魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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冬の風物詩②

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 カフェのテラス席にジャンヌとユビワは一緒に座る。
 ユビワが何か言いたげそうな顔をしている。
 同然、アキセのことだろう。
 本当は聞きたくないが、ユビワがかわいそうだ。
「話・・・聞くけど・・・」
「訊ぃいてくださああああああああああああああああああああい!」
 ユビワが泣きながらテーブルに顔をつける。
――本当に何があった!
「あのクズがヒメカと真剣に付き合っているんですうううううううううううううううう」
 もうその発言だけでも驚きが隠せない。
 女の敵でデリカシーのないクズストーカーのアキセが真剣に付き合っているだけでも、一生ありえないのに。しかも相手があの生きている大根とは。
「いつもそこらへんの女性を捕まえて、セックスしてからほっとくあのクズが!」
「ユビワちゃん。言葉を選んで・・・」
「まさか人ではない大根と真剣に付き合うとは思いませんでした・・・」
「それは誰だって想像つかなかったと思うよ」
 そもそも生きている大根がいることさえ、思えなかった。
「普通に付き合って。普通に同居して。普通に料理して。普通に話したりして・・・う」とユビワは手で顔を覆う。
 想像ついただけで頭が痛くなった。
 一般的な行動もできることに。
「特に大変だったのが、デートの時でした。堂々と町の中でヒメカと一緒にデートをして、その周りの視線を気にしないように我慢する方が大変だったんですよ!」
 周りも目が離さなかっただろう。
「なぜか、他の男性もヒメカに惹かれているんですよ」
「え?そうなの」
 そんなに大根に惹かれるものだろうか。
「即座にあのクズが一網打尽にしましたけど」
 アキセが退治したのか。
嫉妬をするのか。あの男は。
「人はどうして大根に惹かれるんですか・・・」
 ユビワは泣きながら言う。
「あれはかなり特殊かと思うけど・・・」
「もう思い出しただけで、いろいろと突っ込むところもおかしなところが多すぎて、ついていけなくなりまして・・・これは言わずに済みますか!」
「そうね・・・」
 1週間で何をやっているんだ。
 てか、アキセがここまで付き合うのも珍しいが。
 一応リリムは人を惑わすが、惑わされることはあるのだろうか。
「しかもやったんですよ!」
「ごほほほ」
 思わない発言にせき込む。
「やったって・・・ヒメカと・・・」
「はい・・・2日目から毎日・・・やっぱりリリムだけあります・・・」
「淫乱の一族だけあるわ」
「ユーベルさんが来たんですけど、クズがはっきり振りました。かなりのショックだったようで、泣きながら帰りました」
 オカマのユーベルはアキセを好意しているが、追い払ったとは。
「そして先ほど、求婚したんです!」
 スピード結婚にもほどがある。
 もう驚きもしなくなってきた。もう呆れかえる。
「しかも私を結婚指輪にしようと!」
「だから逃げ出したのねって・・・」
 あれ。
 結婚指輪にしようとするユビワが人になってここにいる。つまり。
「ジャンヌさん」と立ち上がり、「ごめんなさい!」とユビワが走る。
「え!ちょっと!」
 急に腕を握られた。
 顔を向けば、「おや。ジャンヌじゃないか」とアキセが笑顔でさわやかに言う。
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