女で、あの村はもう魔女が支配していたんだ。危うく操らそうだったんで、俺の自慢の魔力で、自分にかかった『タタリ』をバレないように奪ったわけ。あとは隙を狙って逃げようとしたけど…どうやらあの魔女、記憶も見られるみたいで、ジャンヌの関係を知って、襲撃命令下ってさ。今に至るわけよ」
「だからって!わざわざ腹をナイフで刺すことになるわけ!」
「ちょっととりあえず落ち着け」とレオンの声がするが、今怒りで頭がいっぱいで耳に入らない。
「しゃ~ないだろう。そう言われていたし。それに操られたフリするのも大変だったんだぜ。バレないように『タタリ』を調整しながら苦労した俺に敬えよ」
あ~ちくしょー殴りたい。殴り殺したい。今すぐ殺したい。
ジャンヌの頭の中はナリカケよりもアキセに対する殺意でいっぱいだった。
「まあ今回は、さすがに俺だって悪いと思っているからさ」
「あんたに罪悪感を持っていることに驚く!」
「こんな時にもめるなんて余裕あるんだな。今人手いるだろう」
その一言で悩ませる。アキセに言っていることが正論で腹の虫が収まらない。
ナリカケを倒さなければならない。本来ならアキセを半殺しするよりも優先するべきことだ。
「なあ、聖女。落ち着け」
レオンが横に入る。
「確かにこいつのやったことは許せないのは分かるけど、いつまでも口喧嘩する気か」
あと早く解放されたいしとレオンは小さく付け加える。
レオンの言っていることも正論だ。
悔しながらも悪態をつけ、アキセを突き放す。
確かに今は内輪揉めしている場合ではなかった。腹に怪我を負わせ、『光』も消耗している。今の状態では一人でナリカケを倒せるか半々だった。しかし、ここで見逃せば、後々、
厄介なことになるのは確実だった。猫の手も借りたいほどだか、レオンはまだしも、先ほど怪我を負わせられたアキセと協力することになる。本当は本当は本当は組みたくない。でも現状的に考えたらと頭を悩ませる。
「うわああああああああああああ」
ジャンヌは髪が乱れるほど頭をかきながら叫び、怒りが収まらず、近くにあった木に思いっきり殴りつける。木は軋みながら倒れていく。
ジャンヌの怒りに怖気づいたのか、アキセとレオンは言葉が出なかった。
ジャンヌは息を上がりながら、「本当に手伝うんだな!」とアキセに怒鳴る。
もう私情よりも仕事を優先する。もう仕方なく協力するしかこの事件は終わらない。そして、溜まった鬱憤を後でアキセにぶん殴ればいい。
ジャンヌはアキセににらみつける。
「しますって!もうあっちは俺を敵認識しているし。裏切ろうが逃げようが殺されるだろうし。期待にお答えしますよ。聖女様」
「逃げたら、ぶっ殺すからな!」
釘をさす。
「はいはい」
アキセがいう。
いろいろと言いたいことはあるが、今は落ち着こう。あの魔女の計画を阻止しなければ。大きく深呼吸して吐いて、落ち着かせる。空を見上げれば、曇っている。
「レオン。あの雲を払える?」
「できるけど、さっきも言ったが、時間がかかるぞ」
「どのくらい?」
「最短で10分くらい」
「10分か・・・」
10分とは短いようで長い。この周辺は、魔女の『呪い』で侵されているのか、エルフが操る精霊が少ないとはいえ、10分は長い。使えないよりはマシか。
「分かった。私が時間を稼ぐから、あの雲を払って」
「時間を稼ぐ?」
「私があのナリカケを相手している間にやれってことよ。雲を払って月を出すの」
精霊は魔術と違って月の『光』で浄化される心配はない。この作戦はレオンの精霊術が必要不可欠である。
「その月明かりで回復してナリカケを倒すってことだろ」
横からアキセが入る。
「ええ。あんたから『光』を奪った分を回復するためにね」
嫌味をいう。
「いつまで引きずるんだ。協力してやるんだから、そんなに怒るなよ。で、俺は?」とアキセが言った瞬間だった。
茂みから人間が現れた。魔女が操っている人間たちが農具や刃物を持っていた。
「いつの間に」
「ジャンヌが騒ぐから」
嫌味にいうアキセに対してジャンヌはムッとする。ジャンヌが倒した木で気付かれてしまった。
――テンパリすぎた
「しゃ~ない。名誉挽回するか・・・」
アキセは銃を懐から取り出し、前に出る。
「こっちはやっとくから、さっさと行きな」
仲間なら頼もしいセリフだか、アキセのセリフに妙に気持ち悪さを感じる。今は裏切らないことを祈ってこの場を去るしかなかった。
「行くよ!」
ジャンヌはレオンに声をかけ、走り出す。
森の中を走っていた。
「作戦通りで」
「ああ」
ジャンヌはレオンと別れ、黒いモヤが漂っている森の奥へ入り込む。
「もうこんなに『呪い』か…」
ジャンヌが着いた先で、二人の魔女が共食いを始めている。
ムカデの魔女がナメクジの魔女を食べていた。
どうやらムカデの魔女がナリカケになるようだ。体がさらに大きくなっていく。
ムカデの魔女の視線がジャンヌに向いた。
「セイ…ジョ…コロス!」
ムカデの魔女の目が鋭くなり、ジャンヌを襲ってくる。
「それはこっちのセリフよ!」
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