魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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冬の風物詩⑦

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 ヒメカがリンゴの爆弾に巻き込まれた。
「ヒメええええええええええええええええええ」
 アキセが一番に叫ぶ。
「きゃあああああああああああああああ」
 煙からヒメカが飛び出す。
 不思議と焦げていない。
「ヒメえええええええええええええ」
「アキセくぅううううううううううううううううううん」
 アキセはヒメカを胸の中へと優しく受け止める。
 アキセとヒメカが見つめ合う。
 もう二人だけの世界に入っている。
「え?何あれ?」
「あまり愛情注ぎすぎると食べられなくなるわよ」
 ピルクも汗が見える。
 さすがに魔女3人も戦闘をやめて、アキセとヒメカの現状に引いている。
 そうだ。戦闘が止まっている内に逃げるか。
「あら。何をしているのかしら?」
 別の女の声。アニアでも、シイナでも、ピルクでもない。
「また聖女も参加しているのね」
 最強の魔女。よきの魔女リリス・ライラ・ウィッチャーだった。
 まさか、リリスまで来るとは。
「「リリス様!」」
「今回は何をするのかしら」
 リリスが目を細めて見つめる。
「う!」
 アニアと初めて会った時もリリスのディナーを用意していた時だった。
「ん~」
 リリスの視線がアキセに変える。
 リリスが来てもアキセとヒメカが見つめ合ったままだった。
「別にこのままでもいいけど」
 リリスが指を鳴らす。


 あれ。なんでここにいるんだ。
 ジャンヌ。アニアにピルクに知らない魔女。イヌにカカシ。それにリリスまでいる。目の前にはなぜか大根を持っている。
「アキセ君・・・」
 大根が頬を赤らめている。
 思い出した。
この大根の名前はヒメカだった。
名前を思い出したことで、今までのことを脳裏に振り返る。
 ヒメカと過ごしていたことを。料理をして。デートをして。一緒に寝て。そしてセックスをしていたことを。大根に。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 アキセの叫びが響く。

 
 どさくさにジャンヌは消え、アキセは全力で逃げていった。
「もう。アキセ君たら、私を見て逃げるなんて。ぷんぷん」
 テーブルに座っているヒメカは言う。
「ありがとうございます。リリス様」
 ヒメカはリリスと同席してもらうことで食材にならずに済んだ。
 鍋パーティーが始まり、すき焼き、みぞれ鍋、寄せ鍋と次々と食べていた。それでもリリスの腹に底がない。
「いいのよ。そんなに彼気に入ったの」
「はい!」
「なら、花嫁修業をした方がいいわよ。いい奥さんになるには必須よ」
「そうですね!アキセ君を幸せにするなら必要ですね!」
「リリス様!お待たせしました」
 アニアが大きい鍋を持ってきた。
 それは、大根煮込みだった。
「もういっぱい用意してますので、体温まりますよ!」
「あら楽しみ」
 アニア、シイナ、ピルク、アーノルド、ソオズも同席に鍋パーティーが始まる。
 それにしてもガルムがここまで大根に惹かれるとは。
――さすが。私の影響は受けているだけある。
 リリスは煮込んだ大根を食べる。



「アキセ君。花嫁修業にいってきて参ります。ヒメカより」
 アキセに手紙が届く。
「はあ・・・」
 アキセはしばらく大根をたべられなかったことと子供ができないことを祈っていた。

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