魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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冬の風物詩③

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「よかったよ。ジャンヌも探すのに手伝ってくれて」
 アキセは爽やかな笑顔で言う。
――そりゃそうでしょうよ。この腕輪で無理やり拘束されているんだから。
 コルンの発明品『なんでも指示できる腕輪』。体の一部を腕輪に取り込めただけで主導権を握られるという。
 またこの発明品で逃げられなくなるとは。一つだけじゃなかったのか。しかも体の何を使ったのか。
「どこにいるんだい。隠れても分かっているけどね~」
 アキセは余裕を持っていう。
 ユビワはアキセと契約しているから、互いに居場所が分かっている。
 バン!
 銃声が鳴り、すぐ横にある木に当たる。
――ちょっと。私と一緒に殺すつもり?
 バン!
 銃声がまた鳴る。
 咄嗟に木陰に隠れ、弾は木にぶつかる。
 マズイ。完璧に殺しにかかっている。それだけいやなんだろう。
「まだ隠し持っていたか」
 また銃声が鳴り、木に当たる。
「何、ここまでユビワちゃんを追いつめたのよ」
「ただの指輪に気を遣う必要あるか」
 だめだ。こいつ。
「お!弾切れか」
 銃声が止んだ。
 アキセは指飾りで記号を描く。
 浮いた記号を指飾りに手をかざす。
 木から少しはみ出し、かざした記号を顔の前に動かす。
「え~君は包囲されている。大人しく結婚指輪にしなさい」と記号に向かって声を出せば、声が大きく響く。
 バン!
 銃声が鳴る。
 アキセはすぐに木陰に隠れ、木に弾が当たる。
「あぶね」
「おしい」
「そこは心配しろよ」
「いや」
「やっと。弾切れか」
 確かに攻撃は止んだ。
「こうなると思って、中身抜き取ってよかった」
「だから抵抗したんです!」
 ユビワの声がした。
「おまえが抵抗しながらも道具を引き抜いた苦労も分かれ!」
 また同じ記号を作り、アキセは声を出す。
「クズの発言は無価値です!」
「価値の判断をするな!」
 兄弟ケンカを見ているような。
 アキセはユビワが逃げることを見通して、事前に道具を抜いていたのか。
「転送しても道具がないぞ。大人しく戻れ」
「嫌です!」
 ユビワの必死さが感じる。
「仕方がない」
 アキセと目が合う。
「ジャンヌ。ユビワちゃんを説得に言ってくれ」
「え!ちょ!」
 だめだ。体が勝手に動く。



 ジャンヌはユビワの元へと行く。
「ユビワちゃん・・・」
 もうユビワは諦めているのが、地面に手をつけている。
 背中から哀愁を感じる。
「ジャンヌさん・・・抵抗しても契約しているから逃げ切れないのは分かっています。無駄な抵抗だとは分かっています。だから・・・」と振り向いたユビワは「一緒に分かち合いましょう」と諦めきったように言う。
「ユビワちゃん!」
「ジャンヌさんと一緒なら乗り越えられます」
 意地でも巻き込ませようとしている。
「そんな手法覚えちゃダメだって!まだ汚い大人になっちゃダメだって!」
「私もあまり使いたくないです!でも・・・私だけでは耐え切れません!」
 ユビワが声を上げる。
「それでも他にやり方あると思うけど・・・」
「教えてください!」
「う・・・」
 すぐには思いつけない。
「本当に嫌なんですぅうううううううううううううううううううう」
 泣きながら叫ぶユビワがすがみつく。
 ユビワをここまで追い込ませるあの二人の空間はどうなっているんだ。
「ジャンヌさん!助けて!あんな狂った世界に戻りたくない!つけさせないで!」
「まず落ち着こうか。冷静を取り戻そうか」
「はい。冷静に考えても戻りたくないです!」
 だめだ。パニック状態だ。
「もう逃げられないなら、一緒にこの苦難を耐えていきましょう!」
 逃さないようにしっかり腕を掴まれる。
「ユビワちゃん・・・」
「ジャンヌさん・・・一緒に頑張りましょう・・・」
 まるで今生の別れを言うようにユビワは指輪に戻る。
「ちょっと!今完璧にタイミング合わせたでしょ!ねえ!」
 ただの指輪に向かっても返事は帰ってこない。
 変身は調整できないはずがなぜこんなタイミングよく指輪に戻る。
 指輪を拾われる。
 あ。
 指にはめたアキセが立っている。
「これで指輪は取り戻したし」
 もういやな予感がしてたまらない。
「一緒に戻ろうか」とアキセが笑顔で言う。
「え!ちょ!もう私に用事ないでしょ!」
「いや、ある」
「なんで!」
「セカンドパートナーとして一緒にいてほしい」
「はあ?何!ハーレムのために作られたような単語は!」
「体の関係を持たない。心で結ばれた恋人未満の友達さ」
「説明するな!」
「一人だけを愛せるのは俺としてはもったいない」
「それ、浮気者が言うセリフだから!肯定する気も認める気もないから!」
「ヒメカと長く付き合うようにセカンドパートナーとして俺を支えてほしい。ちなみにヒメカは了承しているから、修羅場にならないから問題ない!」
 アキセが自身満々に言う。
「脳裏に残せないほど言わないと分からないのか。嫌だって!それにハーレムを認めない理由はな。責任取らずに調子込んで、飽きたら捨てる手段をつくだろうが!」
「だから、君がそうさせないように支えてほしいんだよ」
「このクズ!」
「さあ、一緒に暮らそう!」
 結局、意見を無視して、無理やり腕を引っ張られる。
「いやだあああああああああああああああああああああああああああああ」
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